日本の文学賞

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あやかし露天商ティキタカ (GA文庫)

GA文庫大賞

あやかし露天商ティキタカ (GA文庫)

井上樹

机の引き出しから現れた謎の美少女ティキタカが、あやかし相手の露天商を開くため高校生の部屋を借りようとするラブコメディ。奇妙な商品と取引が、日常を軽妙にかき回す。

あやかしラブコメディ高校生露天商

作品情報

あやかし向け露天商を名乗る少女が、高校生の部屋に店を開く。

SBクリエイティブ公式で GA文庫刊行、ISBN、ページ数、受賞作であることを確認した。

書籍情報

出版社
SBクリエイティブ
発売日
2015-11-13
ページ数
312ページ
言語
日本語
サイズ
10.6 x 1.5 x 15 cm
ISBN-13
9784797385120
ISBN-10
479738512X
価格
671 JPY
カテゴリ
本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル

机の引き出しから美少女露天商が現れた!? 「――ウイ●レ。それ一番新しい奴ですか?」 「え? ……あ、あぁ、そうだけど」 ある日突然江口海人の机の引き出しから現れたのは、ウイ●レ好きのティキタカと名乗る美少女だった。 ティキタカはあやかし相手の商売をしていて、店を開くために海人の部屋を借りたいと言うのだが……!? 部屋を貸すメリットが無いと渋る海人に、賃料代わりにモテ薬を渡すと告げるティキタカ。 露骨な買収に対し、海人は毅然と言うのだった。 「まず、一カ月だけ契約してみるわ」 果たしてモテ薬に釣られた海人を待ちうけるさまざまな運命とは!? 〝美少女〟時々〝あやかし〟な、第7回GA文庫大賞《奨励賞》受賞作。 ---------------------------------------------------------------------------------- GA文庫10周年キャンペーン開催中 10周年を迎えるGA文庫は感謝の気持ちを込めて、豪華プレゼントキャンペーンを開催中! 今年発売される新刊全てにキャンペーン用の応募券が付属! 2種類の応募券を揃えて応募し、豪華プレゼントをGETしよう! ----------------------------------------------------------------------------------

第7回GA文庫大賞《奨励賞》を受賞した「あやかし露天商ティキタカ」でデビュー。

レビュー

  • 初期のGA文庫を思い出す素朴なジュブナイル風味の一冊。雰囲気は良いのだけど技術的な完成度は今一つ

    ティキタカ=スペイン語で「チクタク」の意味。時計の機構の様に正確なパスワークを武器とするFCバルセロナの戦術の俗称 ラノベ以外ではサッカー関係の本ばかりレビューしている小生にとっては無視できる筈も無く気が付けば拝読していた… 物語は主人公の高校生・江口海人が部屋でウイイレをしていたら突如机の引き出しがガタガタ言い出した場面から始まる 「すわ、ポルターガイストか!」と身構える海人の前で勢いよく開いた引き出しの中から現れたのは青狸ならぬ白髪の美少女 実際に泳ぐ金魚柄の着物を身にまとい宙をふわふわ舞うその美しい少女は自身をあやかし相手の露天商ティキタカと名乗る 妖気の溜まり易い海人の部屋は露店をひらくのに相応しいとティキタカは週5時間ほど間借りして店を開きたいと申し出る その賃料として効果が一日限りのモテ薬を提供すると言うティキタカ相手に試しに一ヶ月だけ、と了承する海人 翌朝学校に向かう道すがら海人は幼馴染で県下有数の美少女と噂の神倉葵が登校しているのを目にする。かつては仲良しだった葵だったが 運動音痴で成績も中の下、インドア趣味のぼっちな海人は成績優秀で同じ高校でも特別進学クラスに所属する葵との間に 距離を置くようになってしまっていた。モテ薬の効果を試そうかと思った海人だったが「もし効果無しだったら」と躊躇し声を掛けられない しかしモテ薬は本物で目の前を通るだけで歓声を上げる女子高生を前にイケメンの気分を味わう海人だったが、薬のお陰と思うと気分は晴れない そんな帰り路、葵に出会った海人だったが葵はモテ薬に反応した様子を見せない。「あまりに強い悩みがあると効果が出ない」というティキタカの言葉を 裏付けるかの如く、葵の母親からは葵が落ち込んでいると聞かされる。葵は「自分が祖父を殺してしまった」と悩んでいるらしいが… なんというか初期のGA文庫を思い出す雰囲気を持った作品。最近のGA文庫と言ったら、「ヒロインがやたらと脱ぐ」「漢字造語と中二ルビのタイトル」 少しマシな味方でも「オタク向けのパロディネタが多い」…みたいなイメージを持つ方も多いかと。しかし創刊初期のGAはなんというか伝統的な 少年向け文学調の作品を数多く出版していた事はもっと注目されるべきかと。「クレイジーカンガルーの夏」、「ジョン平とぼく」、「カラクリ荘の異人たち」 といった素朴ながら味わい深いジュブナイル的作品群は今でも読むべき価値を持っている 本作はそんな初期のGA文庫の良さを引き継いでいるのではと思わされる様な、特に序盤から中盤にかけては「ほー!」と唸らされる部分が多かった 主人公の海人は異能も何も持たない冴えない高校生なのだけど、せっかくモテ薬を使っても再び仲良くなりたいと願う幼馴染相手に 「もし無視されたらどうしよう」と声を掛けられないヘタレっぷりは中々リアル。ヘタレは負けるからヘタレなのでは無く勝負できないからヘタレなのだと 等身大の「冴えない少年」を感じさせてくれる物を持っている。そんなヘタレな海人にクールなんだか無愛想なんだか分からないティキタカが あれこれと要らんツッコミを入れてくるやり取りは読んでいて思わず「フフッ」となる事請け合い そんな冴えない海人が「おじいちゃんを殺してしまった」、「大好きだったのに死の直前に当たり散らしてしまった」と取り返しのつかない自分の 祖父への仕打ちを悔む葵の悩みを解決するべく立ち上がる所から物語は始まる。露天商で不思議なアイテムを扱うティキタカに何とかならないかと 相談を持ち掛け海人の「人間」を切り売りする事で、その超常の力を持つ道具を使い、葵を死んだ祖父に引き合わせる事に成功する 物語はティキタカが海人の部屋で開く露店に現れた戦闘狂で数え切れないほどの人を殺めてきた最強のあやかし「テンツキ」と ティキタカのモテ薬を使った海人を前に「おかしなものと付き合ってないか?」と見抜いてみせたクラスメイトでティキタカの顧客という美少女・伊藤雫の 秘められた関係を知ってしまった事から大きく動き始める。伊藤財閥の一族で廃校間近の高校から一年の途中で転校してきたという 不審な過去を持ち、「どんな人間でも死に至らしめる薬」を買った雫がテンツキへの復讐を望んでいると知った海人が協力なんていらないと突っぱねる 雫に対して「伊藤が一人で苦しんでいるのなんていやなんだ。伊藤がどう思おうが僕がいやなんだ」、「僕らはもう友達じゃないか、仲良くする理由なんて それで充分じゃないか。それ以上の事なんて面倒臭いしイチイチ考えたくないよ!」と一方的に訴える海人の姿勢は実に未熟である 何の力も無い冴えない少年が長年にわたって無敵の化け物相手に復讐を誓い続けてきた少女に、なんとまあバカげた理由で協力しようとするのか! …でも、それで良いんじゃないだろうか?最近のありがちなライトノベルみたいに特別な運命や出自、能力がなければ動けないヒーローと違い 無力でも未熟でも「友達だから」「人が目の前で苦しんでいるのが嫌だから」という単純極まる理由で動ける主人公。実に良いと思う 素朴な動機で主人公が動き、関わる登場人物も必要以上のキャラ付けを施さないというあっさり風味も最近では珍しい。前半で葵が祖父に 当たり散らした理由や、その後のひどい後悔なども含めて登場する少年少女がまさしく「等身大」なのである 小生ラーメンが好きで方々を食べ歩いているけど、やれ博多トンコツだ、家系だ、二郎インスパイアだ、といったコテコテも悪くないが、 あまりそういう物ばかり食べているとたまに「あっさりした醤油ラーメンが食べたい…」と猛烈に原点回帰したくなるのである 本作はまさに読者サービスが過剰過ぎる昨今のラノベ界における醤油ラーメン的位置付けかと。未熟で無力な少年が未熟なりに行動してみせる事で 物語が動くのは伝統的ジュブナイルを引き継いでいた初期のGA文庫っぽい ただ、雰囲気は非常に良いのだけど、技術的に完成されているかと言えば残念ながらかなり精進が必要かと。中盤から後半にかけてのキーとなる 雫とテンツキの関係はそれほど掘り下げられず、ストーリーの展開も飛ばし気味。特にテンツキと対決後に海人が経験した謎の展開に関しての 種明かしが会話主体で、伏線もほとんど張られていないので何だかひどくご都合主義に思えた事は否定できない。テンツキの為した過去の所業も 中途半端にしか明かされないのでモヤモヤした消化不良感が残ってしまう点も読後感が今一つスッキリしない原因となっている 筆は達者だけど個性が今一つ感じられない作家もいれば、個性はあるのにそれを発揮するには文書技術・作劇技術が不十分な作家もいる まことに新人漁りは難しいなあ、と感じさせられた一冊であった

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