作品情報
身体の違和感から、社会そのものの歪みが浮かび上がる。
『鼻』は、曽根圭介によるホラー短編集。表題作を含む短編集で、身体や差別、暴力をめぐる不条理な状況を鋭く描く。社会の暗部をブラックユーモアと恐怖で照らす作品。 受賞作としての焦点は、人物の感情や時代背景を通じて、読者に余韻のある問いを残す点にある。
レビュー要約
-
設定や語り口の独自性を評価する声がある一方、題材の重さや余白の多さをじっくり受け止める読者向けの作品と見られている。
書籍情報
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 2007-11-21
- ページ数
- 288ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.5 x 2.7 x 14.8 cm
- ISBN-13
- 9784043873012
- ISBN-10
- 4043873018
- 価格
- 704 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
外科医は、被差別者を救うために違法な手術をすることを決意する。暴力刑事は、少女の行方不明事件の捜査中に、かつて自分が通り魔として傷つけた男に出会う。2人の物語が交差する時、衝撃の結末が!
●曽根 圭介:今年度、日本ホラー大賞短篇賞、江戸川乱歩賞、W受賞の大型新人。1967年静岡県生まれ。1991年に大学を中退後、漫画喫茶店長などを経験する。2007年、「鼻」にて第14回日本ホラー大賞短篇賞を受賞。直後、「沈底魚」にて第53回江戸川乱歩賞を受賞。
レビュー
-
最高
後味が悪いのにしっかりと話がまとまっているためモヤモヤ感はなくスッキリとした読後感。ストーリが面白いので、ホラー小説なのについついハッピーエンドを期待してしまいそうになる。
-
楽しめました
収録されている三作品とも全て面白かったです。 とりわけ「暴落」は、読むと「あぁ…、うん」となる作品です。 ネタバレを避けるためにはもうこれ以上何も書けませんね。 うーん。 全作品とてもよかったので色々書きたいですけど、如何にもこうにもネタバレせずにうまく書けなさそうです。 結論は、全作品引き込まれるように読みました、ということです。 久々に満足な読後感です。
-
起伏がない
悪いことがズドンと発生して、緩やかに落ちていくだけの短編が何本か収録されている本。どんでん返しも1本あったが、何それ?みたいな内容で、あまり納得感がなかった。個人的にはあまり好きではない。
-
いまいちかな
ホラー、バッドエンドなお話、オチのあるお話は大好きなのですが、 3作ともあまりそそられませんでした。 怖さや残酷さもあまり伝わってこないし、 オチも弱くて、最後までたんたんと絵本で読み聞かせられてるような感じ。 短編だから仕方ないのかもしれないけど、 最後まで物語の中に入っていけませんでした。 フィクションである小説って、どれだけ読み手にリアルに思わせるかが名作と駄作の分かれ目だと思うんです。 これは私には駄目でしたね。 受賞作の鼻も、2つの話が1つに繋がっていく様を描くのはうまかったと思いますが、 こういうオチで片付けたらどうとでもまとまるのをいいことに、 説明がつかないまま放置されている部分が多く、 オチがわかったあともすっきりしませんでした。
-
人間の暗黒面を抉る快作
第14回(2007年)日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作「鼻」を含む3編を収録した本書は、まず、2つのことに驚かされました。 【第1の驚き】 著者は、この短編賞を受賞した同じ年に、「沈底魚」で第53回江戸川乱歩賞を受賞しており、私はそちらの作品を先に読んでいたのですが、読み比べてみると、「同じ著者とは思えない作風」に驚かされました。 乱歩賞作品は、きちんと「スパイ小説(エスピオナージュ)」となっているのに、こちらは、(受賞したのだから当然ですが)純然たる「ホラー小説」。 ただ、作風の深いところでは繋がりがあるようで、「沈底魚」のレビューで、「人間の暗黒面を抉る快作」と題したのですが、同じ表題を掲げさせていただきました。 【第2の驚き】 それは、「細部に至るまで練り込まれた伏線」です。 これは、ホラーでは必ずしも要求されず、ミステリの分野で必要とされるものと考えておりますが、なるほど、ミステリで受賞できる手腕があるのですから、この「伏線」を活かす技術は兼ね備えていたというわけなのですね。 また、収録された3作品とも、現代日本が舞台と思われますが、小説を読み進めていくと、現実とは異なる、その小説独特の「世界」が広がっていることが、徐々に明らかになっていくのですが、そこから、得たいの知れぬ恐怖が滲み出てくる点は、相当にレベルの高い作品群と呼べると思います。 そして、読み終えて改めて目次を見返し、その3作の題名を見ると−− 【暴落】は、正に「暴落」であり、 【受難】は、正に「受難」であり、 【鼻】は、正に「鼻」 という題名しか有り得ないことに気づかされました。 2007年は、「ホラー」と「ミステリ」の傑作が同一著者によって生み出された豊作の年であったのではないでしょうか。
-
なかなか面白かった
面白い 世にも奇妙な物語に出てきそうな内容だった 最後に収められている鼻は2回読みたい
-
うーん。。
世にも奇妙な物語、みたいな感じでした。最後の鼻も、なんだか途中でカラクリに気づいたので、何かうわぁ!とはならなかったかなぁ。
-
非常に上手
とても器用で、上手な作家。 文章はこなれていて無駄もなく、まとめ方の巧さは新人作家の域を越えている。 また引き出しも多そうで、今後もまったく違った切り口から、次々と物語を書いてきそうだ。 文体の切り替えも、必要に応じて自由自在。 読みながら、器用だな〜という感嘆を素直に抱かせる。 要するに、小説のテクニカルな部分に関しては、この人はすでに一流作家の域に達している。今後いち押しの作家さんであることは間違いない。 逆に言うと、この人は小説を書くことで一体何を伝えたいんだろうな…? という疑問がちょっと湧いた。要するに、器用すぎて、この人の小説テーマというものが今いち見えてこなかった。本作でいえば、3作の短編にバラエティがありすぎて、そのどれもが非常にシニカルにまとめられているので、曽根圭介の核というか、小説家としてのメッセージが見えてこなかった。 この点は今後次第というところか。 作品に関して言うと、やはり『鼻』が断トツ。 叙述ミステリというと道夫秀介の『向日葵の咲かない夏』を思い出すが、読みやすさと鮮やかさではこちらの方がはるかに上。 文章もきれいだし、メリハリもある。「ヒビノさん」や「死んだ前妻」が現実世界では何にあたるのか、守銭奴の老婆が主人公の脳内世界では何にあたるのか、といったあたりがやや未回収だが、そんな細部をすっとばすのも新人の才気の現れと思われ、不満はさほど感じなかった。 『暴落』と『受難』は、それと比べるとやや不満。完全な一発アイデアものであり、面白いけど後に残るものが何もない。さらにこの作品どこかで読んだような…という既視感がずっと頭から離れなくて、まいった。筒井康隆という指摘もあったが、個人的には星新一の名前がポーンと浮かんだ。この2作だけだったら、星新一の二番煎じでダメ、と書いていたと思う。
関連する文学賞
- 日本ホラー小説大賞 第14回(2007年) ・受賞