日本の文学賞

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ピコラエヴィッチ紙幣―日本人が発行したルーブル札の謎

城山三郎経済小説大賞

ピコラエヴィッチ紙幣―日本人が発行したルーブル札の謎

熊谷敬太郎

極東ロシアの町で日本人商会が発行したルーブル札をめぐる経済小説。地域に浸透した私的通貨が、漁業不振と革命の波の中で悲劇へ向かう。

経済小説通貨ロシア極東歴史

作品情報

一枚の紙幣から、通貨とは何か、経済とは何かが問われていく。

熊谷敬太郎による歴史経済小説。日本人が異国で築いた信用の仕組みと、それを押し流す政治と市場の変動を描く。

レビュー要約

  • 実在感のある題材を通して、通貨と信用の意味を物語として読ませる点が評価されている。

書籍情報

出版社
ダイヤモンド社
発売日
2009-10-01
ページ数
334ページ
言語
日本語
サイズ
13.8 x 2.7 x 19.6 cm
ISBN-13
9784478011270
ISBN-10
4478011273
価格
2840 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

島田商会が極東ロシアの小都市で発行していた紙幣「ピコラエヴィッチ」は人々から歓迎され、ロシア人社会に深く浸透していた。しかし、永遠にも続くように思われたそのシステムは、当地の鮭鱒漁の不漁と共産革命の嵐によって大きな悲劇へと発展する。「通貨とは何か?」「経済とは何か?」を問う問題作。

レビュー

  • 傑作

    結末が分かっているのにここまで読ませる作者の力量に感服。 史実としては日本人にほとんど知られていない北方事情なので、この本を機に関心を持つ人が増える事を願います。

  • 誰も教えてくれなかった事実

    ロシアで日本人の顔が印刷された紙幣が 一部とはいえ流通して、ルーブル札より信用されていた。 そんなことは学校では教えてくれなかった。また、そのニコラエフスクという街で 日本人が惨殺された事件があったことも知らなかった。

  • 知られざる史実をベースにした歴史経済小説

    「日本人が発行したルーブル札の謎」という副題と、第2回城山三郎経済小説大賞受賞作ということで、経済史をベースにした小説だと思ったのですが、その色合いよりも知られざる戦争史実を扱った歴史小説といった趣が強く感じられました。 巻末に書かれていますが、ピコラエヴィッチ紙幣とは、ニコラエフスク・ナ・アムーレ (尼港)にあった島田商会が発行した商品券というべき性格の島田商会札のことでした。 当地で幅広く交易をおこなっていた実在の島田商会の果たした役割の中にこの聞き慣れぬ紙幣があったわけです。日中戦時中の軍票は知っていましたが、民間会社が発行した地域通貨なんてほとんど知られていないことが、題材としての面白さにつながり、本書の価値を上げているでしょう。 1920年におこった尼港事件は教科書で少し習うくらいで、日本人にとって馴染みのない事件ですが、ロシア革命後の混乱の中でおきた実に残虐な史実を元に本書は構成してありました。 フィクションとしていますし、登場人物も架空の人物を登場させていますが、しっかりとした調査により、ノンフィクションを読んでいるような気分にさせられました。 主人公とでも言うべき黒川収蔵とオリガのロマンスは本書の構成に大きく関わっていたわけで、ラストの意外な展開がまた読者を惹きこむ要素になり得たでしょう。 中間部はリアリティを加味させようとするあまり、少し展開が遅くなるきらいがありましたが、後半の100ページ以上にわたる戦闘シーンはテンポも良く、グイグイと読者を引っ張って行きます。臨場感あふれる描写はまさしく小説の醍醐味を伝えるものでした。このあたりの文章はとても力を感じさせるものでした。 熊谷 敬太郎さんは、本書で小説デビューを果たしました。63歳とのこと。別の職業を持ってこられたわけですが、この遅咲きの作家の次の作品を楽しみにしています。

  • 富とは何かを考えさせられる

    貨幣とは、財とは、富とは、発展とは、何か、を考えさせられる一冊でした。 「貨幣」はつまるところ、経済を生活を掌握する代名詞であり、象徴的な存在でもあります。必要とされるシステムであるがゆえにモンスターのように作り手の手を離れ、浸透しては成功と挫折をもたらすもの。物理的な貨幣の流通の裏には、人間の感情が折り重なって人々の生活に深く関わってくる。貨幣構造といういわば経済の根幹について、合理的・実用的というだけでは解決できない、人々のアイデンティティという問題が大きく関わっていることを改めて感じた一冊でした。 一般的な経済小説というよりも社会・経済の本質を問うような、珍しい切り口の一冊です。

  • テーマは斬新だが内容がくどい

    テーマが斬新なので、最初の100ページくらいは興味を持って読みました。しかし、そこから先は、くどくて素人っぽい文章に疲れて楽しめませんでした。

  • 歴史観が抜け落ちた駄作。

    傀儡政権樹立と領土的野心をむき出しにした日本帝国主義のシベリアへの軍事侵略を一顧だにしない「日本人ってすごい」的駄作。小説としても平板で、佐高・幸田ら城山賞選者の歴史眼が問われる。

  • 凄い

    これは凄い小説である。小説ではあるが、歴史的事実を踏まえフィクションらしからぬ臨場感をもってすべてが語られる。開巻劈頭から最後の「了」の文字の1行前まで、読む者を引き込んで離さない。筆者の処女作だというが、ごくごく一部の些細な表現を別にすれば、すばらしい第一級の作品だ。とても初めて世に問うたものとは思えない。 朝日新聞の平成22年5月13日付け夕刊「あのルーブル札を追え」で紹介された眼科医・竹谷ピニロピ医師が、この著者の目の難病を13年かかって癒してくれなかったらこの作品がこんにち存在しえないであろうことも、まるもう一つの物語のようである。

  • こんな歴史もあったのだ

    今年(まだ一月を残す)読んだ本の中で一番面白かった小説だ。 作者はフィクションと言っているが、限りなくノンフィクション に近い社会派ストーリーである。まずタイトルに目を奪われて 金融小説の類と想像してしまうが、それは違う。 日清、日露の両戦争を勝ち抜いて、欧米先進国の仲間入りをした と錯覚した、日本は第一次世界大戦にも巻き込まれて行く。戦勝 によって得られた北方利権を求めて樺太やシベリヤ方面への民間人 の進出も活発化し、苦難を経て成功する人達も現出する。この物語は その一例だ。以前に読んだ石原 慎太郎現東京都知事の一家を描いた 「てっぺん野郎」に出てくる知事の父君の樺太貿易の話を思い出させる。 舞台は極寒のシベリヤへの海からの入口ニコライエフスク港、時は 1920年、進行中のロシア革命で、東へ東へと解放を旗印にボルシェビキ は進む。そして起こったのがあの悲劇のニコライエフスク事件であった。 3月から5月のたった三か月間で日本駐屯軍、日本人居留民、大多数の 反労農と見なされた住民達はボルシェビキに虐殺され街は焼野原と化して しまう。主人公は印刷工、インフレで無価値となったルーブルに替わって この街の経済を支える独自紙幣を製作しに派遣された。36歳の彼に振り かかる試練、革命の名のもとに行われる不条理な虐殺、シベリヤの厳しい 大自然、美しくもけなげなロシアの美少女との恋、大志とは裏腹に住民達 から降りかかる怨嗟の攻撃が展開されて行く。 こんな歴史もあったのだ、と思わせる逸品だ。 -

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