作品情報
理念としての人権を、歴史と政治の両面から捉え直す。
人権の理念がどのように歴史化され、どのように国際政治の制度へと組み込まれてきたかを整理する。現代の人権外交を考えるうえでの基礎的な視点を与える一冊。
書籍情報
- 出版社
- 岩波書店
- 発売日
- 2022-02-18
- ページ数
- 252ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 1.1 x 10.7 x 17.3 cm
- ISBN-13
- 9784004319122
- ISBN-10
- 4004319129
- 価格
- 1056 JPY
- カテゴリ
- 本/社会・政治
今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも必要とされるSDGsの要・普遍的人権の理念や制度の誕生と発展をたどり、内政干渉を嫌う国家が自らの権力を制約する人権システムの発展を許した国際政治のパラドックスを解く。冷戦体制崩壊後、今日までの国際人権の実効性を吟味し、日本の人権外交・教育の質を世界標準から問う。
筒井清輝(つつい きよてる) 1971年東京生まれ。1993年京都大学文学部卒業、2002年スタンフォード大学Ph.D.取得(社会学)、ミシガン大学社会学部教授、同大日本研究センター所長、同大ドニア人権センター所長などを経て、現在、スタンフォード大学社会学部教授。同大ヘンリ・H &トモエ・タカハシ記念講座教授、同大アジア太平洋研究センタージャパンプログラム所長、同大フリーマンスポグリ国際研究所シニアフェロー、東京財団政策研究所研究主幹。専攻は、政治社会学、国際比較社会学、国際人権、社会運動論、組織論、経済社会学など。 著書:Rights Make Might: Global Human Rightsand Minority Social Movements in Japan (Oxford University Press 2018)など
レビュー
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人権と国家の関係を分かり易く解説
ロシアによるウクライナ武力侵略の一週間前に出された本だが、ロシアの侵略と戦争犯罪を予言していたように見える箇所もある。 人権擁護のための国際的な運動は第2次大戦以後に強まり、世界人権宣言や難民条約など各種人権条約の制定などはその果実だが、国家の論理が人権理念を押しつぶしたことも何度もあった。ロシアのウクライナ侵略はその典型だ。 歴史的な経験に基づいて、日本の文脈ではどのような運動の方法が人権の伸張と保護に効果的なのかについて大切なヒントが示されている。また、日本政府にとっても「人権力」を強化することが国際的な地位の向上に効果的であることが示されている。
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国際人権と人権力
国際人権の話である。 国家は内政干渉を嫌がるが、国際人権は多くの国家が集まる国家機関で人権に関わる内政干渉を認める制度である。 本書は4章からなるが、各章ごとに何が問題になっているかクエッションがついていてわかりやすい。 目次 第1章 普遍的人権のルーツ(18世紀から20世紀半ばまで)ー普遍的原理の発展史 Q人権理念や制度はいつ生まれたものなのか? 第2章 国家の計算違い(1940年代から1980年代まで)ー内政干渉の原理の確立 Qなぜ国家は自らの権力を制約する人権システムの発展を許したのか? 第3章 国際人権の実効性(1990年代以降)ー理念と現実の距離 Q国際人権システムは世界中での人権の実践の向上にどの程度貢献したのか? 第4章 国際人権と日本の歩みー人権運動と人権外交 Q日本は国際人権とどのように関わり合ってきたのか? 私的感想 ○国際人権という普段あまり考えたことのない問題について、しっかり勉強させていただいた。 ○国際人権と国家という大きな枠組みだが、時代は18世紀以後、範囲は人権に関連することと限定されているので、内容はそれほど複雑ではない。文章は真面目でちょっと硬いが、読みにくいというほどではない。 ○冷戦後の国際人権は旧ユーゴスラビアとルワンダでは失敗したが、コソボや東ティモールでは一定の成果を上げた。9.11で大きな後退をしたが、国際人権システムの進化は進んでいる。国連人権条約には罰則がほぼなく、批准されただけですぐその国の人権実践を変えることは少ないが、人々の人権に対する考え方を変える力はある。そして、社会運動に影響し、長期的には人権の実践は漸進的に向上する。→そうですね。 ○最後に、たいへん身近な「人権力」の問題となってくる。これは個人にとっては普遍的人権概念を内在化することである。さまざまなレベルがありそうだが、同調圧力の強い日本で特に大事なのは、異議申し立ての主張に耳を傾け、その主張に同意しなくても、誰もが人権を主張する権利を守ることであるとされる。→わかりました。
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普遍性原理と内政干渉肯定原理
完全に門外漢ではあるのですが、書店で見かけたので購入してみました。とても満足しています。人権という、わかっているようでよくわからない概念を扱っているということで、読む前はどうかなと思っていましたが、岩波新書ということもあってか、この分野の素人にもわかりやすいように記述されていると感じました。 本書で印象に残った点を備忘録で記載すると、現代の国際人権とは①すべての人間に人権が保障されているという普遍性、②他国での見知らぬ人々への人権侵害に対して無視してはならないという内政干渉肯定、の2つの原理があるということです。 そして普遍的人権の背景には、見知らぬ他者に対する共感(empathy)能力があり、それは写真やテレビといったメディアの登場によって引き出されたのです。他国の市民の惨状について言葉で聞くだけでなく、写真や動画を見ることで、まさに相手の感情を一緒に体験できるようになったからです。しかし、2026年4月現在の我々は共感能力がマヒしつつある気もします。ウクライナ、イランなどあまりに多くの惨状を目にしているからです。心理学でいう「アラーム疲れ」(注:病院のER勤務のお医者さんが、ひっきりなしに鳴るアラームに対して鈍感になっていく現象)のようなことが、一般人の共感能力に起こっている可能性はないでしょうか。 2つ目の内政干渉肯定原理ですが、このような国家にとってマイナスな原理がなぜ広まっていったのかというパラドクスについても本書で解説しており、こちらも面白かったです(詳しくは本書をお読みください)。足元を見ると国際人権をないがしろにする行為が頻発していますが、本書にも書かれているように、過去においても国際人権はゆきつもどりつしていることから、まだ希望はあるのかなと思っています。 本書を読んで思ったのが、長い目で見たときに(例えば22世紀になったときに)、国際人権はどう進化しているのだろうということでしょうか。一つの方向性として、人の権利だけでなく動物や生き物全般の権利概念が浸透しているのかもしれません。あるいは未来世代の人類にまで人権の範囲が広がるといったSF的な展開もあるのかしら、と想像を膨らませました。
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国際人権制度に関する良質な入門書
国際人権制度の歴史、理念と実態の乖離、NGOの役割、日本に関する事例などを網羅した良質な入門書。1点、事実関係の誤認があり残念。体系的な人権弾圧を行っていた反共親米政権をレーガン政権が支援したダブルスタンダードの例として、エルサルバドルやインドネシアと並んでニカラグアが挙げられているが、カーターの人権外交の支援を受けて1979年7月に反ソモサ革命が成功した後、レーガン政権は左派サンディニスタ政権の打倒を目指して反革命勢力を国際法に違反しながらも支援していたことは周知のはず。
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「人権力」の時代
国際社会からの人権侵害の批判に対し、国家主権を盾に内政不干渉を声高に叫ぶやり方はもはや時代遅れになりつつある。人権は、今や軍事力や経済力にも匹敵する国際社会における中核的な影響力として、否定できない価値にまで高められた。 現代における人権は、他者への共感を軸として、今や自分の属する集団を越え全ての人間に保障されるものであり、たとえ他国の見知らぬ人々の被る人権侵害であっても、内政に干渉してでも救済すべき価値であるという考え方が広く受け入れられている。 第二次大戦で連合国が、既に市民社会で高まりつつあった自由と人権の擁護を大義に採用し、国民を動員してファシスト体制と戦ったことは、政府が自国民にもその大義の実現を約束し邁進していくことを図らずも意味し(「空虚な約束のパラドクス」)、国民もその実現を要求していくことになった。また二次大戦でナチスの蛮行を目にした人々にとって、人権侵害は平和に対する脅威であり、国際秩序を維持するためには普遍的に人権を保障していくことこそが必要であるとの意識が高まった。 そして普遍的な人権理念が国際社会で正当性を有する規範として広く認められるようになったことは、抑圧された人々の意識を変革し、不正義に対し立ち上がり状況を変えていく力を与えた。それはさらなる人権理念の広がりを生むことになる。 日本は意外にも人権問題に前向きに取り組む国で、安倍首相はリベラルな国際秩序を支える大立者であったという。日本国内で排外主義が広がる中、「空虚な約束のパラドクス」を超え、安倍首相の遺産をどのように自分たちのものにしていくか、我々の市民社会の実力が問われている。
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人権理念の発展の歴史と国際人権の現在を凝縮
人権理念の発展の歴史と国際人権の現在を論じる。 本書は全四章から構成されており、第1章「人権理念や制度はいつ生まれたものなのか?」、第2章「なぜ国家は自らの権力を制約する人権システムの発展を許したのか?」、第3章「国際人権システムは世界中での人権の実践の向上にどの程度貢献したのか?」、第4章「日本は国際人権とどのように関わり合ってきたのか?」と、各章は問いから始まる。この問いが各章の内容を端的に表しているが、概ね前の2章が人権理念の発展の歴史についてまとめ、後の2章が国際人権の現在を論じている。以上に加えて、比較的長めの分量を割いた「おわりに」で国際人権の今日的な課題を指摘している。 新書230ページほどと決して分量が多いわけではないが、その内容は濃密。著者自身の研究成果も含めて先行研究も的確に踏まえながら、必要な事項が凝縮して詰め込まれており、いずれの章も読みどころで満ちている。ただ、「人権力」が後半部分ではキーワードとなるが、このあたりに関する議論はもう少し分量を割いても良かったように思う。加えて、「おわりに」についても1章分の発展させうるもので、最後の最後まで、もっと詳しく読みたいと思わせる好著であった。
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国際人権法の歴史と制度の手頃な入門書。
国際人権法を国際政治、国際関係の観点から概説した入門書。歴史と制度の双方をわかりやすく解説しており、この問題を勉強する取り掛かりとしては手頃な本。それだけで新書として成功している。さらに問題意識を深めたい者は、参考文献を手がかりに勉強すればいい。 現代の(世俗的な)普遍的な価値、例えば平和や人権については、これまで憲法学説の時として過度に狭く内向的な言説に基づいて受け止められてきた感があり、このような本を読んでより広い平面、普遍的価値が語られるべきホームグラウンドで考察することが求められる。そのための良い導き手たる本だと思う。 最後に重箱の隅を突くような個人的感想を言えば、文中「プーティン」と表記するのはは、いかにも「英語かぶれ」でいただけない。ロシアの政治家を日本語でどう表現するかについて、英語の歪められた発音が入る余地はない。まるで、ルー●柴。本の品格が損なわれる。岩波の編集者は何も言わなかったのだろうか? (これを理由に☆一つ減)
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今考えるべきテーマ
著者の講演を聞いたことが切っ掛けだが、最も重要なテーマであり、読むのに若干手間取っているが、完読を目指している。
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