日本の文学賞

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やがてはるか空をつなぐ (ファミ通文庫)

エンターブレインえんため大賞ライトノベルファミ通文庫部門

やがてはるか空をつなぐ (ファミ通文庫)

山之臨

物理部の生徒たちが、校庭でモデルロケットを打ち上げたいという少女の願いをきっかけに動き出す青春小説。禁止された実験、過去の事件、仲間との距離を越えて、空へ向かう思いをつなげていく。

青春モデルロケット物理部再出発

作品情報

打ち上げたい理由が、止まっていた青春をもう一度空へ向かわせる。

ファミ通文庫刊。応募時タイトル『ブロックチェーン』で第20回エンターブレインえんため大賞ファミ通文庫部門特別賞を受賞し、『やがてはるか空をつなぐ』として刊行された。物理部とモデルロケットを題材にしたボーイミーツガールの青春小説。

レビュー要約

  • まっすぐな青春小説としての爽やかさや、ロケットを打ち上げる行為に託された前向きさが受け止められている。大きな事件よりも、登場人物の心が少しずつ動く過程を味わう作品と見られている。

書籍情報

出版社
KADOKAWA
発売日
2019-01-30
ページ数
288ページ
言語
日本語
サイズ
10.6 x 1.5 x 15 cm
ISBN-13
9784047354708
ISBN-10
4047354708
価格
704 JPY
カテゴリ
本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル

わたしと一緒に退学になってくれますか? 部室ではバルーン実験の準備が進んでいた。メンバーはロケットオタクの青桐七海、プログラマー山花俊、天真爛漫な後輩、町田佐奈の三人だ。実験の当日、彼らは近くの高校に通う赤森遙と出会う。活動に興味があるという遙は物理部へ入部を希望するのだった。彼女にはどうしても校庭でモデルロケットを打ち上げたい理由があるのだという。しかし過去に青桐が起こしたある事件をきっかけに実験は禁止されていて――。ロケットが紡ぐボーイミーツガールが幕を開ける!

レビュー

  • どこにも行けない無力感の中「私はここにいる!」という想いをロケットに託した少年少女たちの姿を描く見事な青春グラフィティ

    第20回えんため大賞「特別賞」受賞作品 物語は主人公の青桐七海を含む私立海保総合高等学校物理部の面々が県北の自然公園で高高度バルーンの打ち上げ準備をしている場面から始まる。二年生の七海と同学年で長身の山花俊、一年生でやたらと元気な女子部員・町田佐奈、ここまで車を出してくれた顧問の木村揚羽に加えて今回の実験には一人の部外者がいた。私立高城総合高等学校の制服に身を包み、揚羽の身内だという赤森遥は何故か「あかもりはるか」と自分の名前を書いた紙飛行機を飛ばす風変わりな少女だったが、七海自身も高高度バルーンに幼き日に泣かせてしまったまま離れ離れになった「ハルちゃん」への言葉にならない想いを載せた白紙の手紙をペイロードとして載せていた。 実権を終えての帰り道、揚羽は遥を七海たちの仲間に入れてやってくれないかと頼み込んでくる。他校の生徒が入部したいと言っても、と戸惑う七海たちだったが揚羽は海保高校のリベラルな校風であれば「高城高校との合同プロジェクト」という名目であれば問題無いだろうと反論。春休みに問題を起こして謹慎処分を受けた七海に変わって部長になった山花が問題視しなかった事で遥の入部が決まってしまう。自分と同じ誰に宛ててのメッセージか分からない手紙を飛ばそうとする遥の存在に戸惑いを覚える七海だったが…… たぶん5年前ぐらいのファミ通文庫であれば「まことに『らしい』作品だな」と思っただろう。だが、今のファミ通文庫の刊行作品を思えば、かつての「青春のファミ通文庫」のイメージを取り戻そうとしてなかなか上手くいかない「ファミ通ネクスト」の苦戦を思えば「今になってこんな作品がファミ通文庫から刊行されたのか!」と言わざるを得ない。あの「青春のファミ通文庫」の看板をこれ一つで取り戻せそうな見事な青春グラフィティであった。 物語は名門私立高校の物理部に他校の女子生徒・遥が入部してくるというなかなか奇妙な状況から始まるのだが、物語が進むにつれて主人公である七海を含む物理部の面々や遥の通う高城高校の生徒会長・柊真琴を絡めたひどく入り組んだ人間関係が浮かび上がってくる。同時に七海を取り巻く物理部員をはじめ彼ら少年処女たちが抱えている「別の顔」も浮かび上がってくるのだが、この「普段は他人に見せない顔」というのが本作のキーポイントであったかと。 本作に登場する少年少女は一様に「無力感」を「どこにも行けないという絶望」を抱え込んでいる。高校生と言えど子供なのだから当然と言えばそれまでなのだが、自分の力ではどうこう出来ない問題を抱え込んだ彼らの姿は一様に重い。 普段は元気溌溂たる姿を見せて先輩たちに絡んでくる町田佐奈は中学生当時にクラスメイトとのちょっとした諍いが元で他人からの悪意に取り囲まれているという恐怖感に陥った不登校児であり、今もクラスメイトの前では「気の良い元気娘」という仮面を被り続けている。 クールで大人びた雰囲気の山花俊は県内唯一のゼネコン企業の御曹司という恵まれた立場にありながら、県内の有力企業の懇親の場で親たちに引き合わされた学校法人の令嬢・柊真琴に想いを抱きながらも経営が難渋している学校法人に見切りを付けた親の手前、その想いを口にできなくなっている。 中学時代から予備校でトップの成績を争っている七海の前では菓子パンをくすねたりと闊達な雰囲気で振る舞う柊真琴は高城高校理事長の令嬢という立場故に自由な進路を選ぶことも許されず、付き合う相手にすら親の意向が反映されてしまうという籠の鳥の様な不自由さの中に囚われている。 こんな自分の力ではどうにもならない様々なしがらみに、他人と付き合う上で被る事を求められる仮面の重さに縛られた彼らが「救い」としたもの、それが七海が一年生の間、入学前から海保高校の校庭で打ち上げ続けた高度200メートルの高さまで打ち上げられるロケットである。誰もいない早朝にまだ暗さを残した空に向かって上昇していくロケットに誰にも本音を打ち明けられず、誰にも本当の自分を見せられないという絶望に打ちひしがれていた彼らが「私はここにいる!」「本当の私を見て!」という願いを託す対象としたのが七海のロケットであった事が次第に明かされる。 面白いのは打ち上げていた七海自身も自分が打ち上げるロケットに「僕はここにいるよ!」という想いを載せていた事かと。幼い頃ペットボトルロケットの打ち上げを最後の記憶として泣いたまま走り去った幼馴染の「柏木ハルちゃん」を前に戸惑うばかりで何も出来なかったまま事を悔み「もう一度会いたい。会って想いを伝えたい」という願いを込めてロケットやバルーンを打ち上げ続ける七海自身もまた「私はここにいる!」という声にならない叫びを空に向かって打ち上げている幼馴染との別れの日に留まったまま「どこにもいけない少年」なのである。 物語は彼ら無力さに打ちひしがれていた少年少女の運命が赤森遥というやはり誰に向けてのものか分からない名前だけをひらがなで書いた紙飛行機を飛ばす少女の登場をきっかけに回り出し、遥自身も含めて何度も小さな躓きを繰り返しながら少しずつ前へ出て行こうとする方向へ動いていく。時に想いがすれ違い、時に改めて自分の無力さ・未熟さを思い知らされながら、それでも自分の前に立ちふさがった壁を乗り越えて前に進もう、本当に想いを伝えたい相手に自分の想いを届けようとする彼らの姿は「青春」の二文字を想起せずにはいられない物があった。 企画の立ち上げ当時は大いに期待させられながら納得できる作品がなかなか刊行されずに「やはり今の時代に青春小説は難しいのか」と諦めかけていた「ファミ通ネクスト」に現れた腹の底から「これが読みたかった!」と納得させられる一冊。「あの良い時代のファミ通文庫作品をもう一度読みたい」と願う方にはどうか手に取って頂きたい、間違いなくそれはそこにあると強くお勧めできる見事な作品。よくこの山之臨という才能を世に送り出してくれたとファミ通文庫関係者に賛辞を送りたい。

  • とても爽やかな青春群像劇

    5人の主要登場人物が出てくる青春群像劇です。 それぞれが悩みを抱えて、その悩みを晴らすための手段としてロケットの打ち上げがありました。終盤の打ち上げのシーンでは、それぞれの登場人物の視点から感情移入する事ができましたので、読み応えがあったように思います。 この作者は文章が上手いと思いました。とても読み易く、一気に最後まで読めました。 読んだ後に、とても爽やかな気分に慣れました。

  • こんな高校時代に戻りたい!

    共学だったらこんなに爽やかな青春時代を過ごせたのかもしれない、と言う妄想が広がりました。 主人公の七海や、ヒロインの遥など、出てくるキャラクターは悩みを色んな悩みを抱えています。その悩みから、解放される事を願って、必死になって足掻いている様子が丁寧に描かれていました。読み終えて、霧が晴れたように晴れやかな気分になることができました! 青春小説を読みたい方に是非おすすめです!

  • モブが不快

    地の文をしっかり書き込んでいて読み応えはありますが、読む人によっては難しい、くどいと感じる方もおられるかと思います。 ロケット飛ばしに青春を注ぐ学生たちの笑いあり恋愛ありの甘くて明るいお話を期待された方は全く毛色が異なるので回れ右で。他の方のレビューにもある通り、ロケットを飛ばす描写などは多くありません。 それより、地元の会社経営者の御曹司や令嬢が複数出てきてある一人は傲慢なふるまいを度々見せ、中にはコレわいせつ罪でしょ?傷害罪でしょ?とツッコみたくなるものもあり、いつどこという設定がはっきりしないですが時代錯誤というか、ついていけない展開が多く腑に落ちないまま読み終えたという印象です。 イラストに惹かれて買ってみましたが、内容にはあまり感情移入できませんでした。人によって好みが分かれる作品だと思います。

  • え? それで締めるの?

    ロケットマンのあだ名を持つ少年、青桐七海が幼い頃に嫌な別れ方をしてしまった幼なじみの 女の子を思い出しながら、その子に届けとロケットを上げ続ける物語。 雑に説明するとそんな感じです。でも打ち揚げの大半は描写されていません。 ぱかすか打つと有難みが薄れるってことなのかも。 始めの導入部分が頭に入ってきにくい気がするものの、全体としては読みやすい仕上がりになっては います。ただ青桐のみの視点で進むのではなく、彼を取りまく人々にも視点が移ることで 結果的にゴチャッとした印象を持ちました。 見せ場であろう最後の打ち上げシーンなのですが、なんというか迫力が足りません。 現実に即していると言えば聞こえは良いものの「あ、そうなんですか」という読後感。 そこに至るまでにさして苦労していないせいか、物足りませんでした。 そしてなにより! 後輩である町田佐奈がカワイソ過ぎる! 最後にそれってマジかよ! 思わず絶叫しました。私のようにハートブレイクされたい方は最後まで読んでみてください。

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