作品情報
遠い崖 アーネスト・サトウ日記抄は、題名が呼び込む世界を手がかりに、人や時代の輪郭を静かに浮かび上がらせる。
『遠い崖 アーネスト・サトウ日記抄』は、萩原 延壽による歴史ノンフィクション。英国外交官アーネスト・サトウの日記を軸に、幕末維新の政治と外交を長大な時間軸で追うシリーズ。 受賞作としての読みどころは、題材の珍しさだけでなく、人物や出来事を通じて時代の空気を伝える点にある。読者は、物語や論述の進行に沿って、背景にある社会や価値観の変化までたどることができる。
書籍情報
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 発売日
- 1998-10-01
- ページ数
- 277ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784022573131
- ISBN-10
- 4022573139
- 価格
- 2640 JPY
- カテゴリ
- 本/歴史・地理/日本史/一般/日本史一般
旅立ち
レビュー
-
幕末の日本が(外からの視点で)良くわかる。
司馬遼太郎、吉村昭など、幕末から明治を描いた作家の作品は多く、私もだいたいは読んでいるが、これは反対側、つまりイギリス人から見た記録である。生麦事件からはじまり、薩英戦争、明治維新、西南戦争へと、日本史上の大変革期におけるほとんどの出来事が現場からの視点で語られる。イギリス領事館に翻訳官(最初は見習い)として派遣されたアーネスト・サトウだから可能になったことで、しかも親友の医者ウィリアム・ウィリスについても記述が盛り込まれており、この時代の全体像を把握するには必須の、非常に有用なシリーズである。全巻を通して読むのは大変だが、報われることは確実である。
-
少々学術研究書の様な読み難さがありますが・・・・
「一外交官の見た明治維新」の著者として知られているアーネスト・サトウの日記をもとに、当人と当時の日本の状況を記述したものです。序章が少々長過ぎると感じますが、やはり幕末に医学者として知られているウイリアム・ウイリスに関しての資料、サトウが日本の妻に産ませた二人の男の子とのその後の交友が詳細に描かれており、著者の少々学者らしい(小説家ならカットするような)くどいと思われる記述も我慢した読めば、それなりに面白く読めます。 日本人名と感違いするサトウという苗字が「satow」であり大陸系の元東ドイツあたりから出たものであるという記述から第2章が始まり、通訳生として雇用され日本に赴任したからは、むしろ幕末の社会情勢と背景に、英国フランスにアメリカをまじえての外交交渉の記述に重点がおかれます。それにしても、日本の幕閣とその周辺の人物の交渉のしぶとさと、生麦事件と攘夷を中心としたやり取り、特に英国との交渉は裏面史を知るようで興味を喚起します。後に英国が薩摩と結びついた経過がなるほどと理解出来ました。第2巻以下、先は長いですが、読みづづけていくつもりです。 この巻は以前、函入りの単行本で読んだことがあります。活字もその大きさのようですが、あの函入りの版はどうなったのでしょうか?
-
英米仏蘭側から見ると,幕末・維新はこんなふうになるんですね。
アーネスト・サトウ日記を補完する様々な文献を駆使した好著。第1巻では生麦事件を契機に幕府側の対応,英米仏の対応などが詳細に描かれている。賠償金11万ポンド(44万ドル)をどうやって工面したのか,銀での支払いだったのかに興味が沸く。木内昇『万波を翔ける』と合わせて読むと面白い。 攘夷が不可能だということに幕府型は気づいていたのに,皇室を利用しようとする薩長を完全に悪者になっていて攘夷派との内乱に外国勢力の介入を避けようとした当時の幕府の対応が素晴らしい。本邦がC国のように植民地にならなかった理由がよく分かる第1巻だった。14巻全巻を読了できるのはいつになることか。
関連する文学賞
- 大佛次郎賞 第28回(2001年) ・受賞