作品情報
第10回小説現代長編新人賞受賞作。応募時タイトル「ヒモの穴」を加筆修正し、『踊り子と将棋指し』として刊行された。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2016-01-07
- ページ数
- 218ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062198790
- ISBN-10
- 4062198797
- 価格
- 110 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
ある朝、横須賀のペリー公園で寝ていたところを小犬に起こされた男は、呑み過ぎたせいか、自分の名前すら思い出せない。すぐに犬の飼い主の聖良という女性が現れ、男は「三ちゃん」と呼ばれる。前の晩にいっしょに呑んでいたようだ。三ちゃんがどうやらアルコール依存症らしいとわかり、聖良は同情してマンションの自分の部屋に住まわせてくれるという。依存症の男はインポで安全だからと。聖良の本名は依子といって、現役のストリッパー。「そろそろ干支が回る」とか。二人と一匹のおかしな共同生活がはじまり、三ちゃんは横須賀で主夫を務める。しばらくして、依子に大阪・天満劇場での仕事が入る。三ちゃんも同行することになり、ヒモではまずいので、マネージャー・小田三郎と名乗ることにする。ストリップの踊り子と、「依存症でインポの役立たず」の三ちゃんが、小犬を連れて大阪の旅巡業へ。天満で無難にマネージャー役をこなしていた三ちゃんだったが、劇場の楽屋で暇つぶしに指した将棋が元で、100万単位の金が動く真剣勝負に巻き込まれてしまう。勝負の思わぬ結果に、三ちゃんの正体が見え隠れする。この男はいったい何者なのだ!
レビュー
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中年版「教養小説」
アルコール依存症になり、 記憶まで喪失した、「A級八段」の棋士が、 踊り子(ストリッパー)に拾われ マネジャーとして巡業に同伴するうち、 彼女や他の関係者との交流の中で 将棋の技も思い出し ついには、病気の克服と将棋界への復帰を誓う、という 中年再起冒険物語。 踊り子と将棋指しという 特異な職業ですが、 著者の該博な知識に裏付けられた 細かい描写と 人間に対する温かい眼差しによって 情景がすんなりと入ってきます。 笑って泣いて あっという間に楽しく読めて ついでに、自分の キャリアと人間関係についても深く考えるきっかけを 得ることができると思います。
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楽しく読めました
テンポよく読ませる文章で面白かったです。特に前半は快調。 個人的に将棋界に興味があるので、後半主人公の正体が明らかになるにつれ、ちょっと設定に無理があるかな~という気も。 主人公の名前は阪田三吉へのオマージュでしょうけれど、苗字は何かな。実質関西が舞台なので、やはり織田作之助なのかな。
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ストリパートと棋士の組み合わせがいい
アル中で記憶をなくした三ちゃんは、踊り子の聖良に拾われる。彼女のおかげでアル中を何とか直そうとする。 横須賀、大阪のストリップ小屋をついて回るうちに記憶は戻るがアル中は治らない。彼女の愛に包まれてプロ棋士復帰を目指す。
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ヨシキタ
先輩の息子さんの作品なのですが私にはちょっとストーリーが合わなかった
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いい雰囲気
将棋、プロ棋士に対する深いリスペクトと愛情を感じる。 記憶を失うほど重度の依存症の棋士と、コケティッシュで妙な魅力を持つストリッパーが、一匹の犬を含めた一風変わった共同生活をはじめ、地方巡業、つまりはストリップ小屋のドサ回りをするというなんともおもしろおかしなストーリー。 作者の実体験であろう依存症の怖さや、コンビニのビールの棚の前での葛藤の描写や、発泡酒を2本買って帰るさまなど、迫真に迫るものが有る。 さらには大阪の下町、歓楽街、風俗街の雑多な描写やテンポの良いな会話、人情あふれるストーリーにもとても心動かされた。 非常に良い本だった。良書。 △9四歩ってそりゃ阪田三吉の孫弟子だろうなぁ。
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初期設定に無理がある
主人公がストリッパーの家に転がり込むという初期設定に無理がある。 わたしは過去、いろいろ踊り子にアプローチしたことがあるが、そんなに簡単にヒモなどにしてもらえるわけじゃない。ヒモになるという設定を通すならば、主人公がすごい貴公子的容貌を持っているなどの仕掛けがいると思うが、主人公がどんな顔をしているのか、結果的に、ほとんど触れられずじまい。単行本の著者の写真をみると、こんな顔では絶対、ヒモは無理、と思った次第。 あと、人物描写と風景描写が薄いなあと感じた。織田作をリスペクトしているのならば、もっと情景描写を書き込まないとダメなような気がした。 「ヒモの穴」という原題よりは、「踊り子と将棋指し」のタイトルの方がいいとは思った。
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昭和エレジー的だが、応援歌でもある。
著者自身の体験からか、アルコール依存症の人の心理と状態がリアルだ。不治の病なのだそうだ。 物語は、依存症で記憶を失ったA級八段の将棋指しが、徐々に自分を取り戻していく様子を、ストリーパーとの出会い、旅を通じて描いている。昭和のピンク映画には、こんなストーリーのものが多かったように思う。 特に、旅先の大阪の町や飲み屋の描写がいい。飲みたくなる。食べたくなる。天満のお母さんの屋台……旨いだろうなぁ。 主人公の再生だけではなく、登場人物全員が、なんらかの挫折からの再生を目指しているのがいい。全員が燻りながらも、未来を信じているのがいい。 将棋なんてぜんぜん知らなくても、対局の臨場感、凄みも感じることが出来るのは、著者の腕が確かな証拠だろう。
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ありそうな話
関西人にとって、横浜・大阪(十三)・白浜と舞台が移って行く様は、実に心地良い。登場人物も、ほぼ善人でありほっとする。アルコール依存症は現実感があるし、それを治すには医療は必要だが、何より「人の心の温かさ」が欠かせないことを痛感した。紀州紀南・白浜は、「熊野地方のよみがえりの地」であるが故の結末に、拍手喝さいである。友人・知人に紹介したのは言うまでもない。
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- 小説現代長編新人賞 第10回(2015年) ・受賞