日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
アマゾニア

センス・オブ・ジェンダー賞

アマゾニア

粕谷知世

十六世紀のアマゾン河流域を舞台に、女人族の戦士と森の精霊をめぐる復讐と再会を描く歴史ファンタジー。神話的な想像力と南米史への関心が重なっている。

歴史ファンタジーアマゾン女性戦士復讐神話

作品情報

アマゾンの森で、復讐と精霊の記憶が交差する。

粕谷知世による南米歴史長編。家族を失った女戦士と森に宿る存在を軸に、植民地化以前後の緊張、伝承、ジェンダーの想像力を物語化する。

レビュー要約

  • 設定や題材への関心が強く、人物の迷いや社会的背景を丁寧に追う読み方が目立つ。展開の重さや専門性を負担に感じる読者もいるが、読後に残る余韻を評価する声がある。

書籍情報

出版社
中央公論新社
発売日
2004-10-01
ページ数
426ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784120035784
ISBN-10
4120035786
価格
2200 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

16世紀アマゾン河流域——女人族〈泉の部族〉の大弓部隊長・赤弓は宿敵を倒し一族に平和をもたらした。直後現れたスペイン人の男を、掟を破り守護精霊は保護するよう命じるが——濃密な生命と精霊に満ちた密林に展開する魂の喪失と再生の物語。

レビュー

  • 見た目より、ぶ厚いぞ!

    一族の平和を守護精霊「森の娘」に寄って立つ女人族にあって、精悍で気っ風のいい大弓部隊長「赤弓」の冒険と葛藤を中心に、濃厚な物語は、ひたすらアマゾンの密林に展開する。 重厚でスピリチュアルなストーリーに私は引き込まれ、強い印象が記憶となって余韻を残した。 印象としては、中南米の「もののけ姫」って感じ。 濃密なファンタジーを読みたい方には、特にお奨めだ。 ところで、派手な表紙でそれほど分厚くないこの本だが、紙が薄手で2段組420頁余りある上、文字もさほど大きくなく、見た目より以外と物語は長い。内容の濃さと長さが、あなどれない長編である。 覚悟して物語の世界に飛び込まれよ・・・こちらの世界に戻れないかも・・

  • 命のごった煮のなかのユートピア

    前作「クロニカ」と同じように新大陸を目指したスペイン人がでくる。 が、快進撃だったインカと違って、アマゾン流域では彼らも思うように進めなかったというのは知らなかった。あれだけ動植物の豊富な場所で餓死というのは驚きだが、その場所に合ったノウハウを持たない文明人は非力なんだな。 それでも男の沽券にしがみつくマッチョ男たちには失笑するが、読んでるうちに、マッチョのバカ男の典型へレスが、だんだんかわいく、かつ哀れを誘うようになってくるから不思議だ。 余計なお世話の父権的温情主義で、わかった顔をする男より、馬鹿な分たたきなおしやすいからかも知れない。(そのためには赤弓のごとく、女の方にマッチョ以上の肉体的力が必要だが…) このマッチョ男にほれてしまった守護精霊「森の娘」が禁を破って部族に男を引き入れてしまい、少しづつ女達の結束は崩れていく。 ヘレスに振り回される「森の娘」は「なんでなんな男に…」という典型だめんず。それまで立派な精霊ぶりを示してきただけに、ギャップが激しい。しかし後半「森の娘」の過去がわかると、少女神なんだなーと納得。 失踪した「森の娘」を探しに行く姉妹のあたりは、一途でかわいい。 オンサの部族の正体というのが哀しく、男だけとか女だけとか、単一方向のシステムでは救いきれないものがこぼれていくようだ。 生贄の必要ないユートピアは作れるのか?それは出来上がったとたん地獄になるのか? アマゾン流域の生命の混沌は、ユートピアと地獄が背中合わせで共存している世界だ。しかしこの現実世界も、同じかもしれないと思う。

  • とてもおもしろかったです

    アマゾン河流域(アマゾネス)には、数々の部族が存在するが、その中の泉の部族というのは、女だけから構成される部族で、男の存在は一切許されていない。 では、どうやって子孫を作るのか? 彼女達は、一年に一度だけ陰の宴というお祭りを開き、その時だけは、男の侵入を許す。そこで他部族の男達を呼び寄せ交わるのだ。 では、生まれてきた子供が男だったらどうするのか? 泉の部族には、代々産み分けの技法が備わっているので、ほとんどの場合、女の子しか生まれない。しかし、万一失敗した場合には、父親の部族のもとへ子供を預ける。 争いの原因となる男を排除し、他部族との交渉は陰への参加を切り札にして有利にすすめるこの仕組みはうまく機能していた。しかし、スペインからの侵略者を機に、大波乱が引き起こされた。 上下2段組で、500ページになる長編物語。アマゾンを拒み続けていたスペインからの侵略者ヘレスは、悪行の限りを尽くし読み手に憎しみさえ感じさせるほどであったが、最後にはアマゾンに慣れてしまい新しい部族まで作ってしまう。その過程をごく自然に描いて見せた筆者の力には感服するばかりだ。物語後半では、死後の世界まで作り上げている。多少読みづらいが、現実とはかけ離れた幻の世界は美しくもありどす黒くもある。感動する本ではないが、とてもおもしろくお勧めの本だ。

  • ヒーリング

    簡単に云えば、隔絶されたアマゾネスの母系社会、精霊信仰、スペイン人のアマゾン侵略の物語。 でも、それだけでは言い尽くせない濃厚でいて、どこか清清とした物語。 本を読んでいて、どこか入り込めない作品も多い中、ページを開けばそこはディズニーランドの魅惑のチキルームのよう。作品の行間から、濃厚な緑の香りや雨音、風の匂い、虫の羽音や動物の鳴き声、河の流れる音が洪水のように満ち満ちて自分が何処にいるのか忘れさせます。 「陰の宴」と呼ばれる他部族の男と、アマゾネスである泉の部族との受胎のみを主とした結びの儀式から物語は始まり、部族を守る大弓部隊の部隊長である赤弓、精霊の森の娘をはじめ登場人物たちはみな、心の深い場所に悩みや悲しみを抱いています。部族間の戦いはなぜ起こったのか、精霊森の娘の過去にまつわるエピソードなど、物語は熱帯の植物が絡まり合うように進んで行き、すべてが癒され昇華していきます。 読後、やわらかく、あたたかなものに包まれて、癒されている自分に気付くことでしょう。

  • 全てのものがわたしであり同時にあなたである。心地よいカオスの世界

    著者コメントにもあるように、主人公の赤弓はとてもオトコラシイです。それはハンパではありません。そしてわたしは女ですが、長い間オトコラシイに憧れを抱くハンパモノでしたので、赤弓に乗り移って気持ちよくアマゾニアを歩き回ることが出来ました。でも赤弓以外のアマゾネスはとてもイロッポイです。まだ少女である夢見鳥ですら、時に、ドキドキするせりふを聞かせてくれます。そして「抱く」より「抱かれる」の方がしっくりくる類の女性性も同時に持ち合わせるわたしとしては、彼女らの目を通して見るオトコタチを十分に楽しみました。 人は生まれて、生きて、死んで、森へ帰る。全てのものがたゆまなく循環するアマゾニアを世界として。生と死の狭間にあって、全てのものがわたしがわたしである意味を問う。それは答えが出ない問いではあるけれども、人もかつて人であった精霊も悪霊も問わずにはいられないし、問うことそのものが生きることである。 この物語の世界は、女と男、人と精霊、異なる文化、誕生と死、世界が内包するあらゆるものが、区別があり、かつ、重なり合っている。心地よいカオスの世界です。そこに現れる生きているものの真理と喜び。めくるめく歓喜の物語をぜひ味わって下さい。 最後にひとつ。カイマンの皮を被った鰐の部族長がカッコイインデスヨ~。

関連する文学賞