日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
コンジュジ

すばる文学賞

コンジュジ

木崎みつ子

過酷な現実を生きる少女せれなが、伝説のロックスター・リアンを心の支えにして救済を探る。第44回すばる文学賞受賞作。

暴力救済少女幻想音楽

作品情報

現実と妄想のあいだで、少女は自分を救おうとする。

第44回すばる文学賞受賞作。2021年に集英社から単行本刊行。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2021-01-20
ページ数
168ページ
言語
日本語
サイズ
13.4 x 1.8 x 19.4 cm
ISBN-13
9784087717426
ISBN-10
4087717429
価格
1540 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

【第44回すばる文学賞受賞作】 【第164回芥川賞候補作】 二度も手首を切った父、我が子の誕生日に家を出て行った母。 小学生のせれなは、独り、あまりに過酷な現実を生きている。 寄る辺ない絶望のなか、忘れもしない1993年9月2日未明、彼女の人生に舞い降りたのは、伝説のロックスター・リアン。 その美しい人は、せれなの生きる理由のすべてとなって…… 一人の少女による自らの救済を描く、圧巻のデビュー作。 【川上未映子氏、絶賛!】 とんでもない才能。 サバイブの果てに辿り着く、こんなに悲しく美しいラストシーンをわたしは他に知らない。 深く、胸を打たれた。 この小説が見せてくれたもの、ずっとわたしの宝物です。 【著者略歴】 木崎みつ子(きざき・みつこ) 1990年大阪府生まれ。 大学を卒業し、現在は校正業に携わる。 本作で第44回すばる文学賞を受賞。

レビュー

  • もう一つの役割

    読み始めは正直なところ起伏のない文章、という印象でした。 読了後も、美しくはあれどあまりに無情なラストに何とも言えない気持ちになりました。 ただ、読み終わって数か月たっても、まだこの物語を思い出し、描かれている日本の現状、被害者の置かれている社会的・心理的状況について考える瞬間があります。 作者が伝えたかったのも、まさにその事なのではないかと想像します。 声高に告発できない、身近な人にすら頼ることが出来ない、自分自身の中ですら他者に対する明確な怒りまで辿り着くことができない、そういう人々のリアルな心情を描きたいという意図があればこそ、物語の内容の厳しさにも拘らず終始淡々とした語り口なのだろうと思います。 メディアの情報だけでは掬い上げられることのない現状の告発という、現代日本では忘れられがちな文学の役割を担う作品だと思います。

  • マジックリアリズムが冴える傑作。

    木崎みつ子さんのデビュー作。語り手の妄想体験がおもしろい。

  • 一筋の光とは…

    小さい時から音楽に憧れそのアーチストの音楽で自分を鼓舞し未来を切り開く内容かと思って購入したが、内容はもっと重く歪んでいたように思う。

  • 星8つ。

    すばる文芸賞発表のとき、一度読んだが、 今回は、掲載時から、いくつか改正が行われた完全版ということで、Kindle版を購入。 序盤はユーモア多めに昭和的な貧困家庭を描いているけど、 中盤に起きる衝撃的な展開から、別ジャンルの小説を読んでいるかのような、アクロバティックかつサイケデリックな展開に雪崩れ込んでいく。 最後には、まんまと泣かされてしまった。 過去や異界へ行き来しながら、物語の王道をしっかりとこなしてラストに至る流れは圧巻。 すらすら読めるわりに、場面変換とか、回想の入れ方とか、かなり巧妙なことをしてるので、まさかと思って、出来事とページ数をエクセルにぽちぽちと打ち込んで、分析してみたけど、ストーリーラインや、感情曲線はどちらもほぼ完璧に行われている…。 令和の純文学って、こんなにレベル高いのかと驚愕した。 インタビューによれば作者は「小説で何かを変えられるとは思いませんが、傍観者ではいたくなかった」という志を持って書いた作品だそうだ。 そんなわけで、扱っているテーマは重たい。 読みやすくて、3時間くらいで読めちゃうのだが、読んだ時間より、読んだあとに考えてる時間のほうが長かったが、そのせいか、この小説を読んで、十代の頃に聴きまくっていて、正直、もう聴き飽きたと思っていたロックバンドをまた愛せるようになった。 物語の力を軽視してたわけじゃないけど、物語を読んだだけで、こんな魔法のようなことが起きるんだなと、正直びっくりしている。 星8つあげたいくらいだが、システム上これだけしかあげれないので、星5つで我慢とする。 これで、長編一作目だというのだから、これからが楽しみというか、恐ろしい作家だと思う。

  • 深く胸に残る印象的なラスト

    なんて印象的なラスト。目を奪われました。 こんな救済の描写見たことないです。 シャベルと白い薔薇の花束。深く胸に残りました。 途中から断続的にずっと涙が出ていましたが読後は不思議とカラッとしています。 性的虐待などの重いテーマも扱われておりキツい場面もありましたが、文体はどこか軽妙でドライなほどでぐいぐい読まされてしまいます。変に深刻ぶった表現をされるよりかえって真に迫るようです。また、ふいに挟まれる比喩に意外で面白いものが多い。 この作家のほかの文章も読みたいです。 せれなが生きてくれてよかった。父は一体どんなことがあってあんなふうになってしまったんだろうなぁ。

  • キャラクターの描き方が良いけど、あまりにも辛かった。。

    この父親の性的虐待と、その過程のエピソードが過激。 個人的には気持ち悪くなるレベルだったので、作家として光るものなどを差し置いても、 人に気軽にオススメはできない作品だった。 心にグサリときて、それがずっと刺さったまんまである。とくに「魔が差した」という表現。 読んだ後でも思い出してしまう感覚。 主人公がカラリとしているが、彼女が生きている妄想世界と行ったりきたりしても、それが救いにならない。 つまりキャラクター描写が上手く、本当に生きているようだとも言える、し、 心に残るものを描き切る力といえば素晴らしい。が、個人的にちょっとキツかった。 次回作があれば、読んでみたい気もする。

  • 清々しささえ感じる悲喜劇

    第164回芥川賞候補作で、著者のデビュー作。タイトルはポルトガル語で『配偶者』を意味する。 平易な文章で、一定の低温に保ったトーンは実用書や研究論文に近い。文学的な表現を生み出すことにあまりこだわりがなさそうな印象を受けた。 いちいち回りくどい描写がない分読みやすいが、純文学ファンがどう感じるかはわからない。 文章そのものよりも、現実と妄想、そして主人公のせれなが恋するロックスター・リアンの伝記本の中身……この三つの世界を目まぐるしく、しかし違和感なく交える構成力に注目した。 性虐待をテーマにした苦しい物語ではあるが、乾いたユーモア表現によって頬がゆるむ場面も多い。悲惨な境遇に置かれたせれなから、枯れない生命力が感じられるのはこのためだろう。 孤独の描き方も妙に明るく、閉じているようで果てしなく開いている心というテーマ性も含めて、どこか海外作品の香りがする小説だ。 キャラクターに関して付け加えると、せれなの保護者的役割のベラさんと、遊び人の周囲に流されまいと『Sunday』というファミリーソングをこしらえるバンドマン・ジムがキュートだ。この歌詞に心洗われるのは、せれなやリアンだけではないはずだ。 読者の胸を打つであろうラストシーンも、もっといくらでもドラマティックにできたはずなのに、さりげなく笑える文章を入れている。 「らしさ」を最後まで忘れない著者の姿勢には好感を持ったし、少し可愛らしさも感じた。

  • 創作でありながら現実

    性的虐待を受けていた人はフラッシュバックの可能性があるので読まない方が良い。それくらい生々しい作品。性的虐待の被害者と関わった作者が自分がこれを書いていいのかと何年も悩みながら書いたらしい。納得のクオリティ。 綺麗な文章で読みやすいけれど、虐待を受けている主人公の頭の中そのままに近いから、虐待に明るくない人には理解しにくい描写もあるかも。 例えば現実と妄想が急に切り替わるシーン。読者は一瞬置いてかれるだろうけれど、この逃避行動は虐待児ならやったことある人少なくないんじゃないかな。私もよくやってた笑 バドエンとか終始胸糞とかって感想が多く見受けられるけど、私はハッピーエンドだと思った。メリバとかでもなくちゃんとしたハッピーエンド。でもこれはラストシーンの解釈の仕方次第だろうな。捉えようによっては報われない残酷な話になる。まぁ、そっちの方が現実に近いかもね。

関連する文学賞