日本の文学賞

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ミノタウロス

吉川英治文学新人賞

ミノタウロス

佐藤亜紀

ロシア革命期を思わせる混乱の中で、暴力と欲望に巻き込まれる青年たちを描く小説。神話的な題名の奥に、理性を失った時代の暗さが広がる。

革命暴力神話欲望

作品情報

ロシア革命期を思わせる混乱の中で、暴力と欲望に巻き込まれる青年たちを描く小説。

ロシア革命期を思わせる混乱の中で、暴力と欲望に巻き込まれる青年たちを描く小説。神話的な題名の奥に、理性を失った時代の暗さが広がる。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2007-05-11
ページ数
277ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784062140584
ISBN-10
4062140586
価格
1785 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

悪の中の最悪の悪が、生き残る! ロシア革命時期、無政府状態のウクライナ平原を駆け抜ける3人の若者たちがいた。時に機関銃つき馬車、時に飛行機を操って、当たるを幸い歯向かう敵をなぎ倒す!

レビュー

  • 問題なし

    問題なし

  • 訳本?と思わせる文体だが

    徹底的に神も仏も正義も悪も無い、ただ漠然と生きる事を前提に何もかも失った男が略奪、強姦、虐殺を重ねていく。 必ず二度繰り返して使用される動詞の語彙が広く、辞書片手に読む楽しみがある。他のレビューにもある通り、物語の舞台がロシア南部である必要性は無いのだが、文章が訳本の世界文学全集を思わせる感じなので著者の趣向か。 甘さを排したハードボイルドな世界を昭和的な筆致で描写した力作で、その密度の高さは凄いものがある。 吐き気をもよおす程の残虐非道の小説だが手に取って絶対に損は無い一冊ではないだろうか。

  • 気分が悪くなる、でも面白い

    第29回吉川英治文学新人賞受賞作。帝政ロシア崩壊直後が舞台のピカレスク小説。 帝政ロシア崩壊直後の混乱の中で、人間が単純な生と単純な快楽を貪り食う存在となってうごめく様を描いている。語り手である主人公はそれを美しいと語っている。確かにそれはまぎれもない「自然」で、この世界の見事な景色や動物たちの営みがもつ美しさと共通するものがある。弱肉強食、それはこの世界のシンプルな真理であり、余計なものを取り去ったシンプルなあり方こそ自然で美しい。 が、現代日本の「真っ当な」道徳観では、そんなものを見ても美しさに陶酔する前にどうしても吐き気を催してしまう(苦笑)。よって面白くて一気に読んだが胸が悪くなってしまった。 主人公含め登場人物全員が屑と悪人。作中で主人公がやたらと屑呼ばわりされているが、まあ屑なのだけれども特別腐っているわけでないような気がする。皆が皆殺しも強姦も略奪も平気でやるので。それでもそんな「のらくらども」にも主人公が屑呼ばわりされるのは「人の心が最初から備わっていない」のと「相手を選ばない」かららしいのだが、私にはよく理解できない。皆惨たらしく人を殺す屑だと思うのだが……。ごろつきにしかわからない線引きがあるのだろうか。 村が崩壊したのも兄が死んだのも主人公に原因がある。が、確かに主人公は女を孕ませたり強姦したりして女の兄や恋人をキレさせたが、この作品世界では何も特別なことではない。主人公の母親にしたって強姦されているわけで、そのおかげで主人公の本当の父親はわからないのだし。兄の死だってギャンブルで全財産擦った自業自得ともいえるし。 まあ、皆五十歩百歩のろくでなしだ。主人公が百歩の方だったとしても。 ただまあこの主人公(と他の悪人も)、本当に人の心がないとも断言できない。終盤の「トリスタンとイゾルデ」の映画上映のシーン、あそこで本人たちにとっても不思議なことだが皆静かに涙を流すのだ。「どうしようもない代物」と評していた映画なのに。 それからつるんでいたウルリヒの女を殺されて主人公も何か思ったようだし、ウルリヒが描く最新型の飛行機を見てこれを作ろうと考えたり。他にも時たま人の心が垣間見える。 余計なものを剥ぎ取って生そのものになった「悪人」の中にも、人として生まれた以上は人の心がこびりつくように残ってしまうものなのだろうか。人間のふりをして立たざるをえないのだろうか。

  • 快楽としてのピカレスク小説

    小説を読むことが快楽であるということを純粋に教えてくれる一作。 第一次世界大戦前後のウクライナの地主の息子であるヴァシリ・ペトローヴィチ・オトレーシコフはフランス語とドイツ語とロシア語を操る天才児でありながら、その本質は獣そのものである。「僕はけだものだったし、けだもの以上のものになろうとしたことは一度もない」という本人のセリフが、その単純極まる性質を見事に言い表している。 二十世紀初頭のウクライナを舞台とした綿密な取材と描写、そしてところどころに挟まれる切れ味溢れる一節は、読む度に読者に快い思いを味あわせてくれる。「学の無い奴は皆シェイクスピアが好きだ」「首を吊るロープに石鹸を塗ることを思いつくのに大学を出る必要はない」など。 ただ、個人的にはこの小説は根本の部分で少女漫画の構造を持っていると思う。ところどころで、『けだもの』であるところのヴァシリはロマンを解し、激情に身を委ねる。虚栄心に突き動かされる美女マリーナのために眠れぬ夜を過ごし、僚友ウルリヒのの復讐に共鳴し放擲の人生へと身を投じる。『けだもの』の一言では表わせきれない人間性の理不尽さを随所に併せ持つヴァシリは、どこかしらロマンを内に秘めた憎めない人間像を覗かせる。途中、サイレント映画の脚本作成に加わる場面においてはその人間の理不尽さは極地に達する。 . 彼のもう一人の保護者とも言えるシチェルパートフ、恋人のテチヤーナ、シェイクスピアを愛好する革命志向の小男グラバク、魅力的なキャラクター達が織り成す物語は一切を否定しながら突き進み、終着を迎える。女性作家の鋭い感性が描き出す批判的人間像を愉しみながら、何度と無く読み返したくなる小説である。

  • 暇だったら読めばいい

    よく書けているとは思うが、世間で言われているほど面白く無かった。 特に舞台をロシアにする必要性も感じられなかったし、正直なところピカレスクものとしても、まったく物足りない。 残念ながら、暫く経ったら、この本の内容など何も覚えていないだろう。

  • 前半の語りのすごさ

    物語は、社会や周囲の人間を軽蔑しきったヴァシリの視点から一人称でシニカルに語られていきます。 そして、当然ヴァシリは、自分の行動を正当化しようとします。 しかし、その一方で、作者は主人公のナイーブさを一人称の語りのなかにそっと忍びこませています。 たとえば、恋人テチヤーナに対する描写の箇所。 だからテチヤーナは、十八で、はちきれんばかりに健康で、(中略)信じられないくらい無邪気だった。抱きしめると一抱えもあって、裏返すと広い背中が馬の毛並みのように輝いて、肌は柔らかいというより針で突いたらはじけそうで、こんがり焦げた焼き菓子のような匂いがした。 ここなんていわゆる19世紀ヨーロッパの大衆小説の典型的な修辞で、恥ずかしくなるような紋切り型の連続です。かつて『皆殺しブックレビュー』で、作者がデビッド・ロッジの評論を紹介していましたが、底意地の悪さはまさにロッジ的です。 ある女性評論家が、この主人公と作者は似ていると言っていましたが、それは間違っているような気がします。 作者のほうが主人公より二枚も三枚も上手です(というより、物語と登場人物の操り具合がすさまじい)。 その後、ヴァシリのヘタレっぷりは、どんどん顕在化していきますが、前半部分の最後で、ついに信頼していたシチェルパートフという資本家に7ページに渡って罵倒されまくることで、彼のダメさ加減は、読者の前にすべてさらけだされます。 と、このように、シニカルでニヒリストであるはずのヴァシリのヘタレさが徐々に明らかになっていくというかなり難易度の高いベクトルが、前半部分の修辞と行間には巧妙に織り込まれています。しかも一人称視点であるにもかかわらず…。これだけとってみても「ミノタウロス」は傑作だと思います。

  • 小児科医杉原のお薦め

    残忍.気分が悪くなりました、というコメントもあると思いますが 戦争を直視する、という意味では良い教科書になりうると思っています. 天才マルクスがいくら立派な理想をとなえても、現場ではしょせんこんなもの. それは過去だからではなく、第二次世界大戦も日本のみならず、どこでもそうだったろうし いまだって、中国によるミャンマー、アフリカ諸国の紛争も同じでしょう. 願わくはここから私たちが、何を学ぶか.どんな世界を作りたいのかということにつながれば・・・ 殺人を法律で犯罪とする国は多いですが 戦争を犯罪と法で定めたところはありません.

  • 違和感あり過ぎ

    テーマが良く判らない。 ギリシャ神話の「ミノタウロス」はある意味悲劇の王子だが、 この小説の主人公は全くのチンピラでしょう。 ロシア革命を背景に持ってきているが、 価値観がひっくり返る時代であればよくある話で、 平和な時代でこそ異常性が発揮されるはずです。 頭が良いのに時代に翻弄されて悪事に走るのは理解できても、 頭が悪くて、度胸もないではね。 そんな主人公だから、ラストは違和感がある。 特に、要領だけが取り柄のフェディコの最期はね。 もう少しページを圧縮していればスピード感があったかも知れない。 どなたかも書かれていましたが、 好評論が余りにも多いので私も書き込みしました。 購入する前に、必ず店頭で目を通してから買いなはれ!

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