日本の文学賞

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巷談本牧亭 (ちくま文庫 あ 14-2)

直木三十五賞

巷談本牧亭 (ちくま文庫 あ 14-2)

安藤鶴夫

上野の講談席・本牧亭を舞台に、講談師、落語家、常連客、女主人らの人間模様を描く連作的な小説。すたれゆく寄席芸への愛惜と、下町に生きる人々の哀歓が重なる。

講談寄席下町人情芸人

作品情報

小さな講談席に集う人びとの声が、消えゆく芸と下町の記憶をつなぎとめる。

安藤鶴夫の第50回直木賞受賞作。筑摩書房公式ページで、ちくま文庫版 ISBN 9784480026088、ISBN-10 4480026088、368ページを確認した。河出文庫版にも ISBN 9784309409382 があるが、ここでは確認済みの筑摩書房版を採用した。

レビュー要約

  • 芸人と客席の距離が近い世界を、哀愁を帯びた人間模様として描く点が魅力になっている。寄席文化への深い愛着が作品全体を支えている。

書籍情報

出版社
筑摩書房
発売日
1992-03-01
ページ数
366ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784480026088
ISBN-10
4480026088
価格
711 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第50回(昭和38年度下半期) 直木賞受賞

レビュー

  • 昭和文学の名作である!

    著者の安藤鶴夫は僕が生まれるだいぶ前に亡くなった人である。 安藤鶴夫という名前は知っていたが、どういう人だったかは何も知らない状態で本書を読み始めたのだがすぐに 「僕はこの本が好きだ」 と直感的に思った。 最初はフィクションだと思って読み始め登場人物も架空の人物だと思っていたのだが、実は本書の登場人物の多くは実在の人物だと知って驚いた。 本牧亭の席亭のおしげさんも服部伸も桃川燕雄も湯浅喜久治も実在した人物だと知ってビックリした。 どの人物も波瀾万丈の人生を生き、とても温かい人柄の人物として描かれている。 特に桃川燕雄はとてもカッコいい清貧の人として描かれていて本書の主人公といってもよい。 僕は桃川燕雄が実在した人物だと知って、この人の講談が聴きたくなって音源を探したが、残念ながら音源は残ってないようだった。 本牧亭を中心とした古典芸能の世界を描いた人情小説としても楽しめるが、昭和30年代の東京の街並みや風俗が描かれているのも楽しい。戦争で焼け野原になってまだ10年くらいしかたっていない東京が復興していく様子が描かれており、史料的価値もある。 演芸の世界の記録文学としての価値もあるが、東京の街並みの記録文学でもある。 商業主義が蔓延している現在の出版業界で本書が絶版になるのは避けられないかもしれないが、なんとか増刷を重ねて読み続けられればいいと切に願っている。 読み終わってとても清々しい気持ちになった。 二人の老講談師が壊れた信号機が青になるのを並んで待ってるエンディングも実に素晴らしかった。 僕もタイムスリップして「荒城の月」のメロディーを聴きながら本牧亭に講談を聴きに行きたいと思った。 後世に残すべき昭和文学の名作!

  • おかみさん、チャコばば 、かこちゃん お世話になりました。

    幼少の頃 連れて行かれた ほんもくの 懐かしい香りと そこで働く人々の 話し声が 今にも聞こえてきそうな そんな素晴らしい 一冊。

  • 架空の町の物語

    本牧亭は上野広小路の横丁に実在した講談専門の演芸場であるが、解説で小沢信男氏も述べているように、作者の安藤鶴夫によっていささか理想化された町の風景であり、脚色された登場人物であるようだ。それでこそ興趣は盛り上がり、小説としての結構も整うのであれば、申し分ない。作者が甚く思い入れ深く描いているのは講談師桃川燕雄であり、この人物には尽きない興味がそそられる。誰一人身寄りのないはずなのに27回忌の卒塔婆が立てられ供養されるのも陰徳のお陰であろう。もうどこにもない場所いや実はどこにも無かった町の物語である。

  • アンツルさんの芸と芸人への熱い思いが込められた傑作。

    直木賞受賞作の本書を文庫での復刊を機に初めて読んだ。読後、なんとも言えない、 暖かな気持に包まれた。それはアンツルさんが本書に込めた思いを感じたからであるし、 登場人物がそろって真っ正直で熱い血の通った人たちだからだろう。 舞台は都内唯一の講談定席だった本牧亭だが、主役は特定の一人ではない。席亭おひで さんであり、”真つ四角”な講釈師の桃川燕雄であり、燕雄の不遇時代を支えた川崎福松 でもある。もちろん、東横落語会を主宰した湯浅喜久治の短いながらも劇的な人生も本書 の重要な要素であるし、彼が淡い思いを抱き続けた女義太夫の桃枝は、この物語に程良い 色気を与えてくれている。そして、本牧亭という舞台を中心に登場する有名無名合わせた 芸人全員が主役の一人ともいえる。もちろん著者アンツルさんが投影された近藤亀雄も 不可欠なバイプレーヤーであり狂言回しとして重要な役割を果たしている。 昭和30年代後半、急速に都会化する東京と対照的な芸人の世界。漫才の流行に押されて いく落語、それ以上に深刻な講談の世界。芸能評論家として、当事者の一人として、愛して やまない古き良き芸能を過去のものにさせたくはないという責任感が書かせた本だろうと 思う。それは、あとがきを「いちど、本牧亭にもお出掛けください。」と締めくくっている ことが如実に物語っている。 歯に衣着せぬ物言いで敵も多かったようだが、本書には、本来アンツルさんの心の奥底に ある古き良き芸と芸人達への尊敬と思いやりが充満しているように思う。 落語、演芸関連本の復刊で健闘している河出文庫にはますます期待したい。

  • 芸人の姿に感動

    今はなき、講談定席本牧亭を舞台にくりひろげられる芸人たちのドラマである。作者の安藤鶴夫自身も「近藤亀夫」として登場する。出てくる人物ひとりひとりの物語も感動的だが、当時(おそらく昭和30年代)の風俗も、今読むと新鮮な感じを受ける。昭和生まれのみなさん、是非読んでみてください!

  • 切ない影がつきまとう。

    演芸ファンはどこか薄情なもので、その芸事が風前の灯と言われれば言われるほど愛おしく、人気が出るのをむしろ厭わしく思う節がある。時代の変遷も手伝って滅びゆく講談を、目下神田伯山先生が中興しようとしているとは誰が予想しえただろう。

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