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樹の上の草魚

吉川英治文学新人賞

樹の上の草魚

薄井ゆうじ

『樹の上の草魚』は、薄井ゆうじによる作品で、吉川英治文学新人賞の受賞作です。講談社、1993.8の刊行情報が確認でき、作品の中心には登場人物の切実な経験や時代の空気が置かれています。

文学賞受賞作人物描写時代と記憶

作品情報

吉川英治文学新人賞で評価された、薄井ゆうじの作品です。

『樹の上の草魚』は、薄井ゆうじによる作品で、吉川英治文学新人賞の受賞作です。講談社、1993.8の刊行情報が確認でき、作品の中心には登場人物の切実な経験や時代の空気が置かれています。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
1993-08-01
ページ数
286ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784062065801
ISBN-10
4062065800
価格
199 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

吉川英治文学新人賞受賞作 本質的にSF作家だなあと思うのは、医学や科学の解説的な叙述が解説に終らず、どうしようもなくテーマに結びついていく構成力にあります。たとえばクロスバ交換機の説明も、あとでデジタル交換機との切り替えの夜、継電器のカチカチという音がいっせいに消える感動的な場面で生きてくる、といったようにです。ペニス、釣り竿、ジャムパン、ラジコン、スプリング、過剰なほどのさまざまなフラグメントにこだわる文章が次第に重層的になり、それらのことばが積み重なっていってラストに近づくほどシュール・リアリズムのような感覚の文章になっていく文学性が、こたえられません。──筒井康隆

1949年茨城県生まれ。1967年茨城県立土浦第一高等学校卒。1988年『残像少年』で第51回小説現代新人賞を受賞。 著書──『天使猫のいる部屋』『くじらの降る森』(いずれも徳間書店)がある。

レビュー

  • 読んでよかった

    肉体は男女に分けられてしまうけど、心はとても複雑で、簡単に分けられないものだと感じます。性器が無くなったら、自分は女なのかそれとも男なのか、自分の性が何であるかわかっているつもりでも、わからなくなって、揺れ動いてしまう。夢中で読んだ。

  • 男性でも女性でもない主人公を設定した名品

    本作は、昔、単行本を読んで気に入ったのですが、紛失してしまい、長く手に入らなかったので、このkindle化は貴重だと思います。個人的に、薄井氏の最高傑作だと思っています。 本作では、見た目は少年で自身も男性だと思っているが、実際は本人も気づいていないが両性具有で男性でも女性でもない、という主人公を設定し、自身について男女どちらかの性を選ばなくてはならないという苦悩が書かれます。そして、自身は男性でいたいのに、驚いたことに、性転換手術ではなく、自然に体が女性化してしまうすさまじい痛みと苦悩が書かれます。それは、性が転換したのではなく、自分のうちの男性が死んだのだと描写されます。 主人公は、美しい女性になり、戸籍の性別も名前も変えて、女性の衣装を着て、化粧もします。女性として生きなければならず、わざと、女性のする夜の仕事を選んだりして、女性になる訓練を自らに課します。 男性の時期から親しい年上の男友達が1人いますが、主人公は女性になってからも彼の前では自分を「おれ」と呼称します。しかし、男友達は主人公を男性としか見ることができず、女装としか見ることができず、男性時代の名前で呼び、お互いの苦悩が書かれます。当然、お互いの意識が激しくぶつかり合います。そして、女性になった主人公の意識の変化、男友達の意識の変化と、終盤で受容と救済が書かれています。苦しんでいる親友を救うのは、やはり親友なのだと、改めて気づかせてくれる名品です。 あと、本作の単行本(文庫より単行本のカバーの方が気品があります)には、確か筒井康隆氏の推薦文の帯がついていたと思います。本作の「人類の進化の過程で、男性を必要としない、あるいは男性を減少させようとしている」という描写は、ずっと後の筒井康隆氏の短編「不在」を想起させますし、失ったペニスを奪い返す描写も、同じ筒井氏の長編「聖痕」を想起させます。

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