甘粕正彦乱心の曠野
『甘粕正彦:乱心の曠野』は、佐野眞一によるノンフィクション作品。実在の人物と出来事を軸に、記録の力を重ねながら、受賞作としての個性を示している。
作品情報
『甘粕正彦:乱心の曠野』は、佐野眞一の受賞歴を語るうえで重要なノンフィクション作品。
『甘粕正彦:乱心の曠野』は、佐野眞一によるノンフィクション作品。実在の人物と出来事を軸に、記録の力を重ねながら、受賞作としての個性を示している。 書誌識別子は図書として確認できる範囲で補完した。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2008-05-01
- ページ数
- 475ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784104369041
- ISBN-10
- 4104369047
- 価格
- 2690 JPY
- カテゴリ
- 本/歴史・地理/日本史/一般/日本史一般
第31回(2009年) 講談社ノンフィクション賞受賞
レビュー
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名作です
里見甫のことを描いた『阿片王―満州の夜と霧 』に甘粕大尉についても取り上げられており、興味をもって購入。 著者の主人公だけでなく周りの人物について詳細な取材は健在で、475頁というボリュームであったが、『阿片王』同様飽きることなく一気に読んでしまった。『巨魁伝」や『阿片王』同様残りのページが少なくなるごとに「ああ終わってしまう」と思った本は久しぶりである。 この本を読む前まで甘粕大尉は、大杉事件の人というイメージしかなかったが、複雑な人物像や組織での中での生き方や組織の長としての人の動かし方など考えさせられることが多い作品であった。
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力作だが、肝心の謎の中心に迫り切れていない
大杉栄一家惨殺の主犯とされた憲兵隊大尉甘粕正彦を追ったノンフイクションである。戦前最も世間の注目を 浴びた事件であり、未だに謎多きものである。そして、甘粕自身も10年ほどの懲役を食らいながら、恩赦 などで2年半ほどで世に出てきている。彼は、その後満州に現れ権謀術策の中心にいたとされる。大杉 事件も謎に包まれた事件だが、この甘粕正彦という軍人もいろいろな顔を持った複雑な人間であったらしい。 文庫にして600ページほどの大作であるが、傍流の人間や事件にページを割きすぎて、肝心の甘粕自身と 言う人間へのアプローチが消化不良の感がある。大杉事件そのものは陸軍や警察が仕組んだ事件で、 甘粕はその下手人に仕立て上げられた犠牲者であるとの強い推測は出来るが、彼自身がなぜそこまで その秘密を地獄までもっていく必要があったのか、ここら辺が分からぬままだ。力作であることは認めるが 肝心のポイントに迫り切れていないことが残念である。
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己を殺し志を貫いた清潔な魂
悲劇の主人公を演じざるを得なかった魂。
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まだわかりません。
この時代のことは勉強中なので、まだよくわかりません。甘粕正彦氏のことは、まだ謎です。
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鬼籍前の人々の貴重な声を拾う。
■ 【甘粕大尉を巡る人々 】 著者は、社会主義者(大杉 栄)殺しで当時の、憲兵司令部 という官僚組織のスケープゴートになった甘粕正彦大尉 に関して、その人物像を関係する人物、文献、その他の 資料を国内のみならず、中国の関係各地をも訪ねて面 談して、本書を著している。 ■ 【甘粕大尉の半生 】 甘粕大尉は、懲役10年の実刑判決を受け、千葉の刑務 所で服役。しかし、皇室の慶弔行事も重なり、わすか3年 弱で仮出獄をする。その後、結婚。フランスでの新婚滞 在から帰国。中国大陸に渡り、1932年の『満州国』建国 に尽力。東条英機関東軍参謀長らと親交、後、1939年 のノモンハンでの大敗北の為、関東軍の主要メンバー は、帰国。甘粕大尉は、満洲に留まり、満鉄映画会社理 事長に就任。阿片王の里見 甫と共に満州国を支える 闇の帝王となる。敗戦時に青酸カリにて自害。 ■ 【新聞社の田舎芝居 】 ところで、全国紙が時の権力者の「提灯持ち」になること は、ジャーナリズムの本筋から外れると考えるのだが、 当時の一端が本書に描かれている。それは、「憲兵隊と 新聞社が手を組んだ田舎芝居」と著者に言わしめている 仮出獄後の甘粕大尉との会見記である。(報知新聞、国 民新聞)著者は、隠された伏線も指摘している。 ■ 【口開かぬ鬼籍前の人々 】 10日後の朝日新聞が実際の単独会見をスクープ。とこ ろで、その後の朝日新聞と言えども、太平洋戦争中は、 「大本営」発表に従わざるを得なかったように、新聞社と しての信念は時としては消えてしまい、単なる通信社の 姿に堕落した。真相を風化させ忘却させる歴史の残酷さ と、鬼籍前の人々の隠蔽との戦いに臨んだ著者は、本 当に数多くの貴重な真相を引き出している。あたかも、 外套を太陽の暖かさで脱いでもらうように。脱帽。
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特になし
嘗て読んで、当時の上司が実名で記載されていたので、再読したく購入。ほぼ新本。
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おもしろい
事実と想像が入り混じった作者の思い入れが強い作と思いました。 私の父親が暮らしていた満州のかすかな息吹を感じられました。 戦後引き上げた人たちの心情が少し理解できるような気がします。
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甘粕に対するイメージ一新
本書を読み終わった後、再度読み返したくなった。甘粕の持ついくつかの特質に惹きつけられたためだろうか。自分に厳しく、金にきれいで、部下の面倒見がよく、形式より物事の本質を重んじ、犠牲的精神に富み、最後は自決するという潔さにさわやかな人柄を感じた。一方で酒乱という負の側面を持っていたのでその摩訶不思議な人格が気にならずにはいられない。又、満映時代には、ボーナスを渡す時、「ここで封を切ってはいけません。うちへ帰って奥さんに渡しなさい。」というおせっかいとも思えるアドバイスを部下にしていたという。当時の価値観から見れば男の甲斐性とは正反対とも思えるそのような言葉を発していた所に甘粕の真骨頂があるように思う。 上層部から見れば、実に使い勝手がよい人間であったと思う。損な役回りをさせても文句を言わない。自分が貪ろうと思えば貪れる立場にいてもそれをしない。組織の汚れ仕事をさせるにはうってつけの人材であったのだろう。どんな組織にも必ず汚れ仕事があり、大正末から昭和初期の怪しげな時期においては特にそうであったと思われる。「時代の方から魅入られ、歴史の表舞台に心ならずも引きずり出されてしまった男」という著者の冒頭の表現は甘粕の人生を一言で言い表した言葉だと思う。本書を読んで、「陸軍の走狗」という甘粕に対するイメージは完全に払拭された。