作品情報
ガリレオの迷宮は、受賞作として読まれるにふさわしい特色を持つ作品です。
ガリレオの自然観と数学的記述をめぐる問題を、科学史と思想史の両面からたどる大部の研究書です。
レビュー要約
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作品の素材と文体の個性が評価され、読後に残る余韻や構成への関心を集めている。
書籍情報
- 出版社
- 共立出版
- 発売日
- 2006-05-26
- ページ数
- 542ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784320005693
- ISBN-10
- 4320005694
- 価格
- 9900 JPY
- カテゴリ
- 本/ノンフィクション/科学/科学史・科学者
本書は、ガリレオ手稿72(『ガリレオ全集』に未収録の写本を含む)を、まったく新たな視点から徹底的に分析し、ガリレオの運動論形成過程について通説を覆す新説を提出した。 今日、「数理物理学」において自明視されている自然観や科学方法論がガリレオにおいてはじめて立ち現れてくる場面を詳しく分析した。「自然は数学の言語で書かれている」とのガリレオの名言の背後には「数学」と「自然学」の二つの学問を統合するという理念上の困難が隠れている。その困難を克服する歩みは、迷宮での彷徨になぞらえられる。 ◆第60回毎日出版文化賞受賞(自然科学部門)◆ 《選評》 村上陽一郎氏(第60回選考委員:国際基督教大学教授) (2006年11月3日 毎日新聞朝刊より引用) ◇手探りの過程 丹念に ガリレオは近代科学者として理解されることが多い。確かに彼の提唱したアイデアのいくつかは、後の物理学の考え方に連なる。しかし彼の頭脳が先人と全く異なる近代科学的なそれに切り替わっていたわけではなく、手探りの迷路を歩むが如き試行錯誤のなかで、時に科学的に見ての正解に辿りつき、時に過ちに陥ったりしていた事情を、丹念な文献の分析から明らかにした労作が本書である。 文献と一言で書いてしまったが、一応定本とされる「全集」がイタリアで編まれた際に、位置づけが不詳だったために、収録されなかったり、不完全な形でしか取り込まれなかったりした手稿がかなり残ってきた。それらに先鞭を付けた研究者も勿論すでにいるが、著者はそうした先行研究を批判的に継承しながら、独自の解釈を本書で打ち立てる。その意味で、本書の成果は文字通り国際的な性格のものである。こうした篤実な研究が生まれたことを、心から喜ぶと同時に、この困難な出版事情下にあって、本書のような書物に刊行の機会を与えられた書肆にも拍手を送りたい。
レビュー
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ガリレオ自身が生み出した迷宮と近代科学の迷宮
本書は迷宮というキーワードが、何重にも伏線として張られています。 まずは、ガリレオ自身が言う、自然という書物は数学の言葉で書かれており、数学の言葉を持っていなければ、暗い迷宮をさまようことになる、という迷宮。 そして、本書の中核である、ガリレオ自身が囚われ、さまよっていた数学と自然を結び付けようとした結果さまようことになった、ガリレオ自身が生み出した迷宮。 そして最後に、ガリレオ以降の近代科学が囚われ続けている迷宮。 ガリレオの思考プロセスを非常に詳細に描くと同時に、筆者の考えが詰まった素晴らしい本だと思います。 ガリレオの有名な言葉、「自然という書物は数学の言葉で書かれている」というセリフは、従来の科学からすれば根拠のない一歩を踏み出したという部分は、教科書という権威を覚えることしかしなかった人々にとって、科学の見方が変わるエピソードなのではないでしょうか。 分厚い本なのですが、ガリレオの研究をする方も、一般の人にもきっと面白い本だと思います。
関連する文学賞
- 毎日出版文化賞 第60回(2006年) ・受賞