作品情報
海と太陽に包まれた小島で、若い恋は試練を越えて神話のような明るさへ向かう。
『潮騒』は、1954年に新潮社から刊行され、第1回新潮社文学賞を受けた三島由紀夫の長編である。新潮文庫新装版では、古代の伝説が息づく伊勢湾の小島で、海の若者新治が少女初江に出会い、星明りの浜や嵐の日の廃墟を経て恋の行方を試される物語として紹介されている。神島をモデルにした島の風景、健康な肉体、共同体の噂と試練が一体となり、三島文学では珍しい明澄な結末を持つ作品として知られる。
レビュー要約
-
三島作品のなかでも明るく読みやすい青春小説として評価されている。自然描写と若い肉体の健やかさが強く印象に残り、悲劇性よりも恩寵的な世界の透明感を味わう読者が多い。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2020-10-28
- ページ数
- 240ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-13
- 9784101050447
- ISBN-10
- 4101050449
- 価格
- 693 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
【新装版、新・三島由紀夫】 「その火を飛び越して来い」、永遠の青春がここに――。 その名を不動のものとした、三島29歳の作品。〔新解説〕重松清 古代の伝説が息づく伊勢湾の小島で、逞しく日焼けした海の若者新治は、目もとの涼しげな少女初江に出会う。にわかに騒ぎだす新治の心。星明りの浜、匂う潮の香、触れ合う唇。嵐の日、島の廃墟で二人きりになるのだが、みずみずしい肉体と恋の行方は――。 困難も不安も、眩しい太陽と海のきらめきに溶けこませ、恩寵的な世界を描いた三島文学の澄明な結晶。解説・佐伯彰一/重松清。巻末に年譜を付す。 【本文冒頭より】 歌島は人口千四百、周囲一里に充(み)たない小島である。 歌島に眺めのもっとも美しい場所が二つある。一つは島の頂きちかく、北西にむかって建てられた八代神社である。 ここからは、島がその湾口に位いしている伊勢海の周辺が隈なく見える。北には知多半島が迫り、東から北へ渥美半島が延びている。西には宇治山田から津の四日市にいたる海岸線が隠見している。……(「第一章」) 三島由紀夫 (1925-1970) 東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。49年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、54年『潮騒』(新潮社文学賞)、56年『金閣寺』(読売文学賞)、65年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。70年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。
レビュー
-
大好きです
めっちゃ気に入りました 大好きです ロミオとジュリエットの悲劇を のどかな歌島に持ってくると 黒い邪心も、涙の不幸も消え去るという事でいいでしょうか? どこかで間違いが起きるのではないかとハラハラしながら読み進めましたが、最後、明るい希望に胸を膨らませながら読み終えました 素晴らしい作品だと思いました
-
綺麗
商品がとても綺麗でした。
-
霧の中から浮かび上がった神島
須賀敦子(著)「ミラノ霧の風景」を読んで思い出した。伊勢湾自転車輪行旅でフェリーに乗る前日に「潮騒」を読んだ。翌日、フェリーで伊良湖から鳥羽に向かう途中、神島を見ようとフェリーデッキで海を見ていた。GPSにて神島近くに来たのを確認したのだが、あいにくの深い霧で島が見えなかった。とその時、すぅと霧の中に島が薄っすら浮かび上りだした。そして、漁をしている小舟、島の人、灯台などが、だんだんしっかり浮かび上がり、そして再びすぅとゆっくりと霧の中に消えていった。粋な演出のLIVE演劇、とても感動的なひととき。一生忘れないだろう。
-
無題
これぞ純文学といえる小説
-
三島由紀夫渾身の恋愛小説
文章は若干難しい部分もあるが、主人公の新治と初江の距離が少しずつ縮まっていくのは感動もの。終わり方も素晴らしく、流石三島由紀夫と思った作品だった。
-
表現方法は古い
しかし、良い作品でした。NHKの「あまちゃん」の会話の中でこの本が出てきて、読んでみようと思いました。
-
生涯持ち続けたい一冊
初めから終わりまで一本の線で繋がるような分かりやすい作品でした 現代語で書かれているので小説を初めて読む方でも何の抵抗無く読み終えることができると思います 文中にある表現に心を打たれることは小説では多々ありますが、日本人として古来から受け継いできたモノを改めて気づかせてくれるという点では黒澤明と同じく名作である理由の一つと思います 歳を重ねてまた読み返したいと思います
-
「男は気力や。気力があればいいのや」
「男は気力や。気力があればいいのや」宮田照吉の、この言葉を三島流に表現したのが「潮騒」だ。 安夫が初江を襲うシーンでは蜂に三度も刺されるなど、話をつくりすぎている部分もある。 だが、全体的には「バロック調」のすぐれた小説だ。 ーーー初江はそっと自分の写真に手をふれて、男に返した。 少女の目に矜(ほこり)がうかんだ。自分の写真が新治を守ったと考えたのである。しかしそのとき若者は眉を聳やかした。彼はあの冒険を切り抜けたのが自分の力であることを知っていた。ーーー 若いころ何度か読んだが、この結びはすっかり忘れていた。三島の文章を抜きに三島由紀をの思想は語れまい。
関連する文学賞
- 新潮社文学賞 第1回(1954年) ・受賞