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戦争はいかに終結したか-二度の大戦からベトナム、イラクまで (中公新書 2652)

石橋湛山賞

戦争はいかに終結したか-二度の大戦からベトナム、イラクまで (中公新書 2652)

千々和泰明

『戦争はいかに終結したか』は、二度の世界大戦からベトナム、イラクまで、戦争の終わり方を実証的にたどる中公新書。

国際政治戦争終結安全保障

作品情報

戦争をどう終わらせるかを考えるための実証的な一冊。

戦争を「始め方」ではなく「終わらせ方」から捉え直し、主要な戦争の終結過程を比較しながら出口戦略を考える内容。

書籍情報

出版社
中央公論新社
発売日
2021-07-19
ページ数
296ページ
言語
日本語
サイズ
11.1 x 1.3 x 17.3 cm
ISBN-13
9784121026521
ISBN-10
4121026527
価格
1232 JPY
カテゴリ
本/社会・政治

第二次世界大戦の悲劇を繰り返さない―― 戦争の抑止を追求してきた戦後日本。 しかし先の戦争での日本の過ちは終戦政策の失敗にもあった。 戦争はいかに収拾できるのだろうか。 第一次世界大戦、第二次世界大戦から戦後の朝鮮戦争とベトナム戦争、さらに近年の湾岸戦争やイラク戦争まで20世紀以降の主要な戦争の終結過程を分析。 「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」を切り口に、あるべき出口戦略を考える。 ■書評掲載 ・朝日新聞(朝刊)2026年4月3日

千々和泰明 1978年生まれ。福岡県出身。2001年、広島大学法学部卒業。07年、大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程修了。博士(国際公共政策)。ジョージ・ワシントン大学アジア研究センター留学、京都大学大学院法学研究科COE研究員、日本学術振興会特別研究員(PD)、防衛省防衛研究所教官、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付主査などを経て、2013年より防衛省防衛研究所主任研究官。この間、コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。国際安全保障学会最優秀新人論文賞受賞。国際安全保障学会理事。著書に『大使たちの戦後日米関係』(ミネルヴァ書房、2012年)、『変わりゆく内閣安全保障機構』(原書房、2015年)、『安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010』(千倉書房、2021年)。監訳書に『終戦論』(ギデオン・ローズ著、佐藤友紀訳、原書房、2012年)。

レビュー

  • ロシアのウクライナ侵攻についてもいろいろなことが見えてくる。

    「戦争終結という、個別事例を除き日本ではまったくといっていいほど研究されてこなかったテーマについて、理論と歴史の両面から考えようとする(p.ii)」。私は戦争終結の「歴史」にはあまり関心がないが、戦争終結の「理論」が面白かった。 本書の分析の枠組みは「戦争終結の形態は『紛争原因の根本的解決』と『妥協的和平』のジレンマのなかで決まる(p.ii)」というもので、戦局における優勢勢力側が「将来の危険」を重視すれば「紛争原因の根本的解決」に、「現在の犠牲」を重視すれば「妥協的和平」へ近い戦争終結になるとする。そのことを示したp.17の図が分かりやすい。著者はこの枠組みを用いて、両世界大戦から朝鮮戦争、ベトナム戦争、さらにアフガニスタン戦争やイラク戦争までを分析する。 この分析から示唆されることはpp.262-267にほぼまとまっているので、手っ取り早く本書の「結論」を知りたい人はまずそこを読むといいだろう。 「ロシアによるウクライナ侵攻」に著者の分析を当てはめると、ウクライナ側にとってロシアの「将来の危険」は大きいだろうから簡単に「妥協的和平」には至らないだろうとか、ウクライナの強さのひとつは国民の「損害受忍(p.7)」の度合いが高い(それがロシアの軍事力の効果を低減させる)ことだなとか、軍事的に拮抗している(ように見える)現状ではいずれも優勢勢力にならないため戦争終結の糸口は残念ながら見つかりそうもないなとか、いろいろ見えてくるものがある。そういう点で、著者の提起した分析の枠組みはきわめて有用に思える。 あえて言えば 1 戦争終結における「国内要因や個人の役割(p.23)」についても分析してほしい 2 「戦争終結後の対反乱作戦や国家再建という別のリスク(p.252)」についても分析してほしい(戦争終結に関する評価に含めてほしい) と思ったが、それはまあ、ないものねだりと言うべきだろう。 以下、個別にメモしたところ。 1 「第二次世界大戦における日本の失敗は……戦争終結政策の失敗でもあった。(p.i)」 2 「冷戦終結を経た今日ですら……朝鮮半島は依然緊張状態」にあり「北東アジアが武力衝突の『危険』にさらされ続けているのは、朝鮮戦争当時における『現在の犠牲』の回避の代償なのである。(p.196)」 3 (日米同盟が戦争終結という課題に直面したとして)「問題となるのは、『将来の危険』と『現在の犠牲』のバランスをめぐる認識が日米で不一致となる場合である。(p.272)」 (太平洋戦争について)「日本本土戦はついに回避された。(p.122)」とあるけれど沖縄戦への言及はないなとか、細かい点で引っかかる箇所はあるにせよ、たいへん勉強になった。

  • 損害受忍度という考え方

    とても面白かった。戦争終結を考えるとき、どうしても個々の要因に目が行きがちだが、本書は一つの統一した視点での分析方法を提供してくれる。 個人的には、アフガニスタンの戦争終結は2021年だと思うのでそこまでの考察が欲しかったところではあるが、十分過ぎるほど勉強になった。 一つ思うのは、第一次世界大戦後、アメリカ含む民主主義国は様々な戦争に介入してパワーバランスを変化させているが、その損害受忍度はどんどん低下しているのではないか、ということだ。 今回のウクライナ侵攻では、ロシアが相手ということもあるだろうが、ついに自軍を出さず、武器や情報、戦略の提供だけで勝利を得ようとしている。これは現在の犠牲を、ウクライナに押し付けることで回避しようとした結果ではないかと思われる。 問題はその後だ。戦争を長引かせた結果、ウクライナは重要インフラに多大な攻撃を受けるまでになった。公表されていないが、国家総動員によって集められた人々の損害も10万人を超えている可能性が高い。 このような情報は慎重に取り扱われているだろうが、はたしてウクライナの人々は、「損害受忍度が高い」のだろうか? 元は同じ民主主義国の、普通の人々である。 実態をよく知らない私達が、勝手に損害受忍度が高いと仮定して戦わせるのは、本当に正解なのだろうか? 答えは出ないが、本書はそのような問を考える参考になった。

  • 根本的解決と妥協的和平のジレンマ

    戦争の出口戦略を考える本である。著者は防衛省防衛研究所主任研究官。ポスドク、内閣官房等を経て、2013年より現職のようである。 一、概要 〇本書の視点は、戦争の終結の形態は、「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のジレンマの中で決まる、である。 戦局優勢勢力が、そのどちらかを選択する再重要な考慮要素は、「現在の犠牲」と「将来の危険」のどちらを重視するかである。 〇すなわち、「将来の危険」を除去するために「紛争原因の根本的解決」を図ると「現在の犠牲」は増大する。 一方、「現在の犠牲」を避けるために、「妥協的和平」で終わらせると、「将来の危険」を残す。 〇以上の論点を、20世紀以降の重要な戦争において検討していくのが、本書の内容である。 選ばれたのは、第1章第一次世界大戦、第2章第二次世界大戦のイタリア、ドイツ、第3章第二次世界大戦の日本、第4章朝鮮戦争、第5章ベトナム戦争、第6章湾岸戦争・アフガニスタン戦争・イラク戦争、終章結論及び現代日本の安全保障である。 〇優勢勢力(ほとんどがアメリカ)側から見た各戦争の終結は ☆「紛争原因の根本的解決」の極・・対ドイツ第二次世界大戦。アフガニスタン戦争、イラク戦争。 ☆「紛争原因の根本的解決」の極に近い・・対ドイツ第一次世界大戦、対日本第二次世界大戦。 ☆「妥協的和平」の極・・湾岸戦争 ☆「妥協的和平」の極に近い・・朝鮮戦争、ベトナム戦争。 二、私的感想 〇たいへん分かりやすく、興味深い本だった。 〇湾岸戦争は自国兵士の「現在の犠牲」を減らすために「妥協的和平」の極を選び、フセイン体制の温存という「将来の危険」を低く見積もってしまった。しかし、イラク戦争時には、実際には大量破壊兵器はなかったので・・?? 〇朝鮮戦争の「妥協的和平」は、その後約70年間朝鮮半島の平和がどうにか維持されている点では、一定の成功と考えられるが、いまだに武力衝突の危険にさらされている点では、「現在の犠牲」を回避した代償といえる。 〇ベトナム戦争では、損害認容度の高さの問題が提示されている。ハノイ側は膨大な戦死者を出しながら、妥協しようとしなかった。民主国家であるアメリカは「将来の危険」を考えながらも、「現在の犠牲」がさらに増大していくことに耐えられなかった。 〇各戦争において、早期終結により犠牲者を減らすことができた可能性についても検討されている。朝鮮戦争では捕虜問題の早期解決であり、ベトナム戦争では早期の和平と撤退であった。 〇本書で一番緻密な検討がされているのは、日本の終戦時の幻のソ連仲介工作である。日本が最後の最後までソ連仲介工作に希望をつないだのは、ポツダム宣言にスターリンの署名がなかったことも大きな理由であった。 この点、著者は日本側が非現実的なソ連仲介策にすがったことを批判するが、アメリカに対しても次のように批判する。「アメリカはポツダム宣言にスターリンの署名を求めたり、正式な外交文書として発出したりすることで、日本がソ連仲介策という「幻想の外交」を捨て、同宣言をより受諾しやすくするように仕向けべきであった。人道上の問題のみならじ、核使用によっても日本が降伏しなかった場合は、アメリカはその瑕疵を自軍の犠牲であがなわなければならなかったはずである」 私的結論 〇終章に出てくる日米同盟の戦争シミュレーション(対中国? 対北朝鮮?)はちょっと怖い。しかし、あとがきの最後では、著書の子煩悩ぶりが出てきてホッとする。

  • 戦争は終わらせるのが難しい

    ウクライナ戦争が「終わらない戦争」と化した今、過去の戦争の終結の仕方を分析した本書はとても参考になる。

  • 良い

    ありがとうございます。

  • いま日本経済の「撤退戦」にも示唆がある

    20世紀の戦争史を「終結」をテーマにまとめただけでなく、「将来の危険の除去」と「現在の犠牲の低減」という軸の間で、交戦国がどのように揺れ動いたか、という視点で切った、戦争以外にも示唆がある良い新書でした。 オリンピックに膨大な予算が注ぎ込まれることになってしまい、新型コロナの危険も去っておらず、欠けているのは、出口戦略だったのかもしれない。 ビジネスのプロジェクトも、始めたは良いが、うまくいっていない時、どこで終わらせるかを決められず、損が拡大していくことがある。 うまくいくに越したことはないが、うまくいかなかった時〜日本経済も撤退戦を戦っているとしたら〜希望的観測だけでなく、最低限、未来に向けて何を保持しなければならないか、を考える必要がある。 日本の歴史をふりかえれば、破滅的な内戦を回避して江戸幕府を終わらせた、徳川慶喜という将軍を尊敬せずにはいられません。

  • 戦争終結に関する優れた考察

    為政者の信仰、社会の仕組み、戦況、自国の情勢の理解、さまざまな要素が戦争当事者国の戦争終結や終結後の結果につながるのだと読了して思う。 戦争をどう終わらせるかを考えて、自国の防衛も考える必要があることだけでなく、過去の戦争の分析にも役立つ思考の仕組みが書かれていた。 感謝!

  • ローズ博士の「終戦論」がわかり易くなった!

    立て続けにこの作者の書を3冊読みましたが、大小問わず(ローズ博士の監訳も含めて)始めた紛争の解決にいかにアメリカが苦慮してきているか、現在のバイデン政権のあり様を見るにつけてもよぉくわからせてくれた名著です。安全保障という危機を想定した「頭の体操」を怠け、それらを「想定外」として片づけてきたことが福島原発事故や新型コロナウィルス危機以前の日本の姿ではないかと問いかける作者の思いは熱い❗いい本に巡り会えました。

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