日本の文学賞

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色彩 (単行本)

太宰治賞

色彩 (単行本)

阿佐元明

書籍情報

出版社
筑摩書房
発売日
2019-09-18
ページ数
224ページ
言語
日本語
サイズ
14 x 1.9 x 19.6 cm
ISBN-13
9784480804891
ISBN-10
4480804897
価格
1650 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

夢をあきらめ塗装会社で働く千秋。仕事にも慣れ、それなりに充実した日々を送るが、新人の存在がその日常に微妙な変化をひきおこす。第35回太宰治賞受賞作。

レビュー

  • タイトルに全てが集約されている。

    著者の文壇デビュー作だろうか? 塗装屋というある種特殊な世界の描写は、恐らく伝聞以外に実際に実務の経験などがあるのだろう程リアル。しかし、その一般人にはわからない世界を描く事に固執し過ぎたか、主人公はじめ回りの登場人物の作り込みが淡白になり、どうも感情移入が難しかった。 親方って何歳?その風貌は?友人との関係性は?新人の後輩君を何故そんなに嫌い、逆に何故周りからは愛される?奥さんは何故後輩にそんなにも肩入れするの?赤ちゃんは結局どうなった? しかし、タイトル名でもある「色彩」は、その情景が凄く脳裏に浮かんだ。 プロの職人としてクライアントのオーダー通りに塗装する仕事はある意味で無味で無機質。それは日々を無駄に貪る日常にも通ずるが、とある塗装を任される事によって眩しいまでに色彩を帯びていく。それらはとても鮮やかで、しかし儚い色合いだ。 人生は磨耗し色褪せて行くけど、そんな状態に自ら気付けたら、再び色を上塗りしてあげよう。上塗りされた色は、元々の下地と相まって、新鮮で綺麗な発色では無いけれど、味のある深い色合いだ。 そんな風に感じました。

  • 新入りの青年のキャラクターをはじめ、不穏さの演出が印象的

    主人公は親方含め三人という小さな塗装会社で働く千秋。妊娠中の亜佐美と所帯をもつ青年である。そんな千秋には、ボクシングで新人王に輝き日本ランキング一位にまで登りつめながら引退した過去があった。 平穏な日々を過ごす千秋が務める塗装会社は、競合する他社の廃業などによって受注が増えたことから新人を四月から雇い入れることを決める。そこに募集してきたのは芸術の専門学校を卒業したばかりの加賀という華奢な青年だった。久しぶりの新人加入に浮き立つ親方と同僚の高俊とは対照的に、千秋は当初から絵を諦めたという加賀くんに違和感をもつ。職場やプライベートをとおしてやや常識外れな加賀くんの言動を知るにつれ、さらに説明しがたい不快感を募らせていくのだった。 約220ページ。文字サイズと会話文・改行が多めのため実質的な文字数は少なく、ボリュームとしては短めの長編といったところ。物語を牽引するのはやはり塗装会社の新人として加入する加賀くんの存在で、千秋をとおしてみる彼の不快さ・不自然さが上手く描かれている。そのため、加賀くんがストーリーにどのような影響を与えるのか、加賀くんがどのような人物なのかに常に興味をそそられる。 読み終えて、千秋が加賀くんに感じていた違和感に納得させられる。市井にあって普通の日常を生きる多くの人々のために送られた小説といえるだろう。作中の演出でとくに印象的だったのは、加賀くんの描き方以外にも、千秋夫妻の不和の一場面や、親方の娘で中学生である彩香の一部の言動、不愉快な顧客など、端々に漂わせられた不穏なシーンの巧妙さだった。そのあたりの巧みさもあって、中盤頃までは実際の本作の結末とは全く違った結末も想像させられ、先の展開を楽しみに読むことができる作品だった。

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