作品情報
円周率へ挑む和算家たちの知的な熱を、時代小説の情感で描く。
江戸中期の和算家を描いた短編集。表題作は円周率の公式を明らかにしようとする建部賢弘の苦闘を扱い、ほかにも江戸の数学者たちの数奇な人生を情感豊かに描く。のちに文庫化され、『和算の侍』としても読まれている。
レビュー要約
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数学史への関心と小説としての読みやすさが両立しており、専門的な題材を人物の苦闘として読ませる点が評価されている。
書籍情報
- 出版社
- 新人物往来社
- 発売日
- 2009-05-11
- ページ数
- 384ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.6 x 1.7 x 15 cm
- ISBN-13
- 9784404037039
- ISBN-10
- 4404037031
- 価格
- 48 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
鎖国下の江戸時代、日本でも全く独自の方法で円周率の計算に躍起になった男たちがいた――算聖とうたわれた師関孝和との葛藤を経つつ、ついに円周率の公式を明らかにした天才算術家建部賢弘の苦闘の生涯……。 歴史文学賞受賞・日本数学会出版賞受賞の表題作「円周率を計算した男」、大酒飲みの奇才算術家に振り回される平野忠兵衛夫婦の大晦日の夜を描いた「初夢」ほか、「空出」「算子塚」「風狂算法」「やぶつばきの降り敷く」の六篇を収録。 和算の世界に材をとって、時代小説に新たな視点を提起した話題作、ついに文庫で登場。
レビュー
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楽しめます
江戸時代の和算家を小説仕立てで紹介する内容です。 ”江戸の天才数学者: 世界を驚かせた和算家たち (新潮選書)” の小説版ともいえます。 数学者が堅苦しい人や奇人変人ばかりというわけではなく、 普通に恋をし、普通に生活を考え、 ある時には心を通じることができ、 ある時にはかたくなさを変えることができずにお互いに不幸になる、 そうした生き様を自然に描いている好著だと思います。 短編集でとっつきやすいのも良さですね。 普通の江戸人情物であることでも、読みやすくなっていますが、 和算家がどう素晴らしいかという数学好きの興味に対しては やや物足りない点があるのも事実。 まぁ、そこまで求めてしまっては贅沢なのでしょう。 充分お勧めできます。
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「数学=美」を極めようとした男達の一徹な人生
関孝和から始まる江戸時代の和算の歴史を題材にして、滋味豊かな人間模様を描いた短編集。何より、「数学=美」と言う点を作者が理解しているのが嬉しい。 この美を頑固なまでに追求したのが、「円周率を計算した男」の建部賢弘であり、「算子塚」の会田安明である。私は円周率を求めたのも関孝和だと思い込んでいた(帰納的には求めた)が、円周率を計算するオイラー式を求めたのは建部だったのだ。こうした知識を作者は多く提供してくれる。しかも、「算術を実学(歴法)に生かせ」と言う師孝和の言葉に反発するように、飽くまで円理に拘った建部の人生が見事に描き出されている。そして、和算と言うのは、関孝和を始祖として、江戸時代、幅広い層に広まった事が良く書き込まれいる。「空出」における久留米藩主(!)も算術書を出版しているのだ。また、算術一辺倒ではなく、「初夢」では、老境を迎え、銀座役人としての任務と算術の追求との板挟みに会う主人公を登場させ、糟糠の妻との心温まる愛情物語を映し出している。「算子塚」の一徹者会田は最上流の始祖だが、新しい流派を興したのも関流が閉鎖的だったからとの由。いつの世も人は派閥を作り、争う。本作は関流の藤田貞資等と会田の意地の張り合いが見所だが、お互い驚く数の著書を書く。その序文で相手を痛罵する様は人間臭さを感じさせる。全ての著作をフォローしている作者の調査も立派。そして、全編を貫く苦い友情物語と秘恋が胸を打つ。「風狂算法」は後に遊歴算家となる主人公の姿を松尾芭蕉に重ねた風雅な作品を狙ったものだが、色付けを狙った恋愛模様が裏目に出た感じ。 各編は時代順に配置され、和算の歴史が辿れると共に、ある編での主要登場人物が後続の編でも顔を出す等、まさに数学的緻密さで構成された珠玉の連作短編集。
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評伝とは違いました。歴史文学です!
沖方丁の天地明察を読み、和算が面白いと思い、手に取った書物です。 てっきり、建部賢弘の長編と思い込んでいましたが、表題作を含む短編集でした。 また、理系の著者ですので、和算で業績に関する評伝をイメージしていましたが、城山三郎の経済小説のように、ある種、文学の要素が強い文学的作品でしたので、この面でも、意外でした。 同じ著者の「算聖伝―関孝和の生涯」を読み、面白かったので、次は、「江戸の天才数学者」を読んでみたいと思いました。 (357)
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円周率を計算した男
数学は西洋だけのものと思っていました。 和の世界を感じる数学が、とても興味をそそります。
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2つの夢を求めた人たち
いずれの短編も面白い。 遙か遠い夢 和算を夢見て一歩一歩歩みながら、すぐ隣にいながらたどり着けない夢 女性を思い続けるもう一つの歩み。いずれの主人公も二つの夢をたどっているように感じる。 どの短編も、味わい深く、日本の歴史、日本の数学史を素材に、従来埋もれていた人々の思いを掘り起こしている。数学ファンとして、こんな小説が出来たことにうれしくなった。数学が西洋の専売特許ばかりでないことにも驚いた。同じ著者の他の本も読んでみたい。 おすすめ。
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珍しい本です。
江戸時代の和算に関する文化的背景が、良く理解できた。現代文で気軽に読むことが出来るのがよい。
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計算された楽しみがあります
実は以前に単行本で読みましたが,今回文庫で再度楽しみました.私はエンジニアなので和算の解説としても楽しく読めました.おそらく著者も調査や執筆の過程で和算そのものもかなり深く勉強したものと思います.そうした努力が伺えるような,真面目な書きっぷりに好感が持てます.なお著者の他の作品では,怒涛逆巻くも(上下)が好きですね.海外に出て世界を知りそこで得た知識を発展させていく,まさにわが国技術者の原点があるような気がします.
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題名で損しているかも?
まあ、題名に惹かれて購入した訳ですが、もっと読みづらい ものかと覚悟していたら、意外にも読みやすくて、 普通の時代物として読んでも、充分満足できる内容のものでした。 短編なのですらすらと読めます。 題名で、読者の幅が狭まっているかも、と思い、ややもったいない 感じがします。 関孝和を始めとする、和算に携わった人々の和算に対する思い、 その周りの人々の描写など、とても表現豊かに綴っています。 読み終わって清々しい気持ちになれます。 今の小学生は円周率≒3としか教わっていないとか・・・。 興味を持って勉強ができる環境を提供しているのかやや疑問です。
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