傀儡のマトリョーシカ Her Nesting Dolls (講談社ラノベ文庫 か 12-1-1)
文芸部員たちが、いじめと脅迫の連鎖を追う学園ライトミステリー。犯人を捕まえても背後の指示者がさらに別の脅しを受けていることが分かり、秘密が流出する仕組みと真の目的へ迫っていく。
作品情報
誰かの秘密が誰かを操る、入れ子状の脅迫劇。
公式チャレンジカップページで佳作受賞を確認し、講談社ラノベ文庫の紙版として刊行されたことを複数書店データで確認した。ISBN-13 9784065160466、ISBN-10 4065160464 を確認し、紙書籍 ASIN として同値を補完した。
レビュー要約
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語り口の勢いと、脅迫が入れ子状に広がる構成を楽しむ反応がある。軽快な読み味の中に、学校内の序列や秘密の扱いをめぐる不穏さが残る。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2019-05-02
- ページ数
- 258ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784065160466
- ISBN-10
- 4065160464
- 価格
- 204 JPY
- カテゴリ
- 本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル
阿喰はある使命を受け、文芸部員を集めていた。新メンバーの雑賀がいじめをうけているとの情報を得た部員達は、犯人捜しに動き出す。現場で犯人を捕まえることに成功するも、その犯人はカースト上位に命令されたと話す。首謀犯と思われる生徒に会いに行くが、彼女もまた何者かに脅されていた。脅迫の連鎖の終わりは見えず、真犯人に辿り着けない。何故、大勢の秘密が流出しているのか? 意外な事件の結末に驚愕する学園ミステリー
レビュー
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ミステリとして読むと微妙な作品だが「人未満の何かを人にしようとした愛の物語」として読むと味わい深い
創作の受け止め方、読み取り方は読者の自由なのだけど、その所為か「売り文句とは違うところで面白くなる作品」というのがたまにある。7回目となるチャレンジカップで佳作を受賞した本作もその一端となる作品であった事を予め申し上げておく。 物語の方は主人公の阿喰有史が所属する文芸部の新入部員を獲得しようと入学式で新入生代表を務めた雑賀更紗を勧誘している場面から始まる。所属部員不足で現在同好会の扱いにある文芸部に一人でも多くの部員を招こうと更紗にアプローチする有史だが、不器用すぎる性格が災いしてまともに相手にされず退散する羽目に。 その後同じ一年生の苅部一帆をなんとか部員として招き入れる事に成功した有史だが、文芸部の顧問でありOGでもある浜砂先生から文芸部の伝統である生徒の悩み相談を引き受ける事に。相談にやって来たのは柳井保美という技術工学クラスの生徒だったが、文芸部への入部を断った雑賀とは幼馴染であり雑賀がどうも特進クラス内で虐めにあっているという噂を聞き付け有史たちに探りを入れて欲しいと依頼してくる。柳井自身が聞き出せば良いではないかと訝しむ有史だったが柳井自身も雑賀とは現在微妙な関係で聞き辛いらしい。 依頼を受けた有史はさっそく放課後に帰宅しようとする雑賀に接触を図るが、雑賀がロッカールームで登下校用の靴ではなく運動用のシューズに履き替えて帰宅するのを目にして雑賀に「もしかして、朝、靴を履いてくるのを忘れたのか?」と大真面目に尋ねるが…… えー、皆さん、あらすじに「学園ライトミステリ」とあるが、これはきっぱり忘れましょう。 はっきりいってミステリとして読むと本作品相当に微妙です。 というか前半だけで犯人もトリックも大体見当が付いてしまい、ラストまで読んでもその予想が裏切られない時点でミステリとしてはかなり単純というか、昔ポプラ社が出していた「少年探偵団シリーズ」とかその辺とどっこいどっこいのレベルだと思った方が宜しいかと。 大体ミステリには大して親しみの無い小生ぐらいの読者でも序盤から「おいおい、これヒント出し過ぎじゃね?」と不安になるぐらいで作者は最初からこの作品をミステリとして読者に楽しませようと思っていたのかどうか甚だ怪しい。そういう意味ではミステリとして読むと星二つぐらいが妥当。本格的なミステリが読みたい、と思う人は回れ右して別の作品を探しに行きましょう。 ……が、本作がミステリとしては些か微妙だったとしてもダメな作品だったかと言えばそうではない。むしろ「おお、なんだこれは???」と最初から最後まで楽しく、興味深く読ませて貰った。本作はミステリというよりも「人間未満だった存在がヒトになっていく過程を追った物語」として読むとこの上なく面白い。作者がそういうつもりで書いたかどうか、なんてのは関係ない。現国のテストじゃないから「作者はどういうつもりでこの作品を書いたのでしょう?」なんてアホな事を考える必要は無いのである。読者が作品をどう読むかなんてのは読者の勝手だ。 冒頭の主人公・有史が特進クラスで新入生代表だった雑賀を勧誘しようとする場面。「友達になりたい、どうしたら良い」と尋ねた有史が相手をするのに面倒くさくなった雑賀から「友達料を払え」と言われて本気で財布から一万円札を引っ張り出す辺りで読者は「え、この主人公ちょっと変じゃね?」と気付くかと。 が、読み進めていくにつれて読者が感じた有史の「変」がちょっとどころではなく「この主人公、徹頭徹尾変じゃね?」という確信に変わっていくのにそれほどページ数は要さない。会話は噛み合わない、そもそもあって「普通の人間」であればしかるべき感情が欠落するなど、育ち方がどうやら普通じゃないという事が明かされていくにつれ、本作がミステリであるという印象はどんどん薄れていく。読者の目に映るのは「阿喰有史」という名の珍獣、もしくは怪物……要するに「人とは呼び難い何か」が行く先々で奇行に走りまくる姿を追った観察記録となっていくのである。 「変わり者」という意味では有史以外の文芸部員も文芸部が学園におけるはみ出し者の吹き溜まりみたいになっている時点で変な集団ではある。有史以外では初期の時点で唯一の部員だった先輩部員のハミル・ハーモニーも寝るか引き籠るかしかしない時点で相当に変わり者ではあるし、有史が最初に勧誘に成功した苅部も感性がズレまくった有史に口説かれていると勘違いして入部してしまう時点でどこかズレている。が、彼女たちの様な普通であれば「突っ込まれ役」に回るであろう登場人物が「ツッコミ役」あるいは有史という怪物の「引き立て役」に回らざるを得ないぐらいに有史のズレっぷりは常識の枠を遥かに超えている。 この作品は基本的に有史の一人称で語られている。なので作中で描かれる世界は読者の目から見ると相当にズレた感性と常識の持ち主である有史の脳内に描かれる世界であって、読者は有史以外の登場人物が見せる反応など僅かなヒントから有史のあずかり知らない所で何が起きているかを読み取る事になる。そして本作においてはその有史に見えない所こそが最も重要なのである。 その「有史に見えない部分」の象徴たる部分が姉であり入院中の綾乃という女性。有史が冒頭から取り組んでいる「文芸部再生」は人間性を欠落させる環境で生活していたという有史を引き取った阿喰家の娘である彼女が退院後に学園で居場所になる場を作っておいて欲しいという依頼に基づいている。 だが、有史の言動を追うにつれて彼女が置かれた状況、そして有史の目に映っている綾乃の姿に致命的なズレがある事が読者には嫌でも分かってくる。何より綾乃が何のために文芸部再生を通じて有史を動かそうとしていたのかが見えてくるにつれて物語はペーソスの色を帯びてくる。「人未満の弟」を一人ぼっちでこの世界に残さないために限られた僅かな時間で綾乃が何を与えようとしていたのか……それを知った時にはその愛の重さに震えた。 薄っすらと見える過酷な生育過程によって「人間らしさ」と呼べるものがすっぽりと抜け落ちた「怪物」である有史が姉の「願い」に従って無暗に動き続けた果てに「社会性」という人を人たらしめている物を少しだけ、本当に少しだけ身に付けていく様が作者が本当に描きたかったものなのかも、と思わざるを得ない。 ラストシーンでの雑賀とのやり取り、一人ぼっちになった有史に「貴方が泣けない分、私が代わりに泣いてあげるから」と雑賀が寄り添う場面は有史がようやく身に付けた僅かばかりの社会性が「自分の為に、自分の大切な人の為に泣いてくれる人」という形で象徴されている様に思われた。 そういう意味で本作はミステリの皮を被った「人間未満の、ある種の怪物が人間に近い何かに変容していく過程の記録」もしくは「人でない物を人にしようとした愛情の物語」と呼ぶべきかと。ミステリみたいな表面的な部分に捕らわれているとこの大切な部分を見落としてしまうかもしれない。 ライトノベルがキャラクターで読ませるジャンルだというならば、まさに本作は有史という稀有なキャラを持った主人公の存在感と、そのモンスターみたいな有史を人間足らしめようとした綾乃の愛情の深さで読ませた、という意味で「ライトノベルの王道」と呼べるかも知れない。そんな一冊。
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主人公が一番のミステリー
ミステリーとしてはかなり軽めで、中盤で犯人は分かってしまうと思う・・・ ただ主人公がかなり変人で、過去になにかあったとほのめかされる程度で、 そのことが一番のミステリー! あと、ラノベなのに挿絵があれでは残念
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不幸やタブーの扱いへの違和感
『学園ライトミステリー!』に対し,ホラーを連想させるカバー絵が目を引きますが, 内容はともかく,ラノベレーベルでこのテイストはちょっと…というのが第一印象です. ただ,その内容にしても,廃部寸前の文芸部を隠れ蓑にした『謎部活』をはじめとし, 他人の気持ちがわからず,感情に乏しい主人公の少年など,今さら感があるのは否めず, その彼のおかしな日本語や,いわゆる空気を読まない振る舞いには不快感しかありません. 当然,それらの言動には理由があるはずなのですが,病気や虐待を匂わせるものの, 具体的なことは語られず,繰り返されるやり取りに苛立ちばかりが膨らんでいきます. とはいえ,重たい過去があるのは想像に難くなく,中途半端な扱いに違和感を覚えます. 最後も少年に芽生える変化や,彼を思う人々の思いが切なく,美しく閉じられる一方, ここでも不幸が使われる様子が,どうにも安易に映って素直に受け取ることはできず…. また,どの節もページの最終行で締められ,次は新しいページからとなるのですが, その『帳尻合わせ』のせいか,何度か不自然な終わり方があったのは気になるところ. このほか,ミステリもライトとはいえ,仕掛けや動機など全体的に物足りなさがあり, タイトルにもなっている入れ子,連鎖する構造にも特別なものは感じられませんでした.