作品情報
言葉と気持ちのずれが、京都の空気の中で疼く。
第27回小説すばる新人賞受賞作。仕事と恋愛のあいだで揺れる女性の内面を掘り下げる。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2015-02-05
- ページ数
- 192ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.9 x 1.9 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784087715972
- ISBN-10
- 4087715973
- 価格
- 1320 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
東京で雑誌編集をしていた瀬野美月は、姉が亡き父親から譲り受けたカフェを手伝うため、京都に移り住んだ。 淡々と日々を過ごす彼女の心をよぎるのは、東京での仕事と不倫相手の記憶だった。 飲食店の紹介記事で使う言葉への違和感、別れを告げた不倫相手から送り続けられるメール……。 自らの気持ちと、それを表現する言葉とのギャップが、美月の心にわだかまりとして残っていた。 そんな美月の前に、どこか現実感がなく不安定さを帯びた男子中学生が現れる。 平日の夕方にコーヒーを注文する彼は、大人びた物静かな少年だったが、あどけない面も持っていた。 二人が親しくなっていったある日、彼は他人とは異なる世界が見えることを美月に打ち明ける。 彼の話を聞くうちに、美月は自分の現実感が揺らぐ感覚を抱き、彼自身の存在さえ確かではないという思いを持つようになる。 そして、彼だけが知覚する言葉を、ノートに書き留めるようになった美月に訪れた瞬間とは――。 第27回小説すばる新人賞受賞作。 〈プロフィール〉 中村理聖(なかむらりさと) 1986年福井県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。本作で第27回小説すばる新人賞を受賞して、作家デビュー。
レビュー
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優しい「言葉」に包まれた作品
カフェを舞台に、ゆったりとした時間が流れる作品。人間模様や食事の描写だけでなく、せわしい日々の中で消費されてゆくだけの言葉に焦点をあてている点が、この作品を単なる「女性」「カフェ」というこれまで映像化されたような小説の型から際立たせていると思う。 主人公、少年を中心に優しい「言葉」であふれていて、読後は温かい気持ちになる。静かな場所でゆったりと、美味しいコーヒーを飲みながら読むことをお勧めします。
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これが、受賞作?
小説すばる新人賞受賞作ということで、大いに期待して読み始めました。 最初から、ストーリー自体に大きな展開がなく、面白みに欠けました。 これが、受賞作? と不思議に思いました。 最後まで読み通しましたが、結局、どの場面にも面白みを感じなかった。
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よくわからない
優しい文章で読みやすいけど・・・読み終わった後に『何を読んだんだろう?』。 よく分からない本だったな。
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喫茶「月と六ペンス」にて
喫茶「月と六ペンス」の壁沿いに並ぶ文芸書の中にこの書をみつけた。 読み始めるとこの喫茶店らしき描写があり驚く。。。 ※「京都の景観づくりに貢献したとかで賞をもらった有名なパン屋さん」とはどこだろう。。 ・月夜の砂漠の下をラクダにまたがって歩く ・夜から昼が生まれた ・チーズケーキを食べながら「甘いから、痛いのよ」とポロポロ泣く ・耳の穴から水色のワンピースの裾の女の人の声 ・うさぎさんのケーキ、たぬきさんのおむすび、、 不思議な情景が並ぶ。それを京都の町が違和感なく包み込む。京都にはこういう異空間がよく合う。 (「夜は短し歩けよ乙女」「鴨川ホルモー」などなど。) それにしても不思議な「感覚」や「事象」や「匂い」や「色」を、文字だけでここまで見事に具現化できるとは、、、。 独特で繊細で不思議な世界を堪能したひと時でした。
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五感 六感
目で文字を追っている内に、様々な感覚を呼び起こされ、映画よりもリアルに、お話の中に引き込まれていました。
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優しい小説
姉妹でカフェを営みながらそこでの人々との出会いを描いた物語です。 舞台は京都。鴨川デルタ、錦市場、八坂神社、祇園祭や永観堂、大原の朝市、進々堂など、京都に住んだことのある人であれば馴染み深い風景の描写がいくつも出てきます。 物語は全体的にふわふわした感じで、起承転結の高低差が少ない、優しい小説である印象を受けました。 個人的には、主人公や他人の声が聞こえてしまう準君の将来、姉と恋人との結末などをもう少し深く掘り下げてほしいように思いました。 表紙に浮かぶバブルリングは、そんな内容を象徴しているのでしょうか。ふと、読み終わり本を閉じてから思いました。
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いろいろな想いが溶けあって、京都での「親密圏」を作っていく
先進国であっても、人生の時間と資源は限られていて、それを投入して「偉く」なる人も、ただ忙しく働く人もいるが、自分と周りの人との生活を大切にしようとする人もいる。この小説は、第3のタイプの女性主人公の、京都のカフェでの仕事と暮らしを、柔らかに描いています。 この種の小説は、今日の日本社会の雰囲気に合っています。 しかし、『砂漠の青がとける夜』の良さは、登場人物が多彩で、人間関係、そして主人公の感情が一直線にドラマチックに進まず、ある意味で現実的である点にあります。なお、その過程で青色にまつわる、幻想的な場面が出てくるのが特徴ですが、イマジネーションに乏しい私には難しかったです。芸術の技法では、フォトモンタージュ、オムニバスというのか、全体の流れとともに、個別の場面を想像して楽しめる作品です。 先に書いた、「親密圏」を大切にする登場人物とともに、対照的な人物も少し出てきますが、全体としては穏やかに進行します。主人公はあまり自分を主張しないが思索をする女性で、明るく働き者のお姉さん、そしてその恋人候補になるがなかなか進まない学校の先生も、フレンドリーでいい感じですね。東京の妻子ある男との関係については、彼がなぜ離婚しなかったかなど説明されないようですが、要するに主人公にとって1つの契機だったということなのでしょう。・・・それがどう発展するかなどと期待して読む、フツーの小説ではありません。 私も京都生まれですが、鴨川三角州、祇園祭などの風景は楽しめました。著者は一定のリサーチをされたのでしょう。たしかに京都は、最高レベルの機能とともに、ゆとりと文化、そしてときおり知人と出くわすおもしろさもある街です。 同じくおもしろかったのは、登場人物の職業について描写した部分で、雑誌編集者、ペットボトル飲料会社のサラリーマン、京大教授、そしてカフェレストランの運営などです。東京で雑誌の記事を書くというのが、疲れる仕事だということが確認できました。大学教員も今や疲れるサービス業ですが、京大には超然的な先生もいるようですね。 本体の表紙は青色、背表紙は青に銀文字で、本棚を飾ってくれます。(うらやましい!) 「親密圏」の価値を肯定する趣旨から言えば、金文字の方が良かったかも。 主人公の東京の元恋人への思いは、身体感覚として、またカフェに来る寂しい男の子の思いは幻想風に語られます。前者は『シンプルな情熱』(アニー・エルノー)にも書かれていたので、たいせつなことなのでしょう。・・・しかし後者が、著しい幻覚レベルに進んだ場合は、良い薬もあるので、病院を受診するべきです。
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おすすめはできない
色彩に関する描写にとてもこだわっており、小説の美しい世界観を見事に表していた。 ただしストーリーに関しては、読み手は淡々と物語が進むのを眺めるだけという感じであった。特に大きな展開があるわけでもなく、後半から読むのが面倒になってくる。また人物の心情を細かく書きすぎており、読み手に想像させる部分がなかったことも原因であると思う。
関連する文学賞
- 小説すばる新人賞 第27回(2014年) ・受賞