日本の文学賞

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女性たちの保守運動: 右傾化する日本社会のジェンダー

大佛次郎論壇賞

女性たちの保守運動: 右傾化する日本社会のジェンダー

鈴木彩加

保守運動に参加する女性たちの姿から、右傾化する日本社会のジェンダー構造を読み解く社会学書。家族、性差、政治意識が交差する複雑さを追う。

ジェンダー保守運動社会学右傾化日本社会

作品情報

保守を支える女性たちの複雑な現実を読む。

人文書院刊の社会学研究書で、第20回大佛次郎論壇賞受賞作。女性による保守運動を、家族言説や慰安婦問題、男女共同参画反対運動などの具体例から分析し、右傾化する日本社会のなかで生じるアンビバレンスを描き出す。

レビュー要約

  • 保守運動の内部にある断層を、女性参加者の動機や経験から丁寧に浮かび上がらせている点が評価されている。

書籍情報

出版社
人文書院
発売日
2019-12-27
ページ数
342ページ
言語
日本語
サイズ
13.4 x 19.2 x 3 cm
ISBN-13
9784409241288
ISBN-10
4409241281
価格
4950 JPY
カテゴリ
本/人文・思想/女性学/ジェンダー

第20回大佛次郎論壇賞受賞! 「家族」「性差」を強調する保守に、その社会的抑圧を経験した女性が、なぜ合流するのか。本書はその実態に、戦後の保守運動史、現代フェミニズム理論、保守派の言説分析、保守団体へのフィールドワークという四つの視点から迫ってゆく。女性による保守運動に内在するアンビバレンスを明らかにし、ジェンダー論にも新たな視角をもたらす社会学研究の力作。

鈴木 彩加(すずき・あやか) 1985年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科招へい研究員。主な著書に、“Uncustomary Sisterhood: Feminist Research in Japanese Conservative Movements"(Toscano, Emanuele, ed., 2019, Researching Far-Right Movements: Ethics, Methodologies, and Qualitative Inquiries, Routledge.)、「国を感じる」(入戸野宏編『シリーズ人間科学3 感じる』大阪大学出版会)ほか。2020年『女性たちの保守運動』にて第20回大佛次郎論壇賞受賞。

レビュー

  • まだモヤモヤ感は残る

    近年、自民党や維新の会を中心とした女性議員や、女性の「ネット右翼」たちが同性のリベラル発言を強烈に批判する言動が目立つようになり、モヤモヤ感が募っていたところに出た研究本で興味深く読みました。 右派の言論というのは反共的なものや天皇に関するもの、軍事的なもの、家族観的なものが大半ですが、本書はそのうちの家族観に焦点を当て、特に従軍慰安婦を巡る言論活動について深く考察しています。大ざっぱに言えば女性がなんで性被害者の女性を攻撃するのか、という疑問点から出発しています。 いくつかの文献調査や動画分析、フィールドワークを経て著者の出したいちおうの結論は「嫉妬」と私は読みましたが、実際に行われている言論攻撃の様子を見ると、どうしてもそれ以外にも権力への「媚び」もあるように見えてなりません。「忖度」と言っても良いでしょう。すなわち、最高権力者が変節すれば右派論壇もあっさりと転向するのではないかという雰囲気があります。できれば政権の中枢にいて分かりやすい反共攻撃を行っている人物、例えば高市早苗氏や稲田朋美氏などのインタビューも欲しかったです。 またフィールドワークのサンプル数が少なすぎる印象です。松山市の事例では23名、「行動する保守」女性団体では約20名となっていて、個々人の思想的背景分析にもう少し踏み込んで欲しい印象でした。なかなか難しいところですが、このへんはジャーナリストならかなり深くまでその人となりを分析するのではないかと思います。 学位論文が主体となっている大書のわりには読みやすい文体で構成もよくできています。文章はジャーナリストのような明瞭さがあります。反動の空気が増す中でこうした本を出す勇気も素晴らしい。さらなる著作を期待します。

  • 保守フェミの出どころ

    科研費バッシングや「生産性がない」発言など、支持される感触があるからそうするのだろうと思ったりしていました。この文献は、だろうよりもさらに進んで、何故そのような発言が出てくるのかを論理的、実証的に解明する緻密さがあります。一人で読むより、サークルや研究会のテキストとした方が、根気強く読めると思います。それくらいの力作です。

  • 日本における保守運動の黄昏

    本書出版は、保守運動がピークを迎えたかに見えた第二次安倍政権の時代である。 改めて今、本書を読むと、日本の保守運動は曲がり角に差し掛かり、衰退しつつあるのではないかという感想を抱く。ジェンダーの視点から日本の保守運動の中に潜む大きな亀裂を明らかにして見せるからである。 本書で主に取り上げられるのは男女共同参画反対運動と慰安婦問題で、前史として日本遺族会から日本会議へと至る日本の保守運動の系譜を丁寧に追う。 男女共同参画反対はそれまでの運動の延長線上にあり、男女の役割分担を前提とする家族観に基づいていて、LGBTは当然のように論外の存在だが、それは「逃げ恥」の大ヒットでわかる通り、日本社会の中核を担う現役世代の感覚からは大きくズレている。生涯未婚率は上がり続け、自民党の中にさえ選択的男女別姓を推進する勢力がある時代なのだ。 一方、慰安婦問題は、本書にある通り、真っ当で地道な運動を続けてきた日本会議等ではなく、ヘイト諸団体がヘゲモニーを握り、ヘイトスピーチ解消法と関連条例で活動が大きく制限されることになる。 東京オリンピックのテーマは「多様性と調和」であり、開会式では、八村塁選手が日本選手団の旗手を務め、大坂なおみ選手が最終聖火ランナーとして登場、セレモニー全体で多様性を高らかに謳い上げた。 そのオリンピックを前にして、「多様性と調和」を汚すかのような言動をした者は、尽く世論の厳しい指弾を浴び、運営の場から叩き出される事態となった。 保守運動が立ち帰るべきとする大日本帝国憲法の時代は、戊辰戦争という内戦と欧米列強に対抗した急速な近代化がもたらした、それまでの日本の歴史や伝統からは隔絶した時代で、施行から惨憺たる敗戦による終結までたった55年しか続かなかった。対して日本国憲法は施行から今年で既に74年、その間、日本はかつてない大きな成功を収めることになった。 戦前、戦中を知る世代の多くは鬼籍に入り、フィクションである”創られた伝統”に立ち帰れと言われても、もはや人は動かないであろう。 保守運動が日本社会の現実に置き去りにされてしまったのは、ある意味当然かもしれない。

  • 起きたことの網羅

    女性の保守活動を網羅している。研究者なら重宝するのだろうが、一般読者なら、「著者はそこから何を導き出す?」というところがぼやけているので面白くないと感じるだろう。 著者はフェミニズム・リベラル方に位置する人だろうと想像した。それにしたら、記述は客観的で冷静であり悪くはないなと思った。 しかし、活動家たちの内面分析も、社会への効果の測定も不十分であり、読んでも勉強にならないと思った。 バリバリのフェミニストが書いた本は、間違いだらけにしても、その間違いの有り様を観察するという意味では有意義だ。この本には、その辺のポイントが弱いと感じた。

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