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自己創出する生命: 普遍と個の物語

毎日出版文化賞

自己創出する生命: 普遍と個の物語

中村桂子

『自己創出する生命:普遍と個の物語』は、中村桂子による哲学書房から刊行された作品で、毎日出版文化賞で評価された。題名が示す対象を軸に、著者の関心と時代背景を読ませる一作である。

受賞作毎日出版文化日本文学

作品情報

『自己創出する生命:普遍と個の物語』は、毎日出版文化賞で選ばれた中村桂子の作品である。

『自己創出する生命:普遍と個の物語』は、中村桂子の仕事の中で毎日出版文化賞の対象となった作品である。1993年に哲学書房から刊行された一冊として、作品名に掲げられた主題を中心に、人物、社会、歴史、記憶などを読み解く内容を持つ。

書籍情報

出版社
哲学書房
発売日
1993-08-01
ページ数
226ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784886790552
ISBN-10
4886790550
価格
3260 JPY
カテゴリ
本/科学・テクノロジー/生物・バイオテクノロジー/生物学

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レビュー

  • 「生命というスーパーコンセプト」を幅広い視点で論じた魅惑的啓蒙書

    生命科学の第一人者にして、現在では「生命誌」の提唱者として名高い著者が、「普遍性と多様性」を併せ持つ生命の仕組みをゲノムを中心に考察した本。同時に、「科学」から「誌」への移行を図った「生命誌」分野の確立の経緯を述べた本でもある。 まず議論の土台として、DNAの意義や研究史が取り上げられる。そこで、DNAを単なる「自己複製系」と捉える事や「遺伝と進化」だけに比重を置く考え方に疑問を呈する。また、「利己的遺伝子」とのドーキンスの確信犯的レトリックを面白半分に扱う風潮を戒めてもいる。そして生命の総体的理解上、DNA解析という物理学的手法で免疫等の個々の事象を説明する限界を論じ、歴史的視野を採り入れる必要性を述べる。そこに登場したのがゲノムであり、「生命誌」と概念を共有する。生命を総体的であるだけでなく、歴史的存在として見るものであり、「普遍性と多様性」及び「科学と歴史」を結び付ける「知の体系化」である。「遺伝子=共通性」、「ゲノム=遺伝子の組合せ=個別性」と区分しているのも明快。また、時間を因子にしている点が独創で、「誌(物語)」が書かれている資料が「ゲノム」と捉える。そして、発生過程のゲノム複製時には周囲の情報も取り入れた新しい物を創り出すのだから、「自己創出系」と呼ぶに相応しい。生命現象の基本は「発生」と言うのが著者の主張である。発生を基本とする以上、生命の概念の中に時間の要素が必ず入る。そして、ゲノムの持つポテンシャルの実現化を自己創出型生命系と捉えるのが著者の主眼であり、その観点で生き物の有様の変化を綴った物語が「生命誌」である。 読んでいて、人間、自然、科学、歴史、日常感覚、哲学等が非常にバランス良く考察されている点に感心した。「「理性」をも含むスーパーコンセプトとして「生命」を語りたかった」との意欲も買える。ゲノムを中心に幅広い視点で生命を論じた魅惑的啓蒙書。

  • 同著者の原点に相当するような本

    生命誌を提唱する著者が、90年代初期に考えていた頭の中を著書にしたような内容である。他の著書の原点に相当する内容だが、アイデアは出ているものの考えがまだ散らばっている印象である。 分子生物学の進展によりゲノムのことがどんどん明かになり、物質還元的な世界が支配を強くする中で、機械論的な解釈ではない形で、著者は「生命」を捉えようとしている。ゲノムは生命を紡ぐ普遍的な側面を持ちつつ多様性を内包しており、自己複製という表現よりも自己創出の方が適しているとしている。そこに生命の本質や生きものの物語を見出したいと結んでいる。 生命誌に興味があるのであれば、本書よりも同著者の「生命誌とは何か」、「科学者が人間であること」、「小さき生きものたちの国で」をお奨めしたい。

  • 一度はよむべき

    著者の中村桂子さんがテレビ出演されていたのをきっかけに読もうと思いました。 「利己的な遺伝子」と読み比べるとなお興味深いかと思います。 個々の言及には多少浅く感じる部分はあるかもしれませんが、著者の思考内の時系列と空間的広がりは女性ならではのものであり、 命に対して考えることを促す要素が多く感じられます。ホンマでっかの澤口先生の学者としての活躍も知ることができました。

  • DNAという呪縛への格闘、の軌跡

    「利己的な遺伝子」の邦訳が出て丁度10年。時代は確実に進んでいた。 どんな現象であれ「あ、それはね、遺伝子が生き残るためだったの」と言つて仕舞へる状況が、究極の真理に到達したのだと思えたのはほんの一時だった。某女史なんかが生物のあらゆる営みを半分本気半分ジョークで片っ端から理由付けしちゃったり(面白かったけどね)、真に受けて中途半端に真似する人らも出てきて、それらが現状肯定の悪しき優生学に陥る危険性を孕んでいただけなら兎も角、「利己的な遺伝子」を前提にすると大なり小なり後追いの決定論に陥らざるを得ず、全てのものは是然り、善悪なんてのは単なる思い込み、努力したって結果は一つ、という調子で「価値」が相対化されてしまい、あれほどホットだった生物学を始め、学問の世界は閉塞的状況を迎えるに至った。よーするに面白くなかった訳だ。しかし究極の真理は手に入ってしまった、それ以上何するよ? 答の一端が此処に在ります。後半は勇み足だったかもしれませんが、それだけフツフツしてたんだなというのが逆によく伝わってきます。本書に併せて「微生物生態学入門─地球環境を支えるミクロの生物圏」あたりを読まれると、最近の状況が広く見渡せる筈。

  • 生命へ新しいアプローチ

    生命誌という生命へのアプローチの方法にとても共感できた。生命をどう定義していくかについて、これまでいろいろな考え方があったと思うが、中村さんの普遍性と個別性をあわせもつ生命の本質への迫り方は、どこか仏教思想と通じるように感じた。ほんとうに面白く、生命論的な世界観の創出に興奮した。

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