作品情報
花木荘のひとびとは、受賞歴にふさわしい密度で人と世界の関係を見つめる。
髙森美由紀の『花木荘のひとびと』は、受賞対象として確認できる作品である。公開書誌や出版社情報で単行本化を確認できる場合は識別子を記録し、単独書籍として確認できない場合は雑誌・掲載媒体の識別子を流用していない。
レビュー要約
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不器用な人物たちを温かく包む語りが評価される。地方の空気と食の描写が物語の支えになっている。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2017-12-14
- ページ数
- 304ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.5 x 1.7 x 15 cm
- ISBN-13
- 9784086801669
- ISBN-10
- 4086801663
- 価格
- 54 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
盛岡市北上川沿いにある小さなアパート、花木荘。 そこに住む人々は少し不器用な人間ばかり。 心の隙間をネットショッピングで埋め、未開封の段ボールに囲まれた生活を送るOL、時計修理に没頭し、うまく人間関係を築けない青年、 植木屋の実家を飛び出して、美容師になったものの高いプライドが邪魔をして、客と喧嘩ばかりしている若者。 そんな人々が集う花木荘の管理人・トミは、いつも七輪でにんにく味噌のおにぎりやホタテなんかを焼きながら、ぶっきらぼうに、でも、優しく彼らの心に踏み込んでいく。 不器用な人々が少しずつ周りの人々の優しさに気づきながら成長していく、ちょっと泣けて、ちょっと癒やされるハートウォーミングストーリー。
レビュー
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一人暮らしのアラサー男女が集った盛岡のアパートを舞台に人生の「さびしさ」と人の「あたたかさ」を丁寧な筆致で描いた秀作。
集英社が1983年から続けている公募文学賞「ノベル大賞」。 もともとは雑誌「コバルト」の名を冠していたこの文学賞も2017年で48回目。 今回の大賞に選出された新人さんの作品という事で手に取ってみたのだけど、 実は既に産業編集センターという出版社が主催している「暮らしの小説大賞」でデビュー済みの方らしい。 物語の舞台は岩手県盛岡市。 盛岡駅から徒歩15分の北上川沿いにある二階建てで大家の住居も含めて4部屋という小さなアパート「花木荘」で 一人暮らしを送るアラサーの男女3人と84歳になる大家のトミが織り成す日々を描いた短編連作形式の作品。 読み終わってしみじみと「良い物読ませてもらったなあ」と思わせてくれた一冊。 決して「劇的な出来事」を描いた作品ではない。 東北のアパートで独り暮らしを送るアラサー男女三人の身に起きたちょっとした出来事が話のメインになっている。 盛岡より更に北の町で独り暮らしを送る老いた父親を自分の部屋に迎える事になった買い物依存症のOL・志村こはく。 不仲な両親の下で唯一自分の味方だった祖母が老人ホームの中で自分に関する記憶を失いつつある事を突き付けられた時計屋・浅野翔。 久しぶりに再会した個性的な性格をした幼馴染に振り回されながらも彼女が抱えていた秘密と不安を知ってしまう美容師・上杉昇平。 彼ら三人に共通するのは親との関係に些か問題を抱えているという点。 母親が結婚した男性がひどく歳が離れた「お爺ちゃん」みたいな年齢である事が幼い頃から不満であったり、 父親の経営する店が業績不振で母親と諍いを続けた末に不審な死を遂げてしまっている事であったり、 あるいは植木屋という稼業がありながら息子が美容師の道を選んだことに不平タラタラな父親と反目し合っているなど、 それぞれに親の存在が悩みの種になっているのだけども、アラサーという思春期の様な露骨な反発も出来ない年代設定が絶妙。 アパートで気ままな独り暮らしを送れるほどには自立しているけれども、親との関係や現代特有の対人関係の距離問題もあって どこかに「さびしさ」を抱えている点で彼ら三人は共通している。 物語はそんな「さびしさ」を抱えた存在である彼らがその心の隙間とでも言うべき部分を埋めてくれる存在と出会う形で進む。 物語は第一、二章がこはくと翔の物語、第三、四章が昇平と幼馴染の葵の物語という形で大きく二つに分けられている。 大きなテーマとしてはアラサー男女三人が抱え続けてきた親との間の問題を乗り越えて、親に反発する「子」という存在から 共に人生を歩むパートナーを見付けて本当の意味で自立し、自分の人生を歩み始める時期を描いた物語と言っても良いかと。 こう書くとひどく真面目くさった作品の様に思われるかもしれないが、これで中々にユーモアが込められているのである。 特に第一章の買い物異存に陥ったOLこはくの部屋の中の描写なんかは余りの惨状に「おお…もう…」と言葉を失う。 買ったは良いが開封すらしていない商品ケースの間を「たっぷり肥ったカブトムシのメス」みたいな生き物がカサカサ動き回り、 父親が来るという事で大家のトミが片付けの助っ人として呼んだ翔がその有様を見て固まる所など苦笑必至のひどいもの。 (しかも、こはく自身は「決して自分の住んでいる所は「汚部屋」ではないと言い切り、「カブトムシのメス」は 未開封のクッキー缶でプチンと潰してティッシュでポイッと片付けて平然としてる所で再び「おお…もう…」となるかと) キャラクターが個性的で、なおかつ非常に活き活きと描かれているのも大きな特徴。 特に後半、第三・四章で描かれる昇平と葵の物語においては久しぶりの再会を通じて昇平を振り回す葵の人物造形が奥深い。 幼馴染の「ショーへーちゃん」に美容師への道を決意させた小学校以来の再会を果たしたと思ったら、無農薬主義を振りかざすわ、 猫を押し付けてくるわ、一緒に飲みに行ってグデングデンに酔っぱらってしまうわと傍若無人もいい所なのだけど、 その明るさが強調されているからこそ、ひとりぼっちで生きている女性の抱えてきた 「どうしようもなく上手くいかない事だらけの人生と自分の身体さえ信用できない不安」が明かされた時の落差が大きい。 葵との関係の中でアパートのアラサー組の中では一番人間的に未熟というか幼さが残っていた昇平が 父母との関係を見直し、自分と葵の人生を始める様子を描いた第四章はまさに「脱皮の季節」の物語として描かれている。 (難物と思っていた父親ではなく、葵の抱えている問題を知った母親の方がラスボスになる展開が実にリアルだ!) そういう意味で花木荘というアパートはアラサーという年代を迎えるまで本当の意味で大人になり切れていなかった男女が 「さなぎ」という時期を過ごす繭の様な物だったのかもしれないと思わされた。 そんな彼らを口は悪いながらもアパートの前で焼きおにぎりを焼きながら温かく見守り続けてきた 大家のトミのキャラクターがまた素晴らしい。 さんざん悪態を突きながらも本当に必要な時には手を貸すことを惜しまないし、 ここぞというタイミングで一番必要な言葉を口にする姿はまさに「グランドマザー」とでも称するべきか。 東北の風が感じられる様な季節の移ろいを丁寧な描写で描き、人生の転機を迎えた男女三人の姿を追いかけた秀作。 まさに伝統ある文学賞の大賞に選ばれるに相応しい「読むべき一冊」。
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残念
タイトルのイメージで読むと肩透かし 最後の植木屋息子=美容師の話を書きたかったんだろうなと 思うぐらい、1・2章が手抜き感満載 汚部屋OLとミニマリスト時計職人がくっつくあたりが、 どっかの不動産ドラマみたい 美容師の話もカノジョがメイク&カットしたら突然美女になったとか、 ラストの流れまでがTLのお約束展開のよう・・・ 一番の違和感がいつも焼きおにぎりしか作ってない大家だった アドバイスってほどのこともしてないし 最後のアレ登場は次巻が出るってことなんでしょうけど どの話も中途半端でした、とにかく既視感がありすぎるのと話がひたすら暗い
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