作品情報
戦後政治の節目を参議院から読み直し、二院制の力学を明らかにします。
中央公論新社の中公叢書として刊行された政治史研究です。参議院を衆議院の副次的な存在としてではなく、政権運営や民意の反映に独自の影響を持つ制度として検討し、戦後日本政治の見方を組み替えます。
書籍情報
- 出版社
- 中央公論新社
- 発売日
- 2010-05-01
- ページ数
- 378ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784120041266
- ISBN-10
- 4120041263
- 価格
- 1657 JPY
- カテゴリ
- 本/社会・政治
Amazon.co.jp: 参議院とは何か: 1947~2010 (中公叢書) : 竹中 治堅: 本
レビュー
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参議院の影響力について書かれた本
参議院の影響力について、強い参議院論とカーボンコピー論のどちらの解釈が的確なのかを検証した本です。 第1章では1947年5月に参議院が創設されてから1956年12月に自民党が過半数議席を確保するまでの時期。 第2章では1956年12月に自民党総裁選が行われてから、佐藤内閣末期までの時期。 第3章では1971年7月の参議院議長選で河野謙三が勝利をおさめてから、1980年代後半までの時期。 第4章では1989年7月の参院選で自民党が敗北してから1990年代後半までの時期。 第5章では1998年7月の参院選で自民党が敗北してから2005年10月に郵政民営化法案が成立するまでの時期。 第6章では2006年9月に安倍晋三が首相に就任してから2009年7月に麻生太郎首相が衆議院を解散するまでの時期。 第7章では以上の議論を総括した上で、参議院のあり方について議論。 惜しいのは書籍が2010年5月の本なので、民主党政権で2010年7月の参院選で与党が過半数割れになってから2012年11月に野田佳彦首相が衆議院を解散するまでの時期についての言及がないことですね。これがあれば、もっと参議院のあり方について議論できたのではないかと思います。
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提言を 支持しないので 星4つ
1.内容 参議院の見方には、大まかに分けて、カーボンコピー論と、強すぎる参議院論(現時点でレビュアーが採用する説)があるが、法案審議過程を過度に重視するもので、間違っている(ことを本書で証明する)。実際には、参議院は、非常に広範囲な政治過程に影響を及ぼすもので、著者としては、多数の政党が法案に携わることができるので、肯定的に評価する。ただ、現在においては、衆議院議員選挙で小選挙区・比例代表並立制を導入していることがあり、なおかつ参議院議員選挙で比例代表制を導入しているので、二大政党制に拍車がかかったり、無所属議員が当選しにくかったり、多用な政党が法案に携わることが出来なかったり、といった欠点がある(もちろん、一票の価値の問題も指摘)。そこで、この欠点をなくすために、地域ブロック毎の大選挙区制を導入すべきである。レビュアーが読み取った論旨はこのようなものだが、その他、参議院に焦点を当てた戦後政治の知識が詳しく載っている。 2.評価 (1)長所としては、日本の戦後政治についての記述が詳しいこと。参議院が果たした役割を明らかにするのが目的だったとしても、新聞の縮刷版(著者がなぜその縮刷版を選んだかはレビュアーにはわからなかったが、たぶん些細なこと(それしか載っていなかった)だろう)をふんだんに用いた記述は、資料としても価値があるものと素人ながら思った。 (2)短所と言っても、レビュアーの個人的見解だが、著者の提言には賛成しない。憲法改正が難しい現状としては、著者の提言はやむを得ないが、それなら、政権選択選挙とされる衆議院は、無用になるのではないか?多数の政党が法案に携わるのならば、小党乱立になりやすいとされる(得票数と議席数がおおむね比例するという利点はある)比例代表制(を中心とした制度)一院でいいのではないか?著者の次の課題としては、ヨーロッパにおける比例代表制の研究だと思う。 (3)付記すると、出版が少々早まったのではないか、とも思う。民主党政権下で、二院制がどのように機能するかを見てから書いたほうが、よりよい文献になったとレビュアーは思う。 (4)以上、長所星5つ、短所で星1つ減らして、星4つ。
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語られにくい参議院の歴史
本書は、参議院の歴史を戦後すぐから民主党政権中盤まで叙述した本である。 タイトルからは「参議院はどうあるべきか」「第二院の意義とは」みたいな議論を想起したが、そういう議論はあまり多くなく、サブタイトルの「1947-2010」にあるように、この時期の参議院の変遷の記述が本書のほとんどを占めている。 政治史は(首相選出が衆議院で行われ、主要政治家の多くが衆議院議員なので)衆議院を中心に行われがちだが、本書はあまり光の当たらない参議院の歴史を取り上げてくれている。 戦後すぐの片山、芦田、吉田、鳩山の内閣は参議院では多数を握っていなかった。吉田も参議院で苦労し、多くの法案が廃案になったり修正を余儀なくされた。この時代は衆議院再可決も頻繁に行われた。ただし1953年以降吉田内閣は衆議院でも少数内閣となったため、衆議院時点で与野党協議が不可欠となり、結果として参議院で引っかかることは減った。(とはいえ1955年の国防会議構想法案について、反対の両社会党は参議院で郡祐一委員長を負傷させて議事をできなくし、さらに議長と副議長を議長室に監禁して本会議開会を物理的に不可能にしてしまったという事案はある) 保守合同から60年代にかけては、自民党政権を支える議長が就任する時代で、この時代は法案そのものは通る一方で、参議院自民党の発言権が増す時代でもあった。特に議長は権力を有し、人事や法案事前審査などで力を発揮した。 70年代には、もともと自民党ながらこうした議長支配に反発し、野党の支持を得た河野謙三が議長についた。河野は「良識の府」としての参議院を理想としており、慎重審議を重視したため、自民党は法案を通すのに苦労することとなった(河野議長の引き延ばしに対して、田中は会期延長して通年国会化させることで、引き延ばしを断念させられた)。しかし、同時に参議院自民党独自組織の力が下がり、参議院も各派閥に取り込まれることとなった。特に田中角栄は参議院自民党の支持が厚かった。また、その後は議長は一期かつ党籍を離れる慣習となり、議長の権限は相対的に押さえ込まれた。 89年に自民党が参議院で過半数を失った。このため、湾岸戦争への支援やPKO協力法では大幅に野党に譲歩を強いられ、自衛隊海外派遣は大きく遠のいた。また政権交代後の細川内閣の政治改革関連法案が参議院の否決により大きく譲歩を強いられた。自民党の政権復帰後は、自社さとの連携か保保連携かという対立が党内で生じた。 竹下派における小沢を巡る動きは、参議院が鍵を握った。小沢は衆議院では過半数を確保したのに対し、参議院では反小沢が大勢だったのである。結局小沢は離脱し、残った参議院勢力は後の小渕を支えることになる。 小渕内閣も参議院に苦労し、宿敵小沢にひれ伏してでも連携し、また公明にまで手を伸ばす。小泉は多くの自民党の慣習を無視する強権的な振る舞い方をしたが、自民党参議院の意向はかなり組み入れるようにしており、郵政法案も青木幹雄などの意見は多く組み入れて修正に応じている。 小泉の後を継いだ安倍は、当初は参議院の意向はあまり組み入れないで振る舞おうとしたが、実際には参議院の意向の多くを聞き入れざるを得なくなる。しかし、参議院自民党の要望だった郵政民営化での離党議員の復党に応じたことは、安倍政権の支持率を大きく落とすことにつながった。 歴史の話は手堅い一方で、参議院改革の話は思い付きの議論という感じが強く、あまり深まっていない。例えば二大政党制と強力な第二院の存在は不整合であるという指摘( 現代日本の政党デモクラシー )や、解散できない第二院が強大な権限を持ついびつさ( 立法と権力分立 )などの問題点を踏まえての議論にはあまり見えなかった。 二院制の意義やその理解の仕方を考えたいならば、後者の本(『立法と権力分立』)は一部その役割を果たしてくれるだろう。 理論面、制度面は弱いものの、参議院の歴史を辿る上では本書は非常によくまとまった、貴重な本だと言えよう。 参議院改革などを考えるうえで、きちんと踏まえるべき一冊だと思う。
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「ねじれ」に対するマスメディアの俗論を喝破する名著
立法過程において、参議院の影響力を認める「強い参議院」論と、衆議院の二番煎じに過ぎないという「カーボンコピー」論という先行研究を外観した上で、筆者は「強い参議院」論を支持する。 しかしながら、先行研究が、ある一時期の政治状況や、国会内の審議過程に偏った根拠から導き出されていることを批判し、本書は、戦後政治史のほぼすべての期間を分析すると同時に、国会外での交渉過程をも視角に入れた、非常に説得力のある議論となっている(特に1989年を境とした、政党別法案賛成率の表は秀逸)。 福田政権以降、衆参の「ねじれ」が批判されて久しいが、その「ねじれ」を選択したのは有権者自身であり、その選択を煽ったのはマスコミである。表面上の政局(小生は、何をもって政治と政局の違いとしているのかは甚だ疑問だが・・・)だけをあげつらい、政策過程を冷静に見つめようとしない風潮に対して、大きな警鐘を鳴らしているともいえる。 現代の政治学をふまえつつ、現実の政治史と見事にシンクロさせている意味で、一般にも読まれるべき大著である。
関連する文学賞
- 大佛次郎論壇賞 第10回(2010年) ・受賞