日本の文学賞

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竜殺しのブリュンヒルド (電撃文庫)

電撃小説大賞

竜殺しのブリュンヒルド (電撃文庫)

東崎惟子

書籍情報

出版社
KADOKAWA
発売日
2022-06-10
ページ数
280ページ
言語
日本語
サイズ
10.6 x 1.4 x 14.9 cm
ISBN-13
9784049142167
ISBN-10
4049142163
価格
704 JPY
カテゴリ
本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル

愛が、二人を引き裂いた。 竜殺しの英雄、シギベルト率いるノーヴェルラント帝国軍。伝説の島「エデン」の攻略に挑む彼らは、島を護る竜の返り討ちに遭い、幾度も殲滅された。 エデンの海岸に取り残され、偶然か必然か――生きのびたシギベルトの娘ブリュンヒルド。竜は幼い彼女を救い、娘のように育てた。一人と一匹は、愛し、愛された。 しかし十三年後、シギベルトの放つ大砲は遂に竜の命を奪い、英雄の娘ブリュンヒルドをも帝国に「奪還」した。 『神の国で再会したければ、他人を憎んではならないよ。』 復讐に燃えるブリュンヒルドの胸に去来するのは、正しさと赦しを望んだ竜の教え。従うべくは、愛した人の言葉か、滾り続ける愛そのものか――。 第28回電撃小説大賞《銀賞》受賞の本格ファンタジー、ここに開幕!

●東崎 惟子:『黄昏のブリュンヒルド』で第28回電撃小説大賞《銀賞》を受賞し、電撃文庫よりデビュー。

レビュー

  • それは誰もが見惚れる金色では無い。

    ハイファンタジー×復讐譚として非常によく纏まっていると感じました。文章の完成度もとても高い。抑制的かつ端正で読みやすく、第一章を読み終えたころにはページをめくる手が止まりませんでした。 何よりも物語が良いのです。 物語とは、「ネタ」や「要素」や誰が死ぬだの勝つだのといった「展開」では、断じてありません。そうであるなら私は実際に作品を手に取ることなくネタバレサイトで満足するでしょうし、同じ作品を見返すなどということをしたりはしないのです。 物語とは「誰が何をどうやったか」の「どうやったか」の部分なのです。それはネタや要素の『繋ぎ目』であり、展開の「運び方」です。 本作はそれがずば抜けて良いのです。 この時世にこんな小説が読めるとは思いませんでした。今後も本著者の活躍があることを祈っています。 ここからはちょっとネタバレを含む感想と批評です。 ブリュンヒルドが大好きです。最高に萌えたといってもいい。 本作ブリュンヒルドが抱える想いは、肉塊のような、下劣で卑しい情動です。それに伴う彼女の行いは擁護の仕様がないほどに「醜悪」だと断言できます。だからこそ、私はこのブリュンヒルドという強い女を心の底から愛おしく感じます。 折れず、鮮烈に、どこまでも駆け抜ける。曲がりかけても屈しかけても、想いを胸に何度でも立ち上がる姿は歴戦の英雄すら思わせるほどに猛々しい。 それは性愛であり執念であり独占欲と所有欲であり喰欲であり、紛れもなく人間が保有する欲望を、一点に突き詰めた「純愛」なのだと思います。他に介在する要素がない以上、それはある軸において紛れもなく純粋であるといえるのですから。 そんな彼女を本作はどこまでも客観的に書き続けます。それぞれの視点から、それぞれの思想と価値観を通じて描かれる。娘として、少女として、怪物として。それらはどれも間違いなく彼女が持つ本性であったのでしょう。 彼女はあくまでも人間であり、痛みがあり喜びがあり悲しみがあり、他者を思いやる優しさがあります。 しかし、それらすべてが「炎」の前では無価値どころか、価値のある燃料に成り果てる。自分の新たな門出も、安らかな幸福も、他人の命も人生も、「炎」の前では「薪」でしかありません。 つとめて言いましょう、彼女は醜悪な女であり、塵屑です。 だからこそこんなにも輝いている。 最後まで彼女は「君」への愛を貫いた。自分がどうなるのか、何をするのかを正確に認識したうえで、それでも叫び続ける。 諦めることも無く、手放すことも無く、抗い続けた。劣化も磨耗も許さず認めず、ならば尚のことと突き進んだ。 復讐は虚しいだけだ、などとはとんだ笑い話。その伽藍堂こそ彼女が望んだものなのですから。 どこまでも哀れな人間(かいぶつ)が、ブリュンヒルドという女なのだと、最後まで描かれているからこそこんなにも美しい。 このブリュンヒルドの美しさを喩える言葉は、肉塊が相応しいのでは無いかと思います。内蔵は、人に生理的嫌悪を抱かせると同時に、神秘的な美しさを時に想起させます。そうであるのなら、胎動する肉の塊こそ、彼女であると私は感じてなりません。

  • 愛する人を喪った少女の孤独な復讐譚

    竜に育てられ竜を愛した、竜殺しの血筋の少女の物語。 愛する亡き父の教えに従い全てを赦すのか、己が身に宿る獄炎のままに、愛する父を殺した最強の実父を殺すのか。 そんな少女を実の娘のように想い手を差し伸べる男。少女の真意を知りながら、友として道を正そうと寄り添う兄。 人を憎んだ少女が触れた優しさは、静かに愛に狂った彼女の心を溶かすのか。 数奇な運命を背負った少女の覚悟と愛を、新人とは到底思えない重厚な筆致で、それでいてライトノベルとして読みやすいように無駄を削ぎ落として描いています。 ダークファンタジーが好きな方には是非手に取っていただきたい珠玉の一冊でした。 電撃文庫公式twitterに、作品の雰囲気をよく掴んだ秀逸なPVも公開されています。気になる方はそちらも。 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」に影響されて作家を志した人の処女作。もしかするとこれは、ギルベルト少佐と死別した世界線での少女の愛の物語なのかもしれません。

  • フィクションにおける復讐の扱い方

    最善ではないけど綺麗事で適当に丸め込まれるものではないのが良かった。復讐は昔から扱いの難しいテーマだと思います。 惜しむらくは最後の戦いの描写がややあっさりしていたので、あまり深く感情が入り込めなかったこと。もっと彼女や彼の気持ちにのめり込んだり寄り添えるような描写、文章量が欲しかったです。

  • 心をズタボロにされたい方専用の竜殺しが生まれるまでの物語

    読後にあるのは胸糞悪い爽快感のみ。 味噌汁のうち9割が味噌で残り1割が泥水でそこに昆布の代わりにミント入れてみましたみたいなひどい味だけど不思議と美味しく感じてしまう謎の物体。 普通に読んでて楽しめるようなものじゃないです。 心をズタボロにされたいなら是非どうぞ。

  • 悲劇というには無惨であって、惨劇というには活きが良く、活劇というには喜ばしくもなかった、竜と乙女の物語。

    「東崎帷子」先生がはじまりに世に送り出された、処女作にして傑作です。 はじめに断っておくとラストの暗転の中には永遠があると思います。心が荒野を駆け巡りました。 ちなみに本作は全四巻で漫画化されており、そちらもとみに優れています。けれど本書は小説ならではの読み味が色濃く出る構成、文体をされています。なので大筋は同じでも感触はかなり異なるかもしれません。 ではまず、作品の大筋について触れる前に文体の感触から述べてみましょう。 全体の言葉運びとしては、単節な文の連続から成り立っておりソリッドな印象を受けました。 なのにそこからさらにシャープに削ぎ落としたようで際立った、危うい美しさもありました。併せて匂い立つ情念と無機質な剛健さが並び立つような文章が、胸に感銘を突き刺すトドメを担ってもくれました。 だから本書を喩えるとするならばそれはきっと、刀剣の美しさなのでしょう。 ところでこの物語を読むことを――、“観劇”と称するのが私にとっては適切なのかもしれません。 この際に、主人公「ブリュンヒルド」の名を、戦乙女としてあまりにも有名にしたある歌劇から連想が働いたとします。下敷きとなった史実や神話伝説、そちらからの本歌取りも当然なされているでしょう。 当然「シグルズ」や「ジークフリート」など、彼女を取り巻く固有名詞も劇中で用いられていましたね。 ただ、本作に関しては北欧・ドイツで醸成されたそのイメージに過度に寄りかかるのも禁物というもの。 漠然とこの物語は悲劇で終わるのだろうかと、不安と期待に心揺らしながら幕開けを待てばいい。 なにせ「神」と「竜」と、そして「ブリュンヒルド」。その三者だけで十全に幕は開かれるのですから。 と。そんなわけで物語自体はシンプルな復讐譚です。舞台立てはタイトル通りに凝ってますが。 そう、作品背景にはそれ単独で魅力的な舞台が用意されているのです。具体的には近代帝国主義国家が闊歩するほど文明が進歩しているのに、完璧なる神の被造物が住まう楽園「エデン」が生き残るという形で。 けれど小説ではあくまで主人公の動きに終始させた風でした。あえて帝国の解像度を落とした印象です。 ここは取捨選択が効いていて面白いところ。漫画版ではまた感触が変わってくるんですけれどね。 結果としてブリュンヒルドという白い乙女の。なおかつ彼女の抱える心の「黒い箱(ブラックボックス)」に話の焦点を絞りきった感覚を覚えます。この箱の中身は早々観測できないのですが、それは先の方で。 時に、欧州風世界を闊歩する鉄血に塗れた帝国のダイナミズムによって、神に愛されし気高き竜と楽園の住人たちが単なる資源として消費し尽くされる。 それは客観的にみて、あまりに救いようがない事実である。 はずです。 と、いうのも作品の舞台背景は復讐譚を燃え上がらせる熾火として確かに重要ですが、それ以上にブリュンヒルドは大きな課題を前にしているので相対的には重要度が落ちるのですね。先述した通りに、物語は愛する竜を殺された娘「ブリュンヒルド」の内面の動き、復讐譚として激動の時を迎えていきます。 一方で、“竜”は“娘”が復讐を果たすことをどうあっても望みません。 本当にやめてほしいと願っています。だって、そうでないと救われないから。 それでも、ブリュンヒルドは選ぶのですけれどね。彼女がいかなる過程を辿り、どのような結末に陥るについてはここで述べることはしませんので、どうか最後まで見届けてあげてください。 だって、「人と竜」、「復讐と赦し」、「父と娘」、「兄と妹」……などと、さまざまな対比の狭間でブリュンヒルドはもがくのですから。その生き様は人間性の表れとも、そうでないともいえました。 だから彼女は結局、人にすらなり切れずに孤独だったかもしれません、哀れだったかもしれません。 けれど、それでも彼女は強かったと「私」は言い切りたいのです。 ゆえに、冒頭で述べた文体についての評価に追補することで論を進めてみます。 この場合は必要なキャスト以外は書き割りに徹したような無慈悲な文面で劇は進行するのに、愛憎とかすかな笑みが確かにそこからにじみ出るようでした。矛盾するようでしたが、そうだったのです。 そうして物語は二項対立を越えて、絶対なるキーワード「嘘」を軸に二転三転していくことになります。 それと共に、始まりと終わりが結ばれて断絶に落ちていく構成が非常に美しかったといわせてください。 ブリュンヒルドが嘘を重ねていくことによって、自分の心が嘘に塗りつぶされ、自分でもわかりっこない混沌とした愛と憎しみ、執着の境地へと堕ちていくさまが本当に素晴らしく描かれていたのです。 このことこそが、私が本書を読むことを“観劇”と称したことの理由です。 あまりに洗練された嘘は観衆を魅了する演技にも通じ、真実は悲劇に似た物語によって上書きされる。 舞台に立たない大衆はブリュンヒルドの真の姿なんて知りもせず、わかりやすい偶像に飛びついてしまう。 そして、同じ舞台上に上がった者であろうとも、ブリュンヒルドに自分が見たい姿を投影してしまった。 結果、ブリュンヒルドという稀代の女優によって己自身すら騙し切る彼女の物語に巻き取られたあまたの男たちは、死と破滅、混沌と渦巻く感情の中に諸共に沈められてしまうのです。 すなわち、最も真に迫れたはずなのに、逆にクライマックスですべてを虚に塗りつぶされてしまった兄「シグルズ」の最後をはじめ、誰一人主要キャストが幸せになれていないのは実に圧巻でした。 加えて言えば、酷すぎたことによって、逆に読後感が爽やかにすら思えてしまったのは不思議でしたね。 この場合、「カタストロフ(破局)」はやるなら徹底的にやるのが正解なのでしょう。 以上。 感想に寄り過ぎたため、いささか抽象的で具体例に欠いたレビューとなりましたことをお許しください。 ちなみに本作より幕が上がる「竜殺しのブリュンヒルドシリーズ」の世界観においては、姿を見せないまでも存在を確実視されている超越的存在“神”がいるようです。 私が無神論者か否かについてはご想像にお任せしますが、少なくとも本作の中では“神”の実在を確信しました。それほどの、演出を魅せていただいたと称賛の声を送らせてください。 万雷の拍手ではきっと伝わらないので、胸に刻むことを代わりとして。 ……なぜ、確信したかと? 私は物語の最後にこんなビジョンを夢見ました。 この箱の中、どこぞと知れない劇場で。ブリュンヒルドが演ずるなんと形容すべきか悩む劇をただひとり観劇しているのが読者各々たる「私」です。そしていち早く観終えて、気配を察した「私」が振り返る。 すると、“いた”はずなのに影すら掴めないのが神、かくいうイメージを覚えてみたのが私でした。 いずれにせよ、カーテンコールの暗転の先に舞台挨拶はないようですけどね? さて、ブリュンヒルドが紡いだ嘘と嘘と嘘の先に物語があり、彼女の偽りのなかったはずの心は黒く塗りつぶされて、自分自身ですらわからない境地に墜ちていった。けれどその心は重みも備えた。 だから、心から心へ、人から竜へ、物語から読者へ確かに重みは伝わって愛おしかった。 だから他ならぬ私にとって、『竜殺しのブリュンヒルド』という物語は傑作なのです。 補足すると、本作自体は完膚なきまでに完結していますが「竜殺しのブリュンヒルドシリーズ」という枠組みではまだ続いています。あまり言葉を余らせると興をそぐので簡潔に言うと、そちらも素敵でした。

  • よくこんな作品を受賞させたな!

    酷い話です。内容が酷いというのではなく、残酷という意味です。 面白かったです。 以下ネタバレ: これはある少女が罪を犯して地獄に堕ちる話です。 よくこんな作品を受賞させたなと思います。 他のラノベ新人賞だったら絶対に受賞させないでしょう(萌え要素ナシ、ハッピーエンドナシ)。 自分は面白かったです。 もっとこういう作品を受賞させてほしいです。 救いもクソもほとんどないですね。

  • 悪くはないんだけど、多分心には残らないんだろうなと思った。

    ネタバレになってしますがラストであっさりと敵も主人公もアレしてしまうので、読後感はなんかあっさりとしているけれど感情を揺さぶるものがないのでスッキリしないんだろうなと。 登場するジークフリード家みんなの感情を最後の最後で書いていないから、ライトノベルで重視されるだろう「登場人物がその時どんなことを考えていたのか知りたい」的な部分で読む人を選びそう。 主人公に共感できずに他人事って感じがしたってことで評価が分かれそう。

  • 普通過ぎて物足りないけど良い

    世界観や語り口調、キャラクター達はとても魅力的なのですが、いま一つとびぬけなかった感じ。 イラストがとてもきれいだったので期待値が上がり過ぎていたのかも知れません。 普通に良い文学寄りのラノベと言う感じでした。

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