作品情報
医師である語り手の前に、病を抱えた旧友が患者として現れる。
表題作と「ステージ」を収めた作品集。作者の医師としての視点が、終末期の医療、身体の変化、死を前にした人間関係を冷静かつ切実に描き出す。
レビュー要約
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医療現場の静かな緊張と、患者を知る者としての私的な苦しみが重なり、抑えた筆致の中に重い余韻を残す作品として受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- ベネッセコーポレーション
- 発売日
- 1991-03-01
- ページ数
- 205ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784828823720
- ISBN-10
- 4828823727
- 価格
- 800 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
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レビュー
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医師である前に、ひとりの人間
大学の教養学年を「別にすることがないから」という理由で、お互いに会話するでもなくジャズ喫茶でさぼっていた二人が、やがて医師と患者という立場で再会し、また別れるまでの物語。医師の側から書かれているので、そちらの心理描写は見事。患者の側の心理は極限まで抑えて書かれていて、かえって読み手にあれこれ考えさせる。この二人を「友人」ではなく「知り合い」の関係にとどめたところが生きていると思う。 同時収録の「ステージ」は、恋人であり同じ医師でもある女性の主治医となった医師の心の葛藤を描いて、大きな動きは何もないのに、飽きさせない。 石黒氏の作品は3作目だが、どれも医師の使命感と無力感を決して気負うことなく淡々と描いていて、最近はやりの、医師によるパフォーマンス的な作品とは質が異なる。あくまでも地味に静かに医師の心理を描き続ける。文章も文句なし。何度も芥川賞候補に上がるというのも、素直にうなずける。 星が四つなのは、個人的に虚実入り乱れた「ハネネズミ」や「冬至草」のような作品の方に魅力を感じるからで、作品としては何ら問題はない。
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医療ミスもバレなきゃ「結果オーライ」!?
癌という病気、初期ならばともかく、ある程度進行してしまった場合は治療が難しくなります。それ以上に難しいのは患者に対する告知だ、ということを思い知らされる一冊です。 万が一、口がスベってバレちゃった、なんてことになったら大変です。これも医療ミスということになるでしょう。裁判になったら負けるでしょう。 『最終上映』では、主人公の医師が癌の告知を巡って思い悩む心理描写が厚く描かれています。でもやっぱり医師というのは特別な職業なのでしょうか……医師でない者には共感しにくいかもしれません。冷静に、「自分も医者だったら共感しているだろうな」とは思うのですが。 (癌で)寝ている患者と、告知で悩む医師、という構図なので、心理描写以外にはあまり動きがありません。その辺でも読者の嗜好が分かれそうです。 とにかくメインは医師の心理描写ですが、一般人にはなかなか推し量ることのできない医の現場の情景を垣間見ることができる、という愉しみ方もアリかもしれません。
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- 海燕新人文学賞 第8回(1989年) ・受賞