作品情報
都市の中で押し込められた怒りと、身体感覚のぎこちなさを抱えた若者の行き詰まりを描く。
若者の怒りと身体感覚のずれを通して、現代社会の圧迫感を描く長編としてまとめた。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2022-01-26
- ページ数
- 170ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.5 x 1.6 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784065273654
- ISBN-10
- 406527365X
- 価格
- 1100 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
第166回芥川賞受賞作。 ずっと遠くに行きたかった。 今も行きたいと思っている。 自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。 自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。 昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より) 気鋭の実力派作家、新境地の傑作。
1990年、大阪府生まれ。神奈川大学卒業。元自衛官。現在、地方公務員。2016年、「市街戦」で第121回文學界新人賞を受賞。他の著書に『戦場のレビヤタン』『臆病な都市』『小隊』がある。
レビュー
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メッセンジャー
「ずっと遠くに行きたかった」――その叫びを、ペダルに込めて。 コロナ禍の東京を、自転車で、怒りで、駆け抜ける。 閉塞感の中で足掻くすべての人に突き刺さる、剥き出しの「今」。 配達する。ただひたすらに、自分自身から逃げ切るために。 都会の影を自転車で縫うように走るメッセンジャー。 スマートな「ギグワーク」の裏側にある、泥臭いまでの生の実感。
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そんなに悪くないよ
序盤は、生活環境や自転車の描写が稚拙だな、と感じたかな。でも、社会に上手く収まらない主人公を描く手法だろうし、社会と適度に交われない主人公のもどかしさに共感できた中盤からはスラスラ読めました。 たぶん、何事にも上手く適合でき、世の中に対し窮屈さを感じない人には、分からない苦行の世界かな。 自分もキレる心を持ち合わせてるので、若い頃は抑えるのが大変だったなーとか、今まで大事にならないでよかったなー、なんて過去を鑑みながら、主人公に感情移入できました。。 そして、このタイプの人間の生き方や苦労を、少し考えさせられましたね〜。
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それぞれの人生がブラックボックス
前半と後半の変わり様に戸惑った。前半部分で、後半の背景となるようなサクマの性格が読み取れていれば、面白かったかもしれない。 一方で、バイク便の描写は、なかなか興味深かった。世の中に必要な役割なのであれば、そこで働く人が報われるような社会にしないといけない。 結局、ブラックボックスとは、何がブラックボックスだったのか。人の人生、考え方か…。
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自転車で宅配をする人の心情を描いた本
自転車で宅配をする主人公が非正規雇用の下で、将来への展望が持てずに、どこにもぶつけようがない不安を抱えている姿に現実味が感じられてよかった。一時的なアルバイトならいいが、長く続けたくない仕事だろうから、どうやって他の仕事に移るか考える人が多いと思う。
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コロナ禍が浮き彫りにしたもの
帯の文章(ずっと遠くに行きたかった〜)が気になり購入。 ロードバイク用語が理解できない等否定的なレビューも散見されたが 理解出来ずともこの作品の根幹を理解する事に何の問題もない。 個人的にこの作品はコロナが浮き彫りにしたものに焦点を当てていると感じた。 端的に言えば本来動物であるはずの人間とその人間が営んでいる社会の不合理さについて。 象徴的な一文がある。 「サクマには、目の前の一つ一つは明確であるにもかかわらず、自分で選び取ったジョブを積み重ねるとゴールではなく破綻が待ち構えているのが不思議でならなかった。-------この疑問が解消されることは、どうもなさそうな気がしている」 作中には変わらない日々を指して「ループ」という単語が頻繁に出てくる。 未来など考えず狩猟生活していた頃と違い、 我々は職業を選択して日々ループしながら生きているが、 この先にあるものが何かわからず多くの人間が不安を抱いていると思う。 主人公サクマは衝動的な人間で、暴力行為を働いて職場を転々としている。 ここだけだと感情移入出来そうにもないが、ただ「ループ」を抜け出したいとも考えている。 主人公に自分を重ねる人は意外と多いのではないか。 読んでみて欲しい。
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解せなかった
前半の自転車便の描写は面白かったと思う。 いまひとつ解せないのは、主人公の人物造形と、それが招来する後半の展開。 こういう結末にした作者の意図がよくわからず、無理をしてでも意味を読み取るとしたら「貧しいから怒るのではなく、怒るから貧しくなるのだ」と言っているようにしか聞こえなかった。 ただ、作者自身はNHKのインタビューで「怒りは悪いものとして扱われていることが腑に落ちなかった(要約)」と語っているらしい。 しかし、だとするとラストはああはならないと思うのだが・・・という具合で、解せぬものが残ってしまった読後感だった。
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つまらなかった
いまはTVドラマを全く見ることがないが、以前はドラマの第一話は登場人物の紹介や説明ばかりでつまらないままに終わるのが多かった。 本作品ではその「紹介や説明」で作品の半分にあたる90ページを費やしている、非常につまらない。自転車に関する詳しいことが多々書かれているが、それは主人公の性格とはまったく関係のないものだし、後半では全く必要のないことだし、もっと別の角度から書いた方が良かったのではないだろうか。 また、設定では主人公は三鷹市の南部に住んでいるというのだが、駅で言うと京王線のつつじが丘あたりではないだろうか。勤務先は東新宿のようだから、通勤だけで往復30km自転車を漕いで、日中は丸一日都内を走破していることには違和感を感じる。 また、「新宿駅から坂を下って遠くにパークタワーが見える」とあるが、新宿駅から坂を下ってすぐの「西新宿一丁目交差点」から「パークタワー」までは僅か1kmしかない。「近いか遠いか」は人によるだろうが、片道15kmの自転車通勤をものともしない主人公がわずか1km先のパークタワーを「遠く」に感じるのはあまりも不自然だろう。 筆者は都内の地理に精通してない、あるいは新宿周辺に行く頻度が極めて低いのではないか。 それと「語彙」、言葉選びにも自由度というか豊かさがない。 筆者は「認める」を繰り返し使うのだが、「目に止まる」「見てとれる」「目で確かめた」などいくらでも表現のしようがあるのに「認める」を怒涛のように繰り返すのは語彙拙劣と感じだ。 主人公は低学歴で短慮で、物事を整理して考えることができず、読書も好まず、ゲームが好きという設定だが、その主人公が咄嗟に「火星の砂ぼこり」とか「〇〇のオーロラ」だとか想起するだろうか、これも無理があるのではないかと思った。 読み終わってみると、何かを意図したメッセージを発信したかったのだろうということは理解できたが、文学的な感動は無かった。
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説明過多。
まず業務内容に関する説明が過多で、肝心な人間の描写が薄い。ある程度専門性のある仕事かもしれないが、それでもここまで説明臭くなってしまうと、ちょっとキツい。こういうのは小説ではなく、ノンフィクションのドキュメンタリーのほうが似合う。小説以外で代替不可能なものを探求するのが文学の役割の一つだと私は思う。