日本の文学賞

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一枚摺屋

松本清張賞

一枚摺屋

城野隆

幕末の大坂を舞台に、瓦版をめぐる父子の事件と真相を追う時代小説。

幕末大坂瓦版親子

作品情報

一枚の瓦版が、父の死の謎を呼び覚ます。

第12回松本清張賞受賞作。長州征伐前夜の大坂で、瓦版を手掛かりに真相へ迫る異色の時代小説。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
2005-06-01
ページ数
310ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784163242507
ISBN-10
4163242503
価格
200 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

第12回(2005年) 松本清張賞受賞

レビュー

  • 幕末の転換点を民衆の眼で

    主人公は第2次長州征伐の経過を江戸でスクープ報道する。 父親が大塩の乱に加わっていたことを没後に知る。 父親の仇を討つ話の部分は読み飛ばせばいい。 作者は「ええじゃないか」の乱舞を民衆の意識の目覚めとして 積極的に評価できるものと見ている。 欧米式の機械印刷による日本の新聞の草創についても描かれる。

  • 大坂の人情・風景を味わう

    「第12回松本清張賞」受賞作。 といってもミステリー色はほとんど無く、幕末の不穏で不安定な世情に絡んだ大坂の風景や人情が生き生きと描かれていた。

  • 面白いけど…

    面白いけど、全体に“軽い”というのが実感です。 一番の問題は、タイトルにもなっている「一枚摺」が、本文で実際に描かれないことです。当時の文体などを考えると、エンターテインメントの可読性が失われるかもしれませんが、実際の「記実」(記事)が文中にないのは、残念としか言いようがありません。 それと、主人公の仲間にもう少し陰翳があった方がいいのではないでしょうか。当時の大坂にある程度の「反幕府」的傾向があったことは理解できますが、それでも完全に一丸となって行動に突っ走るのは不自然です。裏切るまではいかなくても、一人ぐらい「動揺」するぐらいのことがあってもよかった気がします。 こういった点が“軽い”と感じさせる主因だと思います。

  • 都合良く話が進みすぎだと思うのですが

    東京一辺倒の時代劇の世界で、大坂を中心に据えて描いたのが成功しています。 しかも他の大坂が舞台の小説のように、町の説明臭がないのがいいです。 なのに辻売りの瓦版屋が幕末大坂の町を上手く案内してくれる。 それだけでも楽しかった。 ただ史実と違う点が若干あったと思います。これは時代小説にはつきもの難癖になってしまうかもしれないので、ここでは書きませんけど。 お話はご都合主義が目立ち、ミステリーとしても弱いです。 主人公を助ける人間が次々と登場したり、やたら強い主人公ってのもどうかと思います。 それでも読みやすく楽しかったのでこの評価。

  • 幕末の大阪を明るく描く

    第12回松本清張賞受賞作。 幕末、天領である大阪の町で、文太郎は戯作者としてそこそこ食べています。実家は草紙屋ですが、酒と女遊びがひどく、勘当された身。 ところが、父親の与兵衛は今まで家業よりも執着していた、一枚摺りといわれるかわら版への執着がなくなりつつあるという。奉行所にも目をつけられていた一枚摺りであるが、それはそれで文太郎は寂しさを感じます。 そんなとき、米屋の打ちこわし騒動があり、文太郎はそれを記実にして、店の定吉に持たせます。与兵衛はそれを一枚摺りにしたが、それが元で奉行所に捕縛され、厳しい責めを受け獄死。 文太郎が潜りの一枚摺り屋になり、父親の獄死の真実を暴くべく奔走します。 幕府と長州の戦いや、薩摩、土佐の動きなど幕末の動乱を、一枚摺りに書きとめながら、その一枚摺りを求める庶民や各藩の動きや心理状態をうまく描きます。新聞が人々の生活に根づいていった明治の幕開けを感じさせます。とても躍動感溢れる小説。 なんといっても文太郎がいい。腕は強く、心は優しく、けれど自分の知恵や知識の足りないところは周りの人々に素直に頭を下げる。いい男だねー。 幕末に流行った「ええじゃないか踊り」をうまく取り込み、明るい幕末小説です。

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