日本の文学賞

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ヘパイストスの侍女

ばらのまち福山ミステリー文学新人賞

ヘパイストスの侍女

白木健嗣

自動運転車の事故と社内権力の歪みを軸に、AI捜査を導入したミステリー。

作品情報

サイバー犯罪と組織の不正が絡み合い、現代的な事件像を立ち上げる。

書籍情報

出版社
光文社
発売日
2022-03-15
ページ数
288ページ
言語
日本語
サイズ
12.9 x 1.9 x 18.8 cm
ISBN-13
9784334914547
ISBN-10
4334914543
価格
2121 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

自動運転車の不可解な死亡事故。全知全能の彼女は、人間の悪意をあぶり出せるのかーー最先端テクノロジー×濃密な企業小説×洗練の警察ミステリ! 第14回島田荘司選ばらの町福山ミステリー文学新人賞受賞作!

レビュー

  • 大傑作

    まず読者は、冒頭からこれでもかと頻出し続けるIT用語に圧倒されるだろう。一つの文章に一つか二つのカタカナ(あるいは英語そのままの)IT用語が登場すると言えるほどの頻度だ。その意味は逐一説明されることもなく、淡々と進んでいってしまう。しかし、心配はいらない。前後の文脈から文章全体の意味するところは理解可能であり、ITに関して全く門外漢の私でも、読みづらいということはなかった。むしろ、日常生活とは違う世界に紛れ込んでいるという、ワクワク感が楽しめる。このIT用語の氾濫が何と全体の8割がたまで延々と続くのである。その間、IT関連以外は、タイヤが空を飛んだ某自動車会社を想起させるパワハラ体質の話だけである。巻末が近づいたあたりで、ふと思ってしまう。これらのIT用語は、自動車会社本社あるいは自動運転車へのサイバー攻撃が「できないこと」と、AIについての説明のために、ずっと費やされてきており、であるならば、文献あるいはIT会社社員向けの基礎教育の中で(作者の白木氏はIT会社勤務)触れられていることなのではないか? 某自動車会社の話は書店でもすぐに手に入る程度の情報であり、結局この本は手に入る情報のコピペを、延々と続けているに過ぎないのではないか? 作者自身の頭で独創的に考えた「小説」の部分がほとんどないまま、終わってしまうのではないか? しかし、解決編に入ってそんな危惧は、完全に払拭される。怒涛のような伏線の回収が始まるのだ。IT用語の氾濫の中に伏線が隠されていた! しかも沢山。ITを利用したトリック(最近のミステリでは、トリックをほとんど見なくなってしまったが、この作品には、トリックもある! しかも独創的で魅力的な。)にも、さりげなく伏線が用意されていたので、納得性が高い。思わず膝をたたき、唸り声をあげてしまったほどだ。そしてラストの心憎いまでの「小説」としての余韻。AIの限界と将来についての作者の考察が、そのまま地の文で説明されるのではなく、ITと真逆の雰囲気をまとう和歌(これも、前のほうで伏線として登場している。)を使い「小説」として、明らかにする。これは5つ星でも足りないくらいの完璧な大傑作である。あまりにも完璧で、高すぎる壁になってしまうので、ミステリ作家志望の人には罪深い作品である。

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