日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
深紅

吉川英治文学新人賞

深紅

野沢尚

一家惨殺事件の被害者遺族と加害者の娘が出会い、復讐と赦しの境界に立たされる心理サスペンス。犯罪の後に生き残った者の時間を、鋭い構成で描く。

サスペンス犯罪復讐赦し家族

作品情報

『深紅』は、野沢尚の作風が凝縮された受賞作。

一家惨殺事件の被害者遺族と加害者の娘が出会い、復讐と赦しの境界に立たされる心理サスペンス。犯罪の後に生き残った者の時間を、鋭い構成で描く。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2000-12-01
ページ数
388ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784062102858
ISBN-10
4062102854
価格
673 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

憎悪に蝕まれていく心の闇を描き尽くす、書下ろし長編サスペンス問題作 一家惨殺事件。 生き残った長女と、加害者の娘。2人は、出会ってはならなかった。 12歳の初夏。両親と幼い弟2人は、父の仕事相手に惨殺された。遺体の顔面はハンマーで砕かれ、家の中は家族の血で満たされた。8年後、加害者の1人娘を捜し当てた時、胸の奥底に封印した真っ赤な憎悪があふれ出し、奏子の扉を決壊させた。

1960年、愛知県生まれ。日本大学芸術学部卒。85年、テレビドラマ「殺して、あなた」、映画「Vマドンナ大戦争」で脚本家デビュー、その後、映画「その男、凶暴につき」、ドラマ「眠れる森」「氷の世界」など、多くのヒット作を手がける。97年、『破線のマリス』で第43回江戸川乱歩賞を受賞。他の著書に『リミット』『呼人』などがある。

レビュー

  • 子供の頃から冷静な主人公がこの先

    毎朝聞いているFMのDJが昔に読んだ本らしいですが読み返してみても面白いと言われていたので読み始めたら、この先が知りたくてどんどん読み進めていって分厚い本ですがあっという間に読み終えました。 買ってよかったです。

  • 自分の家族を殺した犯人の家族に対して、どうすべきか。

    野沢氏の本は、こちらの気力が充実していないと、とてもじゃないが読み続けられない、そんな重さがある。 自分を除く家族全員がある犯人に殺され、一人だけ生き残った主人公。 月日がたち、とあることから犯人に自分と同い年の娘がいることを知る。 その娘の所在を突き止めた主人公は、復讐を決意する。 こちらの感情お構いなしに話が進み、何か危険な方向へヒタヒタと近づいていく。 先を読むのが躊躇われ、結末を知りたくないと思いつつも、どうなるのかも気になる。 限りなく可能性のない話ではあるものの、もし当事者となったら、非常にリアルなテーマだけにとても考えさせられる。 被害者の家族と加害者の家族、特に後者について我々はどう向き合うべきか考えさせられた。

  • 犯罪者に暖かく寄り添う

    これは昔あった「練馬区一家5人殺人事件」をテーマにしていると思う。「ある男性が仕事で自分を騙した男性の一家を皆殺しにするが、その日に学校で修学旅行(林間学校か何かだろうか)に行っていた娘だけは家におらず、事件にまきこまれなかった」というもので、この本も事件もその点が一致する。さらに言えば、殺害された一家、というより、「事件のきっかけを作った被害者男性(父親)には欠片ほどの同情もできない」点も一致した(主観ですが)。事件の方は、犯人の死刑は執行されてしまい、事件自体も1983年なので、随分昔のものになった。(自分は世代的に分からないからネットでひたすら調べた) ネタバレみたいなことは書きたくないが、この本は読み始めたら夢中になるとともに、野沢尚さんの犯人や生き残った女児、犯人の娘に対する暖かい眼差しを感じる作品だった。野沢さんのこの手の作品だと『眠れる森』思い浮かべる人が多いと思うけど、『眠れる森』より歪んでいない犯人の心理が痛いほど分かるし、追い込まれた人間の苦しさに寄り添う野沢さんが素晴らしかった。 恐らく、『眠れる森』でさえ、あんなに大ヒットしても再放送すら難しかったから、この作品も映像化は難しい。世の中、凶悪な犯罪が起こりすぎて、殺伐としているように見えても、事件が起こる背景には、人間らしい感情の行き違いや葛藤や、死ぬような苦しさがあるのは、いつの時代も変わらない。 今は素晴らしい作品を残してくれた野沢尚さんの新しい作品にもう出会えないことだけが、何より悲しい。

  • 普通

    普通でした。

  • 会ってはならなかった二人。

    12歳の頃、両親と二人の幼い弟を父親の仕事仲間に皆殺しにされた奏子が、 20歳になった頃、加害者の一人娘である同じ年頃の未歩と出会うことで 紡がれる物語。 犯罪被害者の遺族と、犯罪加害者の遺族。 出会うべきではなかった二人が出会ったことで、どうなるか。 未歩の夫であるDV男の明良の存在も手伝い、 物語は思いもよらない展開を見せることになる。 家族を皆殺しにされた体験から心の中に蓄積され、 誰にも悟られないようにしまい続けてきたわだかまりを 「心の隠れ家の中に満たされた黒い液体」と表現したり、 自身の辛い境遇から他人に気を遣わせ、迷惑をかけることのないように 鈍麻させてきた自分の感情を「黒い芯」と表現したりなど、 奏子の心の裡を表現する描写の上手さ、的確さに感服しながら 夢中で読み進めてしまった。 事件を想起させる現象をきっかけに奏子に起こる 「四時間」の描写も圧巻の一言。 後半にかけて加速していく物語を読み切り、 ラストシーンのある一文にたどり着いて、 その意味するところ、象徴するところを 拙い感性ながらも読み解けた気がした時、 いい終わり方だ、と思えた。 自分とは違う誰かになって、違う世界を体験することが 小説の醍醐味の一つであるなら、この本はその目的を 十分に達成していると思う。読んで損はしない。

  • 久々にどハマりした秀作!

    購入したのは数年前ですが、もう一度読みたくなる秀作。実話ベースだそうですが、とにかくストーリーが面白く、結構なページ数ですが途中で止められず一日で読んでしまいました。

  • 前半の展開は圧巻!

    評判の本なので読んでみた。たしかに前半の事件発生、その経緯を追った場景描写は緻密で克明、主人公奏子の心理描写も圧巻。後半、被害者の娘と加害者の娘が出会う件にむけて重厚なストーリー展開が続く。奏子は家族を惨殺した加害者の娘、未歩にどう接していくのか…。 一気に読んだが、ラストの展開が弱く、期待はずれの感あり。読み応えは、ある。

  • 底なし沼(いい意味で)

    【ネタバレ無し】 とても技法の豊かな作品です。 お勧めしますが、読みだしたら抜け出せません。

関連する文学賞