日本の文学賞

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ワルイコいねが

産経児童出版文化賞

ワルイコいねが

安東みきえ

山梨で暮らす小学6年生の美海は、思ったことを口にせず周囲に合わせてきた。秋田から転校してきたアキトは率直すぎる言動で周囲から距離を置かれるが、美海は書道教室を通じて彼女と親しくなる。アキトがお寺や葬儀に強い関心を示す理由に触れ、美海は友情のなかで自分の気持ちと向き合っていく。

友情自己表現生と死小学校児童文学

作品情報

率直すぎる転校生との出会いが、美海の心のあり方を少しずつ変えていく児童文学。

安東みきえによる児童向け長編。自分の考えを言うことをためらう美海と、周囲の反応を気にせず率直にふるまうアキトの関係を軸に、他者を理解しようとすることと、自分の声を持つことを描く。2025年に第72回産経児童出版文化賞JR賞を受賞した。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2024-11-28
ページ数
192ページ
言語
日本語
サイズ
13.5 x 1.6 x 19.5 cm
ISBN-13
9784065360200
ISBN-10
406536020X
価格
1650 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

パーカーのフードをかぶり、電柱のうしろにかくれるようにして、お寺をじっとみつけている。 あの転校生の津田アキトだ。 道をへだてたこちらまでは見えていないらしい。もっとも見えていたとしても、あたしの顔なんかおぼえているはずもないけれど。 しんせきの集まりで来たのだろうか。いや、それならば同じように黒い服を着るだろうし、かくれてながめる必要はない。 めずらしいのか? おそうしきや法事といった風習が、前に住んでいた町とはちがっていいて、何かよほどきょうみをひかれるところでもあるのだろうか。 不審者のように目深にフードをかぶったすがたと、電柱にかくれているつもりでかくれきれていないあやしさがかえって目立ち、ちらちらとふり返る人たちがいるのにも気づいていないようすだ。周囲にはまるで注意をはらっていない真剣さがふしぎだった。 (本文より) 「うっかり自分の考えを言わないのがせいかいなのだ」と思いつつ、そんな自分を少しみみっちいとも感じている美海は、正直になんでも言いすぎて「性格が悪い」と言われている転校生のアキトと仲良くなる。 アキトは別に悪い子ではなく、少し変わっているだけだと思っていた美海だが、 やがてアキトがお寺だのおそうしきだの、不吉な場所にばかり興味を持つ様子を見てしまい胸がざわざわしてくる。 『ふゆのひだまり』で第11回小さな童話大賞、『いただきます』で同選者賞今江祥智賞、『天のシーソー』で椋鳩十児童文学賞、『満月の娘たち』で野間児童文芸賞、『夜叉神川』で児童文学者協会賞、ホワイトレイブンズ選出、IBBYオナーリスト選出選など、数々の受賞作をもつ安東みきえが描く、友情の物語。

安東みきえ 1953年、山梨県生まれ。「ふゆのひだまり」で第11回小さな童話大賞(毎日新聞社主催)大賞を、『いただきます』で同選者賞今江祥智賞を、『天のシーソー』で第11回椋鳩十児童文学賞、『満月の娘たち』で野間児童文芸賞を受賞。『夜叉神川』がIBBYオナーリストに選ばれる。 その他、『夕暮れのマグノリア』『頭のうちどころが悪かった熊の話』など著書多数。

レビュー

  • 対照的な二人に芽生える友情

    世界観を塗りかえてくれる作品。 人は、たとえ間違ったとしても、 それで終わりなんかじゃない。 変わっているように見える相手にも、 なにかの事情があるかもしれない。 人にも、自分にも、優しい生き方を するうえできわめて重要になる、 これらの信条がまぶしい一冊でした。 主人公は本音をかくす小学六年生。 空気読むことに汲々としていた彼女が、 本音しか言わない転校生と出会い、 かかわるなかで、心を自由にする 生き方に目覚めていきます。 問題児とされる転校生の 奇妙なふるまいの理由が気になって、 ページがどんどん進みましたよ。 葬祭にこだわる例の子の印象は、 隠された事情が見えてくることで ガラリ、変わりますね。 はじめは最悪だったのに、 終盤では共感を覚えずにいられませんでした。 欠けたものを補い合うかのような 友情の芽生えにも癒されたな~。 まず大事にしなくちゃいけないのは 自分なんだよという気づきは、 全小中学生に読んで味わってほしいところですね。 本心をかくす少女と 本心ダダ洩れ少女の邂逅が、 大人の心をも洗い上げてくれる画期的な作品。 茶目っ気のある少年の好演にも、 ぜひ注目してください。 (対象年齢は10歳以上かな?)

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