作品情報
『東京新大橋雨中図』は、短い題名の奥に人物、時代、土地の気配を重ねる作品です。
新人物往来社刊行の『東京新大橋雨中図』に収められた作品です。『東京新大橋雨中図』は杉本章子による、人物の記憶や関係の揺らぎを通じて、時代や人生の陰影を描く作品です。受賞作として、題名が示す主題を軸に、読後に残る余韻を重んじた一作として位置づけられます。
書籍情報
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 1988-11-01
- ページ数
- 314ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784404015839
- ISBN-10
- 4404015836
- 価格
- 58 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
第100回(昭和63年度下半期) 直木賞受賞
レビュー
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絵描きは是非一読を
時代考証はもとより作家と画商の関係性や絵を描くという作業の精神性にまで鋭く切り込む姿勢には感服させられる。少なくとも絵を描く人達には是非とも読んで欲しい一冊。
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維新の負け組の視点から描かれる明治の姿
最後の浮世絵師と呼ばれた小林清親が主人公だが、この人物造形が素晴らしい。 明治維新前後を描いた小説は星の数ほどあるが、 新政府の大立者ではなく、 旧幕臣を主人公にしたのが、まず渋い。 六尺という大男だが、気持ちが純で不器用。 負けの感情を抱き、生活も厳しい清親は幼いころから好きだった絵で身を立てようとするのだが、 才能の自覚を持って自信満々で勝負するわけではない。 ひとことで言えば優柔不断。 でも、才能を見出される。 維新の負け組の視点から描かれる明治の姿がいい。 光線画で評価されるが制作コストの安い石版画にシフトしていく版元。 明治の時代からメディアの栄枯盛衰はめまぐるしいわけだ。 ラストのほのぼした後味の良さまで、 全編、気持ちよく堪能させてくれるいい小説だ。
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GOOD
GOOD
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幕末の混乱期を生き抜く人々の姿が胸をうつ一冊
幕末から明治期の混乱の時代を、絵筆を糧に、自分の人生を切り開いていった男の物語です。主人公の小林清親は、私は知りませんでしたが、実在の、明治初期に活躍した画家です。画家というと破天荒な人生というイメージですが、清親の生き方はいたって真面目で地道。そんな清親の人生を、無駄のない文章で淡々と書き進めながらも、人の優しさ、思いやり、温かさがしみじみと漂う作品となっており秀作だと思います。 幕末から明治にかけての時代。この時代でなければ平穏に平和に一生を終えたであろう多くの人々。たくましく生き抜いていく人あり、時代に翻弄されて荒波に沈む人あり。そんな人々が今の日本の礎を築いたんだということを、改めて感じる一冊でもありました。
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江戸から東京に変わった時代の絵師、小林清親の物語。短編4話
直木賞】解説:田辺聖子。江戸から東京に変わった時代の絵師、小林清親の物語。短編4話。新橋ステンション夕景、東京新橋雨中図、根津神社秋色、浅草寺年乃市。最初は伏線としてだけ絵が出てきて、幕末から明治の動きの中で生きている人を描写。人物を描いてから、芸術を題材にした物語を書く。東京の地理に詳しくなければ地図を見ながら、距離を掴みながら読むのも一興。サンジョルジュの日に読んだ本の感想をあなたに。
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版画を鑑賞しながらの読書。良き時代ですね~~~
年末の本棚整理で未読の文庫本「東京新大橋雨中図」を発見。年末休みに読んでみた。 徳川幕府が倒れ、新政府となった時代の侍の生き方の物語。ある意味、転職とその人生 の機微を描いているのだが、江戸と東京が交錯する時代背景と江戸の人情が心に沁みる。 主人公「小林清親」に対する前知識が全くなく、途中まで実在の絵師なのか、フィクション 上の人物か?分からず読んでいたが、それでも引き込まれた。 途中、Wikipediaで彼の版画「猫と提灯」「東京新大橋雨中図」、光線画、ポンチ画を 鑑賞しながら、本作品が読めた事が最高に嬉しく、臨場感が強まった。 個人的には、ラスト「早く、告白しろよ~!」と叫んでしまいましたが、 めでたし、めでたし、で良かったです。
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なるほど「猫板」ねえ。
単なる絵師の物語ではなく、佐幕派側の人間が維新後苦労を重ねながら何とか生きていったという観点から描かれていて、それが小林清親という才能と成功と結びつくことで、話としては面白いのは間違いない。誰も意外と注目しなかった部分で目の付け所が素晴らしかったといえよう。最も、維新後の鉄道、新橋ステイションといった文明開化やビールやワインの普及等人々の風俗の変化を巧みにとらえて表現していることや、同時に江戸の名残を感じさせる表現、知識を随所にちりばめていることが話に奥行きを与えてるのは作者の力量だと思う。猫板にワインを注いだ湯呑をおいたなんて、ちょっと良いよね。