テキスト9 (Jコレクション)
老物理学者サローベンと弟子カレンの旅が、超権力組織ムスビメの召喚状をきっかけに始まる。惑星ユーンから地球、さらに未知の惑星へと広がる、要約不能のスペースオペラ。
作品情報
召喚状ひとつで、宇宙の旅は予想外の方向へ転がりだす。
第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補作。惑星ユーンに暮らす老物理学者サローベンとその弟子カレンの旅は、超権力組織ムスビメの召喚状から始まる。地球や惑星タヴを含む広大な舞台を行き来しながら、超テクノロジーや未知の言語、奇妙な制度が次々に現れる、きわめて密度の高い長編SF。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 2014-01-24
- ページ数
- 448ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784152094346
- ISBN-10
- 4152094346
- 価格
- 2347 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/SF・ホラー・ファンタジー
この本には、およそ言語化しうるすべての謎の答えが、書かれている。――神林長平 惑星ユーンに暮らす老物理学者サローベンとその愛弟子カレンの壮大な旅路は、 超権力組織ムスビメ議会の召喚状から始まった。 議会の本拠地である地球を訪れたカレンは、 宇宙を脅かす超テクノロジーの設計図を盗んだ女の追跡を依頼される。 潜入先の惑星タヴで、カレンは未知の言語を操る猿に遭遇し―― 感情操作薬エンパシニック、謎の言葉トーラー、 囚人船ユーツナル号、知性進化系統樹、金融を可視化したスタッシュ…… その独創的すぎる内容で選考会でも物議を醸した、 世界の在り方を問い掛ける要約不能の超傑作。 第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補作
レビュー
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すごく論理的なSF
笑える語り口で、 独創的であり、 かつ不確かなものを不確かなまま厳密に検証しようとする姿勢が面白いぶっとんだ傑作SF。 第一回ハヤカワSFコンテストは「みずは無間」と「テキスト9」が集まった奇跡の回だ。 ぼくは、始め、どうせ、つまらないSFが入選したんだろうなあ、くらいに思っていた。 で、しぶしぶ買って読み始めた。 最初の頃は、まあまあ、面白いんじゃない? 程度だった。 だんだん、これは、ものすごく論理学に詳しい人が書いているのではないだろうか、と考えるようになり、 途中で、中村文則の「掏摸」より面白いと確信した。 だが、まだ読み終わらず、読んでいくうちに、 「あれ、これ、『みずは無間』より面白いんじゃね?」という気持ちが沸き起こり、 ついには「魍魎の匣」より面白いんじゃね、と思い始め、 とうとう、カントの「純粋理性批判」とどちらが哲学的か、という視点で検討すべき位置にあると結論づけた。 ぼくの読んだことのある日本語小説の中で、最も面白い本である。おすすめする。
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「いつもと違うSFが読みたい」と思う人が読むべきもの
大体の世界の神話の最初のほうにある創造神話を近代哲学で味付けして、それを安っぽいSF活劇を媒体としたような内容のメタSF。退屈な部分もわりと多いのだが、「これを読み終わるときっと『結構すごいものを読んだな』という気分になるだろう」という確信が読み進むモチベーションになり、そして実際にそういう気分になった(様な気がする)。そういう意味で、読者を巻き込んだ「SFを読む」という行為に対してのメタ的なパロディにもなっている。細かいギャグ、オマージュ、お約束ネタがちりばめられており、それがまたメタ的にも興味深いという構造も面白い。 普段SFを読まない人がこれを読んでも全然楽しめないだろうから、そういう人はこの本を買ってはいけない。「いつもと違うSFが読みたい」と思う人が読むべきものである。 これで安っぽいSF活劇の部分も普通に面白ければ娯楽作品としては星五つなのだが、そうするとメタSFとしての完成度が下がってしまうのだろう。
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SF好きというわけではないけれどこの作品の魅力にはやられました。
『普段SFを読まない人がこれを読んでも全然楽しめないだろうから、そういう人はこの本を買ってはいけない』という意見がここ以外のレビューでも散見されたけれど、普段SFを読まない僕は不思議なことに十分に楽しめた。というより、途中からはのめり込んでしまっていた。 あえて作風に対する向き不向きを語るのなら、『小説に文章力を求めたり、理路整然としたロジックを求める人』には向かない。『あるものをそのまま受け止める人』には向いていると僕は考える。 さて、前置きが長くなってしまったが、作品としては実によく練られている。途中途中に物語を都合よく進めるための説明不足な点はいくつもあったが、この作品に限っては語られている内容からして、全てを許容しようと思える。(理由は読めばわかる) それぞれの前後が微妙に折り重なっていて、読み進める内に少しずつ楽しくなってくるのも魅力的だ。 SFというのがこんなにも楽しいと感じたのは実に久しぶりである。 ただ心配なことが一つ。 5~6年くらい前に実によく似た作風でデビューした作者さんがいて、その作者さんの作品もラノベではあったけれどジャンル的にはSFで、世界の根幹に関するものだった。 ただ、最初にあまりにも壮大な物語を書いてしまったためなのか、その後に書いた作品がデビュー作に比べてあまりにも出来が悪く、現在消息不明なのである。 願わくば本作品の作者さんはそういうことにはならず、これからも魅力的な小説を世の中にたくさん出していって欲しいものである。
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仏教
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凄い。。。(軽いネタバレ注意)
我々が、この宇宙もしくは物理法則も違うあらゆる宇宙を含む、「世界」の「真実」を、 もし理解できたとしても、言語という限定的なツールでそれを記述し、相互理解することは、 不可能ではないか、そもそも単純な相互理解自体さえ不可能ではないか、という前提の元で、 その不可能性に敢えて挑戦してみたメタフィクションの一種として、僕はこの作品を大雑把かつ抽象的に捉えました。 作者のしていることは、相互理解を前提とした「真実という概念」への挑戦であり、「言語の限界」への挑戦であり、 この作品の存在を「トーラー(作中の語)」という一つの作品宇宙とでも呼べるものと仮定できるなら、 その外側で俯瞰しているはずの読者までをも巻き込んで、世界の本質、コミュニケーションの本質、認識の本質に迫ろうとする、 並々ならぬ気迫に満ちた、哲学的で独創的過ぎる超傑作に見えます。 僕が今まで沢山読んできたSF小説のなかでも(海外古典の巨匠作品も含む)1,2を争う超お気に入りの作品です。 独創的過ぎて読者を選ぶという理由で受賞を逃したのかもしれません。 僕の中では伊藤計劃さんを超えて、日本のSF小説ダントツのナンバーワンです。
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記述の奇術
面白かった。ノリのいい文体に、アクロバティックな展開。登場人物の間で交わされる翻訳あるいは解釈を主題に据えたディスカッション。どんどん読み進められる。 でも、のめり込めずに、ずっと一歩引いていたように思う。最大の原因は、中心となる世界観の存在を感じられなかったことだと思う。あるいは、自分の読解力の不足。色々と読み取ろうと思えば読み取れそうなんだけれど、深読みすればするほど肩透かしを食いそうな予感が心から離れなかった。
関連する文学賞
- ハヤカワSFコンテスト 第1回(2013年) ・最終候補