殺人容疑 (講談社文庫 く 38-1)
ワシントン州沖の孤島サン・ピエドロで漁師の死体が見つかり、日系アメリカ人の宮本カズオが殺人容疑で裁かれる。戦時中の日系人強制収容の記憶、土地をめぐる確執、若い日の恋を重ねながら、法廷の審理は島に残る偏見と沈黙をあらわにしていく。
作品情報
殺人裁判の行方を追う物語は、戦争と偏見が島の人々の人生に残した傷へと読者を導く。
デイヴィッド・グターソンの長編『殺人容疑』は、英語題を『Snow Falling on Cedars』という。殺人事件の裁判を軸に、第二次世界大戦中の強制収容によって引き裂かれた日系アメリカ人と島の住民の記憶を描く。謎解きの緊張と、過去を引き受けようとする人々のドラマが並行して進む作品である。
レビュー要約
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複数の時間と人物の記憶を交差させた法廷劇として、事件の謎だけでなく戦争の影と共同体の偏見を掘り下げる構成が評価されている。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 1996-09-01
- ページ数
- 649ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062633437
- ISBN-10
- 4062633434
- 価格
- 1 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学
魂を深く揺さぶる注目の裁判小説。 一気に読める感動の人間ドラマ。日系アメリカ人=カズオ・ミヤモトに何が起きたか。人間の不条理と人種偏見を鮮烈に問う! ペン/フォークナー賞、全米書店業協会(ABA)賞、バーンズ&ノーブル・ディスカヴァー賞を受賞。 苺畑の広がるサン・ピエドロ島の沖合で、漁網に絡まった死体が発見された。漁師の日系アメリカ人=カズオ・ミヤモトが殺人容疑で逮捕された。島の陪審員は根強い人種偏見を抱いている白人たち。法廷内は緊張するが、第2次世界大戦で心に深い傷を負った人々が謎の解明に起ちあがる。
【高儀進】 1935年、神奈川県生まれ。早稲田大学文学部卒。同大学教授。英米文学の研究および翻訳にたずさわる。主な著書にM.ディブディン『血と影』『陰謀と死』、N.ウイリアムズ『ウインブルドンの毒殺魔』、T.フィンドリー『嘘をつく人びと』、M.マローン『最終法廷』、D.ロッジ『交換教授』がある。
レビュー
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日系人への理解
他の方の言われる通り、なぜこの邦題になったのかわからない。私の読んだ本の中でもベストに入るもの。 大戦時の日系人をこれほど深く理解した作品を、アメリカ人が書いたことに驚く。
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ヒマラヤ杉ではありません。
小説の内容は、皆さんが書かれた通り、深くて、自然描写も優れ、感銘しましたが、原題のSnow Falling on Cedars の cedarは、ヒマラヤ杉ではなくアメリカ西海岸に広く分布するWestern red cedar(アメリカネズコ又はベイスギ)のことで、誤訳です。ヒマラヤ杉はその名の通り、ヒマラヤ周辺にしか、自然には分布しません。
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邦題及び紹介文が誤解を招いている
この本の著者は作品のモデルとなった島で長年英語教師として生活し、日系人の歴史について知り、彼らの受けた差別や不公正な扱いについて描きたいと思ってこの小説を書いたそうだ。この小説はミステリーとしてではなく、裁判と言う舞台を借りて描き出される日系移民の苦しみ、アイデンティティ、心の傷について訴えている作品として読むべきものである。 しかし、本作品が国際的にも高い評価を受けてきたことで、邦題及び作品の紹介文はよりセンセーショナルな宣伝効果を得るために、出版社により意図的に歪曲されてしまっているように思われる。他の方のレビューでも指摘されているとおり、著者に対しては侮辱的な行為である。
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重厚な作品
1954年 ワシントン州西サン・ピエトロ島で、刺し網漁師カールの死体が発見される。状況から他殺と判断され、日系二世カズオ・ミヤモトが容疑者として浮上する。超然と無罪を主張するカズオ。大戦の後遺症から、日系人への偏見が強い風潮の中、裁判が始まる。 ・・・ 単なる法廷もののミステリーと思っていたのだが、かなり文学よりの重厚な作品。架空の島サン・ピエトロの風景、そこに生きる人々の活写が感動的。 被告人のカズオ、被害者のカール、カズオの妻ハツエ、ハツエと十代の頃恋人であった新聞記者のイシュマエル。彼らの父祖の時代からつづく、曰く因縁が、第二次世界大戦を背景として描かれている。彼らの心の機微はもとより、当時の日系人たちの厳しい環境、猛威をふるう吹雪の中の裁判等、見所が多い。くわえて、脇役をふくめたる登場人物のキャラクターの造形がすばらしい。 原題のヒマラヤ杉が、象徴的に使われている美しいものがたりなんだけど、終わり方が唐突なのが気になることろ。 映画はこちら。 ヒマラヤ杉に降る雪 [DVD ]
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内容は良いが邦題が悪い
日本語訳のあることを知らなかったので苦労しながら原書を読み日系人を見るまじめな態度に感激しました。戦前、戦時中、戦後の米国での日系人の苦労話はよく聞きますがこれは裁判の進展を軸にして日系人の歴史を知る意味でも貴重な本です。今回日本語訳があることを知ってそれを読みましたが良い訳だと思います。ただ残念なことに「殺人容疑」と言う日本語題名はせっかくのきれいなイメージをぶち壊しにして非常に低俗な殺人小説のような印象を与えます。「ヒマラヤ杉に降る雪」と言う映画の邦題があるのにまことに残念なことです。題で第一印象がきまりますからこれは著者に対する侮辱とも言えるのではないかと思います。
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邦題よりも 『ヒマラヤスギに降る雪』という原題の方がふさわしい秀作
’96年、「このミステリーがすごい!」海外編で同点第12位にランクインした、アメリカ純文学系の作家デイヴィッド・グダーソンが’94年に発表した長編デビュー大作。米英でたちまちベストセラーになり、直ちに9ヶ国語に翻訳され、さまざまな文芸・図書賞を受賞している(’95年「ペン/フォークナー賞」、「バーンズ&ノーブル・ディスカヴァー賞」の新人賞、’96年「米国書籍商協会賞」、「太平洋北西沿岸書籍商協会賞」)。 時は1954年12月。ワシントン州の西、太平洋岸の小島サン・ピエドロ島で、カズオ・ミヤモトという日系人の刺し網漁師が9月に同業の男を殺した容疑での裁判が始まるシーンで幕を開ける。’36年以来という雪嵐の吹きすさぶ中、3日間の審理の最中に、被告人カズオ、その妻ハツエ、ハツエの十代の頃の恋人で島の新聞≪サン・ピエドロ・リビュー≫を個人で経営し発行するイシュマエルたち関係者の胸に去来するのは、人々に大きな傷を残し、運命の転機を与えた第二次大戦を中心とした、親子二代の歴史、アメリカにおける日系人の扱い、自身の従軍体験、若き日の淡い恋、苺農園の7エーカーの土地所有に関する確執などの思い出であった。 グダーソンは四季折々のみごとな自然風景の描写を背景に、ひとびとのそれぞれの人生を抑制されつつも喚起力溢れる筆致で綴ってゆく。 本書は、この『殺人容疑』という邦題と「このミス!」ランクインとでミステリーと思われがちだが、確かに裁判小説の体裁をとってはいるが、謎解きやサスペンスより、実はカズオ、ハツエ、イシュマエルたち登場人物の心の内側を解き明かしていくことに力が注がれた“文芸作品”といっていいと思う。その意味では邦題よりも原題の『ヒマラヤ杉に降る雪』のほうがふさわしいかもしれない。その証拠に、この原題のままに、イーサン・ホーク、工藤夕貴、鈴木杏出演で映画化されている。 ともあれ本書は、読後に深く静かな感動の余韻がいつまでも残る秀作である。