書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2013-08-23
- ページ数
- 125ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163825403
- ISBN-10
- 4163825401
- 価格
- 600 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
相撲好きの少年は、相撲記事となれば、小さな三面記事まで切り抜かずにはいられない。相撲中継に夢中で勉強は一切しない。自分の体格に見切りをつけ、行司の道を選んだ彼は、砂と汗にまみれたエキサイティングかつ単調な青春を送る――第149回芥川賞候補作。併録「乾燥腕」は第110回文学界新人賞受賞作。ひとり暮らしの若い男の、不快と、それと背中合わせの奇妙な悦びを描き、独特のおかしみを醸し出している。
レビュー
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思いがけない楽しみ
想像以上の面白さ。 鶴川健吉、恐るべし! もっとページをめくりたかった!
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人生
芥川賞候補に推挙された表題作と文學界新人賞を受賞した『乾燥肌』の二編。ハードボイルド風というのか、庄野潤三風というのか、内面描写のなく、外面の物質的な描写で終始してある。表題作は説明のいらぬ、そのままの相撲に関わる話であり、主人公は行司。経験を基にしたものらしい。それは同時収録されたものもだろう。独特の感性をもった方だとは思う。私はあまり好まないけれど。角界を扱ったものは今でも珍しいし、私が本著を購入した当時、真生るいす先生の『満員御礼』を読み、関心をもったからだったが、正直関心を満足させる気配のなさそうでもあり読まずにきてようよう目を通したものだったが。やはりインパクトというのか、引きこまれるもの、訴えてくるものが、私には感ぜられなかった。本著は2013年に上肢されたもので、その年以降作品を発表されていないらしい。現在ご存命であればまだ四十前半。まだまだお若いが、もう筆を折られたものか。担当編集者の実力であるのか、相性の悪さであるのか。さもあれ、これしかないという執念をおもちであれば続けられていたろうし、ふたたび筆をとられることだろう。あくまでも当人の問題であり、新人賞を受賞してそれっきりという方は少なくないわけだから。作品とは離れ、人生の一端をしみじみ思わされくもない。
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素直で好感が持てる
大傑作というタイプの小説ではないが、さくさくと、しかし芯のある筆の運び方で、まるでいい噺家のまくらを聴いているようでもある。 読んでいると、不図した拍子にほくそ笑んでいる自分に気付く。この筆者の顔が知りたいと思わせてくれるような作品だ。
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読みやすいが、まとまりすぎかな?
「すなまわり」は作者の実体験を元にしているのでしょうか? あまり、題材に選ばれないような内容で、興味を持って読みましたが、まとまりすぎている印象を受けました。もう少し、とんがった作風でも良かったのかも? 「乾燥腕」ですが、こちらはとんがった作風で、いかにも純文学らしいですね。ただ、賞を狙って書いているようにも感じられて、受賞作品はこんな感じで書くのでしょう、みたいな作者の思惑も透けて見えるのは、勘ぐりすぎでしょうか? それにしても、作者の経歴が異色で他の作品も読んでみたくなりました。作者の異色な経歴が、様々な作品に生きてくるといいですね。
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無駄のない描写
描写の無駄のなさに感心しました。 プロレスやボクシングともことなる相撲といった特殊な「スポーツ」には、このような描写が一番合っているように思います。 描写の無駄のなさがえてして淡白な作品になってしまっているうらみも多少あるかもしれませんが、 この作者の相撲にたいする理想像が見て取れてとてもよかったです。 文学界新人賞の作品の方は方で表題作より粗削りではありますが、より作家性がむきだしに見られて良かったです。 今後に期待です。
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いいと思う。
今回の芥川賞候補作の中では、一番良かったものである。ただ、相対的に一番良かったのであって、普通に私小説として書いたら良かったと思う。行司を21歳で辞めた人の書いたものを読む機会はめったにないので、貴重でもある。なお「ひが〜し〜、白鵬〜」とやるのは「呼び出し」、行司は、短く「かたや、白鵬、こなた、稀勢の里」とやる。軍配を返すというのは、右手に突き出した状態から、胸元へひきつけた状態になることを言い、これで時間いっぱいである。下のほうの行司は裸足である。 今後もがんばってほしい新人である、と思う。
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【優れた五感文学】マン毛が空を舞った。チン毛が床を滑った。(本文より)
表題「すなまわり」と、新人賞の「乾燥腕」の二編を収録。「すなまわり」は芥川賞候補作。 内容は、相撲好きの少年は力士になりたかったが、自分の体格に見切りをつけ、行司の道を選ぶ。行司でないと知り得ない、相撲界の裏や行司としての仕事などを、ユーモアのある文章で書いている。個人的に、足裏がひび割れ土俵の塩で沁みる描写(触覚)やシンクにへばりついた痰が排水口を流れる描写(視覚)、部屋の外で聞こえる騒音の描写(聴覚)、じじいの悪臭やぎんなんの匂いの描写(嗅覚)など、この作家は優れた五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の持ち主で、特に嗅覚に優れた作家のように思えた。力士の汚い尻の描写と風俗嬢との不条理な会話は面白かった。 作風は女性受けは悪いと思うが、当芥川賞受賞作よりも、数段面白い小説だと思えた。「すなまわり」の続編は可能で、再び芥川賞を狙うのもよかろうと思う……、文章はその域に達している。ただ、島田がいるから無理か……(笑)
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行司から見る相撲界
外界から眺めるだけの相撲界とは違い、細かな描写が興味深かったです。特に力士の仕草や体つきが。 話のエンターテインメントはあまりないと思います。小川洋子氏の評の通り、屈折もなければ成長もなく、関わる他者もない。淡々と、泥に埋れていくようなほど淡々と、過ごしている様子でした。 面白いか面白くないか、面白くはないです。相撲界に興味がなければ読まれない作品だろうと思います。
関連する文学賞
- 文學界新人賞 第110回(2010年) ・受賞