作品情報
救済は、荒廃した世界の果てで語られる。
早川書房のハヤカワ文庫JAとして2020年に刊行された短篇集。表題作「アメリカン・ブッダ」と、星雲賞受賞作「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」を含む全6篇を収録し、2021年の第52回星雲賞日本短編部門を受賞した。
レビュー要約
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民俗学とSFの組み合わせの切れ味、6篇それぞれの厚み、そして表題作の救済譚としての強さが支持されている。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 2020-08-20
- ページ数
- 320ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.6 x 1.2 x 15.7 cm
- ISBN-13
- 9784150314439
- ISBN-10
- 4150314438
- 価格
- 946 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
もしも荒廃した近未来アメリカに、 仏陀を信仰するインディアンが現れたら――未曾有の災害と暴動により大混乱に陥り、国民の多くが現実世界を見放したアメリカ大陸で、仏教を信じ続けたインディアンの青年が救済を語る書下ろし表題作のほか、VR世界で一生を過ごす少数民族を描く星雲賞受賞作「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」、『ヒト夜の永い夢』前日譚にして南方熊楠の英国留学物語の「一八九七年:龍動幕の内」など、民俗学とSFを鮮やかに交えた6篇を収録する、柴田勝家初の短篇集。解説:池澤春菜
SF作家。1987年東京生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。在学中の2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビュー。他の著作に『クロニスタ 戦争人類学者』『ヒト夜の永い夢』(ハヤカワ文庫JA)、《心霊科学捜査官》シリーズ(講談社タイガ)などがある。2018年、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」で第49回星雲賞日本短編部門受賞。戦国武将・柴田勝家を敬愛する。
レビュー
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56億7千万年の先にある灯火
表題作「アメリカン・ブッダ」が特に面白かったです。 あらゆる物質に満たされ人々は永遠に近い寿命を持てる仮想世界「Mアメリカ」という 人類が切望し続けてきた「天国」そのものに行ける世界のお話。 しかし、天国に行っても人間は苦しみ争い続ける。 例え愛する人がいて、可愛いペットがいて、理想の家族が側にいたとしても 例え宇宙の創造神になったとしても、人が人である限り苦しみの輪廻からは逃れられない。 なぜなら人間が救われる唯一の道とは天使になることでも神になることでもなく 人で居続けることだから。 なんだか不思議な読感でした。 救いがないようで救われたそんな気分ですね。 SFって本当にいいなって思いました。
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SF×仏教×ネイティブアメリカン
SF大好き、仏教も興味ある私にブッ刺さりました なぜ人間は輪廻転生するのか。 同じ過ちを繰り返すのか。 科学が急速に発展した未来のアメリカで起こった厄災から逃れるため、アメリカ人は仮想現実へ対比した 仮想現実では無限に生きることが可能で、苦しみはなく、家族を自由に生み出し、そして削除することが出来る そんな神のような存在になった人類だが、争いや諍いは絶えない 現実世界に生き残ったネイティブアメリカンが仏教を通して生き方を語りかける 神に近しいのに解脱できない人間に対して、悟りを開く者は何を語るのか とても素晴らしい本でした
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輪廻転生
久々にSFを読むときのドキドキワクワクを思い出しました。 子供の頃に夢中で読んだSF作家が現在に生まれ変わってきたようです。 SFという形式を通してひたすらに「世界を考えよう」という意思を感じられる短編集でした。 この読後感は小松左京先生の作品を読んだときに近く(地口も含めて)、長編も期待しています。
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解説が良い。
池澤さんの解説がよかった、特に先輩権限を持出すあたり。 6編中4編が既読で、未読の2編がとてもよかった。 未読の「邪義の壁」は壁のあちこちに塗り込みウワヌリされたモノの民俗学的ホラー風味な物語。 書下ろしの「アメリカン・ブッダ」はマインドフルネス瞑想からアメリカ仏教について民俗学的な物語かと思ったら違った。 ロバート・ライト「なぜ今、仏教なのか」も早川書房から出ているしね。 意識を仮想空間へアップロードした人々と残った人々の間の時間感覚の差は納得。 仮想空間側が衆生だったのか。
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ユニークで奇妙な味の短篇集
6つの短篇のうち表題作「アメリカン・ブッダ」が書き下ろしで、他は他誌・他媒体に発表済み。どの作 品もユニークなアイディアで奇妙な味を出している。 1.雲南省スー族におけるVR技術の使用例 一生VRの世界で過ごす部族の見ているものは何か?どんな景色なのか、我々の見ている世界と果たし て同じものなのか・・・。虚と実、自と他の違いとは?を奇妙な味付けで書いた作品。 2.鏡石異譚 タイムトラベルの謎を記憶子と関連付け、一人の女の子の成長の姿を描いたサスペンス風SF。私的に は少々難解だった。 3.邪義の壁 昔から増改築を繰り返してきた迷路のような主人公の実家。ある日白壁から白骨死体が発見された。 それからヒタヒタと忍びよる恐怖の予感にぞっとする。その背景も結末もまた不気味。 4.一八九七年:龍動幕の内 人間の言葉を解析し、人間の望む答えを提示するコンピュータ。レトロチックでスチームパンク風 の作品。 5.検疫官 人間の思想に影響を及ぼすもの即ち物語を病気とみなし、検疫する男の物語。発想がユニーク。 6.アメリカン・ブッダ 現実のアメリカから語りかけるミラクルマンと、仮想世界「Mアメリカ」の主人公との物語。著者の 意図したものと私の受けた印象と異なるのかも知れないが、以下述べてみます。欧米人の特質かキリ スト教の教義のせいなのか、理想の世界を謳ったはずなのに、分断の道へと・・・。現在のアメリカ への痛烈な皮肉に感じられる。仏陀について説明するミラクルマンが、日本人ではなくネイティブア メリカン(インディアン)であることも、ストーリーに一種のスパイスを効かせている。加えて、物 語全体から受ける雰囲気と、主人公の言動との対比から、分断の原因が垣間見える。 仏教の教義の様に、或いは仏像のアルカイックスマイルの心境こそが大切なのでは?
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仏陀(北米)
仏陀の教えをとくインディアン。何でやねんという話だが、そういう話である。聞いたことあるなぁという仏陀のエピソードをインディアンテイストで味付けする不思議なSF。 人は電子の海で生きたとしても、なにかを探す事を止められない、という事なんですかね。
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面白い
どの短編もよかったです。久々に小説を読んでいて楽しいと心から思えるひとときを過ごせました。 柴田勝家先生のこれからの作品にも期待します。
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こういう物語を語れる人がいたんだな。
「アメリカン・ブッダ」(柴田勝家)を読んだ。 『こういう物語を語れる人がいたんだな。』 それが読み終わって最初に思ったこと。 収録された六篇の中では「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」が出色である。 この先の柴田勝家氏の動向をウォッチしていきたい。 きっと何かやってくれそうだ。
関連する文学賞
- 星雲賞 第52回(2021年) ・受賞