日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
帰宅戦争 帰りたいんだけど戦争起こしてもいい? (ファンタジア文庫)

ファンタジア大賞

帰宅戦争 帰りたいんだけど戦争起こしてもいい? (ファンタジア文庫)

鬼火あられ

『帰宅戦争 帰りたいんだけど戦争起こしてもいい?』は、受賞時題名『佐藤太郎と帰宅戦争』を改題して刊行された学園コメディである。青春を謳歌する空気に反発する主人公が、帰宅をめぐる奇妙な戦いに巻き込まれる。

ライトノベル帰宅部学園青春コメディ

作品情報

ただ帰りたいだけの少年が、青春全開の学校で戦争を始める。

KADOKAWA公式ストアで文庫版の ISBN、発売日、ページ数を確認できる。受賞作の刊行版として記録した。

レビュー要約

  • 青春ものへのひねった視線と、帰宅を目的にする発想の軽さが評価されている。コメディの勢いを楽しめる一方、展開の誇張には好みが分かれる。

書籍情報

出版社
KADOKAWA/富士見書房
発売日
2016-01-20
ページ数
334ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784040708140
ISBN-10
4040708148
価格
22 JPY
カテゴリ
本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル

過去の事件から仲間を信じられなくなった佐藤太郎。しかし太郎が入学したのは、青春の謳歌が大正義とされる青春高校で――「一緒に帰宅を目指してみない?」と、そこへ現れたのは一人のアイドル・椎名凛花だった! ?

●鬼火あられ:「佐藤太郎と帰宅戦争」で第28回ファンタジア大賞<銀賞>を受賞し、デビュー

レビュー

  • 続けるのが厳しいコンセプト

    2巻まで読んでの感想です。 ごくオーソドックスな「学園部活コメディ」で、おおよそにおいてテンプレを外していません。 作品のバックボーン、主人公が「アンチ・青春」を掲げる理由も、意外性にはかけますが筋は通っています。 総じて、安心して読めるラノベらしいラノベと感じました。 主人公の青臭い、少年らしい主張も含め、あるいは「ジュヴナイル」に分類しても良いのかもしれません。 ただ、惜しいのはほぼこの一作でテーマを消費し尽くしており、継続性、発展性に乏しいこと。 事実、続く2巻においてもう一度「帰宅戦争」を行っていますが、残念ながら「焼き直し」の領域を出ていませんでした。 この一冊で読み切る、くらいのつもりで買うならオススメ、続きを期待して買うなら……個人の判断にお任せします、という感想です。

  • 「押し付けの幸福は要らない」というテーマ自体は悪くないけどキャラの描き方が薄っぺらく、リアリズムのレベルもガタガタ

    第28回ファンタジア大賞〈銀賞〉受賞作 物語は高校に入学したばかりの主人公の少年・佐藤太郎が教室で幼馴染の橘ひなぎくから周りにまるで興味の無い態度を窘められている場面から始まる ひなぎくの言う通り夜通しネトゲーで遊ぶぐらいしかやる気を出さない太郎は女子生徒の一人が妙に周りからチヤホヤされている事に気付くき、 ひなぎくからその少女がかつて声楽家として話題になった椎名凛花である事を教えられ、有名人がクラスメイトに居る事にすら気付かない事に呆れられる やがて始まったホームルームで担任から部活動の体験入部や勧誘活動が始まった事を知らされるが、太郎が入学した帝成高校は部活動が異常な程に 活発な事で知られ、部活動への参加が義務付けられていた。やる気の無い太郎は「青春バカになんかなれるか」と放課後職員室に赴き、部活に 参加する気の無い事を担任に伝えようとするが、その場に椎名凛花が現れ、同じ様に帰宅部を希望する事を担任に告げる。帰宅部を設立したいという 二人に部活は実績を残す事が求められると難色を示す担任教師だったが、その場に校長が現れ「この時期は帰宅すると言うだけで実績になる」と 条件を付けた上で部の前段階としての「帰宅同好会」を設立する事を認める。喜び勇んで帰宅の途に着いた太郎だが学校の敷地から外に向かおうとする 途上で凄まじい勧誘の嵐に巻き込まれ、気が付けば体操服に着替えた状態で星空を眺めていた。強引な体験入部をかいくぐる事が出来ず、ボロボロに なった太郎だったが朦朧とした意識で更衣室に行こうとするとどこからともなく美しい歌声が聞こえ、その声に誘われる様に「更衣室」と書かれたドアを 開けると、そこには下着姿の凛花が。何とか誤魔化そうとする太郎だったが教室ではお嬢様然としていた凛花にボコボコにされる羽目に。思わぬ形で 凛花が猫を被っている事を知った太郎だったが、凛花は自分が人間嫌いで声楽も止め、自由な放課後を満喫するつもりである事を明かされる 女子更衣室に入ってしまった太郎の秘密と凛花の猫かぶりを互いの秘密にした形で奇妙な協力関係が生まれるが、4月30日の部活本登録の期限までに 勧誘の嵐を潜り抜けて、校門から外に出る「帰宅同好会」の活動が部への昇格を目指して太郎と凛花の二人を軸に始められる事に… つい先日ダッシュエックス文庫で「お兄ちゃんは家に帰りたい。 ~そうだ、帰宅武をつくろう~」というコンセプトがほぼそのまま被る作品が刊行された様に 帰宅部ものというのはラノベにおけるある種のテンプレである事は明白かと。だからと言ってテンプレ=悪という訳ではなく、要はそこにどんな肉付けが なされるかで作家としての力量は測れると言える 本作の軸となっているのは「部活動=青春だ、部活に入って青春を謳歌する事こそ幸せだ」という押し付け臭い学校の方針に納得が行かず、ダラダラと 放課後を過ごす帰宅部設立の権利を手に入れる為に太郎たちの帰宅を防げば部費アップの条件に釣られて帰宅を妨害しようと追いかけてくる各部活の 追手を潜り抜けて期日までに校門からの脱出を目指す「帰宅戦争」。太郎と凛花の他に不幸体質のフランス人ロリッ娘・イリスや運動神経抜群で 運動部からの勧誘が止まない織田、そして太郎を更生させる為に帰宅同好会を内側から変えようとするひなぎくが加わって構内を走り回る姿がメイン 物語の方は連日連敗の悪戦苦闘でモチベーションが低下していく中、有名声楽家の父親に帰宅部設立の為に走り回っている事が知られてしまった凛花が リタイヤし、凛花の抱えていた事情を知った仲間が最終日に一大決戦を挑む、と言うのが主な流れなのだけど、父の望みに逆らえずせっかく手に入れた 普通の高校生活を失いかけた凛花の姿に自分が自堕落なネットゲーマーになる前に経験した挫折を重ねた太郎が「押し付けの幸福なんかまっぴらだ」と 青春バカを強制する学校と娘の幸福を勝手に押し付ける凛花の父親に挑む、というテーマ自体はそれほど悪くない ただ、それ以外の部分は正直粗が多い。帰宅同好会が流れを変える切っ掛けとなった監視室発見のエピソードや太郎が経験した中学時代の挫折といった しっかりと描きこまれるべき部分が説明文っぽい短い尺でサラリと流されて、尺の大半が他部活との追いかけっこに費やされているのでストーリー自体に 起伏が乏しい。キャラクターの方も主人公の太郎自体が過去のエピソードを軽く流されたせいでひどく薄いし、同好会に加わるイリスや織田といったサブキャラが 「何故そのキャラがそこまで帰宅に拘るのか?」という行動の動機みたいなものが明確に描かれないためやはり薄っぺらく感じられた もう一つ問題に感じたのがリアリズムの位相とでも言うべき部分。太郎や凛花の挫折や「他人からの幸福の押しつけに対する不満」という部分でリアリズム 寄りであるのに対し、物語の圧倒的大半を占める他部活からの追いかけっこ部分にリアリズムが欠片も無いのである。スキー部がスキー板を、スケート部が スケート靴を履いて追いかけてくる辺りはまだギャグとして理解するとして、茶道部がお茶をぶつけてきたり、弓道部が矢を放ってきたり、剣道部が本気で 竹刀を打ち込んできたり、太郎たちもそれに対抗して平然と相手の顔面を拳で殴ったりする辺りになると「これはどういうレベルにリアリズムの段階を 設定しているの?」と不安になってくるのだが、極めつけは「粉塵爆発」である。普通の高校生が学校内で「粉塵爆発」なんか起こしたら部活設立どころの 話じゃ済まなくなると思うのだが…場面ごとでのリアリズムの位相がグチャグチャ過ぎてちょっと付いていけない部分があった 明確なテーマを持った話を描こうとする姿勢自体は評価するけど、キャラの描き方、丁寧に描きこむべき場面への尺の振り分け方、リアリズムの位相の設定、 全てにおいて粗が多過ぎる。姿勢は買うけれども技術的な部分で未熟過ぎてこのままじゃ先が無いな、と言わざるを得ない一冊。少なくとも「銀賞」という レベルでは無い、せいぜい「佳作」どまりの作品なのでは?

  • あと一歩

    そこそこ勢いがあって、キャラのノリみたいな部分で押していく系の作品。 ただその勢いもあと一歩足りてない感があって、押し切れてはいない印象だった。惜しい。 もう少しぶっ飛んでよかったと思う。

関連する文学賞