作品情報
『宿屋めぐり』は、野間文芸賞で評価された町田康の作品です。
『宿屋めぐり』は町田康による野間文芸賞の受賞作。講談社から2008年に刊行された作品で、受賞時に示された題材と語り口を通じて、人物の選択や時代の空気を描く。 受賞作としての位置づけに加え、題名から立ち上がる印象と作者の関心が読みどころになる。
レビュー要約
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刊行情報や紹介文からは、受賞時に評価された題材の明確さと読み進めやすい構成がうかがえる。人物や状況の輪郭を追いやすい点が読みどころになっている。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2008-08-07
- ページ数
- 602ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062148610
- ISBN-10
- 4062148617
- 価格
- 2950 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
執筆7年。新たな傑作長編小説の誕生! 主はいつも言っていた。 「滅びにいたる道は広く、光にいたる道は狭い。おまえらはいつも広い道ばかり行こうとするが、それは天辺から誤りだよ」 主の命により大権現へ大刀を奉納すべく旅をする鋤名彦名は、謎のくにゅくにゅの皮に呑まれ、「偽」の世界にはまりこむ。嘘と偽善に憤り真実を求めながら、いつしか自ら嘘にまみれてゆく彦名の壮絶な道中。その苦行の果てに待ち受けるものは。 俺は俺の足で歩いていくのだ。俺の2本の足で正しい道を。 第61回野間文芸賞受賞
レビュー
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カラマーゾフの独りっ子
魂の救済! 否、畢竟知らんと放擲されるのだけれども。 死により生が香る、それは感動です。
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もっと、もっとと、ぱまりこむ。
町田パンク精神ワールドにすっかりぱまりこんだ、普通の人であるわたくし。告白の描く未知の精神世界を文章化した町田氏の筆力には感動した。今作にはさらに冷静な筆者の筆による勝手気ままに流動する主人公の「主義」の移ろいを「ありえない世界描写」「奇天烈な時代と場所」で想像するにも、困難な場面展開がぐるぐ〜ると回転し、パンクのリズムで進行する。 告白でこの麻薬にすっかり慣れたはずのわたしにもあちこちで頭が痙攣した。そしてだんだんこの麻薬文章にもぱまりごんでしまった。今頃気づいたが、町田ワールドでは漢字の的確な当て込みがキラキラ光るように世界構築に活かされている。例えば 王裂=おおさかなどのように。古典文学に通じていなければ読めないような正統派の言葉遣いもそうだ。単なるパンク野郎、いや一般人には読めない作品となっている。これらは辞書も引けないしね。そうなるとどうなるか分からずにとにかく読み進むことになる。誤解したまま読む進むことになる。いいのか?それで!? それで、いいのだ!バカボンのパパの金言通りに訳わからなくても、精神は通じるのだ。英語が分からなくても映画が観れるのだ。なんで?そんなこたぁ、人の心、精神ってもんがそんなもんだから。 さて、宿屋めぐりを映画化するつわものはいないか?!だれかいないか?!アニメならどうだ?!いけるんじゃないか!? いや表紙のような日本人形による人形劇が良いのではないだろうか。あの気味の悪い眼、おっと深い思いのありそうな眼とたたずまい。イケそうな気がする。 ★ひとつ減らしたのは、告白での筆に緩みが全くない完璧なワールドが、今回は後半から終結に向けてやや「ためらい」というか、詰めに「普通さ」や「まとめ!」がみられたこと。町田麻薬も限界なのか?もっと、もおおっとですよ。最後まで。
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俺には俺の人生があるのだ。それはけっこう駄目な人生だが。
一気に思いつくまま書き上げるような短編小説も良いですが、本書や「告白」のようなじっくり腰をすえて書き上げた長編小説には、短編小説にはない腹にずしりとくるような読後感があり、本を読んだ後の幸福感は長編小説の方が後を引きます。 分厚い本書を手に持ったときに感じる重量感が、読み進めていくにつれ、心に侵入するくにゅくにゅした重みへと変わっていく感触があり、なんとも愉しいです。 本書の主人公は、町田康の他の作品同様、あらゆる災難・濡れ衣を着せられる巻き込まれ型タイプです。 しかし、本書の主人公は、苦難を避けイージーな方向へ進みたいのに災難に巻き込まれるうち、ポジティブな考えを持つようになります。 たとえば 「もう一度生きようと思った。あの時のガッツを思い出せよ、俺。」 「考えてみればこの世界に落ちて以来、俺はどこか欺瞞的だった。どうせ贋の世界だ、と思って退嬰的な言動をとっていた。人間はそんなことではだめだ。いずれいま生きているところが真実・真正の世界だと思って行動しなければ人生そのものが嘘になる。いく先には様々な困難が待ち受けていることだろう。でもそれを恐れて欺瞞的に生きるより困難にたち向かって生を実感していた方がよい。いやあ目が覚めた」 などと言ったりしてやる気を爆発させるのですが、調子が良くなり贅沢な暮らしをし始めると自分の行動を正当化する考えを持つ。 「俺は自分のためだけを考えて行動しているのではなく、他人のために生きる。義のために生きる。ということも少しはやっているのであって、主はそこのところを評価してくれるはずと思うのだ。俺はこの嘘と本当が二重写しになったような世界で、あの世のホンマとウソを我と我が身で抱え込んでこの世のホンマとウソをひっくり返しているのだ。」 理想と現実のハザマで苦悶するまさにリアルな人間の生き様です。 さて人間はいったいどのように生きればいいのでしょうか。 本書におけるその答えは、「知らん。自分で考えろ」
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何度も読むと私は★が増えていく気がする
発売日に本屋に走りました(半年前でスンマセン)けど、ちょっと途中で飽きてしまいながら読みました。毎回町田さんの本は面白すぎて一日で読んでしまう(むしろとめられない)んですけど、二週間くらいかかったかな。流石にこの分厚さは長い。しかも執筆活動が長かった分、あれれ?忘れててつじつま後であわせたでしょってところがあったりして残念です。七年もかけないでぶわーっと書いたもののほうが私は好きです。 告白やパンク侍は笑いどころのオンパレードでしたが、これはそうでもないです。爆笑したのは2.3回。 それでもなお読む価値はあると思います。正直私には難しすぎて作者の意図するところの10分の一も伝わってないんだと思いますが、主人公の行動は一見「そんな奴いね〜よ!」ってほど最低ですが、自らを省みて頭のいたくなるところが多々あります。 結局宿っていうのは魂が入る先のことで、外見や周囲の者によって「俺」になったり「僕」になったり「アタシ」になったりしていく人間の曖昧さが書かれていました。この宿じゃなかったら違う人格になって、その自分を守るために言い訳したりしてズルく生きてるのが人間。自分なんて正しくないんだぞ、自我とか抜かしてんなボケ!ってこと?結局町田さんですね〜。もう一回読もっ、でも長いからなかなか手をつけられないです。
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誰も救われない
町田康さんの「告白」は分厚い長編だったけど、この宿屋めぐりはさらに上を行く600ページ超の大ボリューム。 僕は最初これを読み始めた時、途中で挫折してしまって、再びページを開いたのは、しばらく経ってからだった。 文体はいつもの町田節。くにゅくにゅの皮の世界へばまりこんだ主人公鋤名彦名の旅の物語。 初めは、社会の不条理を説いた、町田さん得意テーマの小説なのかと思い読んでいた。 ところが物語が終盤に近づくにつれ、どうもおかしい。 不条理を訴えている側の鋤名彦名がどんどん窮地に追いやられていく。 そして、ラストシーンでの主との会話。 不条理と戦っていたはずの鋤名彦名は、己こそが滅びに至る広い道を歩いていたことを諭される。 この主がどことなくキリストを彷彿とさせるのだけど、それだけではなく、仏教の輪廻思想や解脱と受け取れるような内容もあり、これはもしかしたら、町田さんの宗教観や死生観をテーマにした小説なのかもしれないと、読み終えてから思い直した。 この物語の中では結局誰も救われない。皆が皆、原罪を抱え、それぞれの破滅の形へと向かって行く。 壮絶な小説だ。町田さんにしか書けない圧倒的な作品だと思う。
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殺風景
「現在位置の自覚をせんと結果は容易に予想できる。」 ナンバーガールの歌からの引用です。 読みながら僕と主人公がどこにおるのか容易に見失います。 リズムでしかない。 そして救いようがない。 ただひたすら「どうにかしよ」でなく「どうにかなる」。 その先が気になるので着いていく。 分厚い本ですけど、乗ってしまえば無茶苦茶読みやすいです。 この調子でどんどんください。
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娯楽として読める
町田康の文章はでたらめに書いてあるようで、要点はしっかりと把握している。でたらめに書いてあるようなところも、むしろ一種のギャグとなっている。 日本らしいところが舞台なのだろうという設定以外は、時代も状況も設定がムチャクチャになっているのだが、それがある種現代日本の心情を反映していて、そこが前衛的な面白さがあるのだろうとか思われる。 この本も、よんでいると、これはどういう小説なのだというような表現が出てきて、荒唐無稽ではあるのだが、読み取られる意匠は確固としてある。読んでいて笑えるところがいっぱいある。分厚い本だが、読み甲斐はたしかにあった。
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…迷っている?
町田作品はどれも面白く何度も読み返しているが、これは1度で十分。いや、1度でタクサン。いやいや、途中で「もうケッコウ」と何度もつぶやき、投げ出しそうになった1冊。 エラそうなことを書いて申し訳ないのだが、なんだか完成作ではないような作品、だと思った(完成度が低い、という意味ではないが…)。書きながら作者が迷っているというか、面白がっていないというか…。だからなのか、作品がスカッと提示されきっていないというか…。他の作品はいつもスカッとキレているので(切れ味が心地良いので)、町田ファン私としては戸惑った。今までの本と一見似ているが、まったく違う1冊。もしかして『宿屋めぐり』は新しいスタイルへの試み?実験作?な〜んて妄想してもいる。 本の造りは素晴しい!町田康の本にぴったりな世界感。このまんまでオブジェである。
関連する文学賞
- 野間文芸賞 第61回(2008年) ・受賞