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途上国のグローバリゼーション―自立的発展は可能か

大佛次郎論壇賞

途上国のグローバリゼーション―自立的発展は可能か

大野健一

『途上国のグローバリゼーション』は、大野 健一による経済書。途上国が世界経済に組み込まれる過程を、自立的発展の可能性という視点から検討する。

社会分析制度現代日本

作品情報

途上国のグローバリゼーションは、題名が呼び込む世界を手がかりに、人や時代の輪郭を静かに浮かび上がらせる。

『途上国のグローバリゼーション』は、大野 健一による経済書。途上国が世界経済に組み込まれる過程を、自立的発展の可能性という視点から検討する。 受賞作としての読みどころは、題材の珍しさだけでなく、人物や出来事を通じて時代の空気を伝える点にある。読者は、物語や論述の進行に沿って、背景にある社会や価値観の変化までたどることができる。

書籍情報

出版社
東洋経済新報社
発売日
2000-10-01
ページ数
285ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784492442654
ISBN-10
4492442650
価格
53 JPY
カテゴリ
本/ビジネス・経済

グローバリゼーションの圧力に直面し経済成長と社会変容というジレンマを抱える途上国の現状を著者の現地経験をもとに紹介するとともに現在の開発問題をとらえ直す。

レビュー

  • 誠意溢れる開発論

    「市場移行戦略」の基本的主張を取り入れると同時に、著者の現実的な視点と誠実さが強く感じられる好著。 面白かったのは「第二章」。著者の主張は、 ①国際化・市場化は社会にとって均一な過程ではなく、その影響は社会の異なる人々・地域・部門により異なるもの。大多数の人にとり変化は受身かつ、ゆっくりとしか対応できない。この不均一性はとりわけ農村部と都市部の対比において明瞭 ②よって、社会不安解消のために、農村部に対する再配分政策が必要となるが、それは地方の人々の労働意欲と生産性を向上させ、少なくとも傷つけないようなやり方で実施される必要がある ③伝統社会の規制は自由主義経済にとって煩わしいが、そうしたものは例えば地域公共資源の保護をもたらしている。民主主義と市場経済は大衆の自由を保障しようとするが、全くの自由放任に委ねられた時に感心できない結果をもたらす可能性は否定できない こうした主張は、今の中国を見ているとそのものに当てはまる、本質的な分析となっていると思われます(本書は2000年発刊)。また、ベトナムでの状況下、著者の見た農村部の若者たちの具体的観察が述べられ、主張にあるような危惧感と同時に具体的な人間に対する希望もまた感じさせてくれます。 現実に即したものの見方の必要性を十分認識する著者は理論家としての自分の限界を隠しません - ベトナムの政府と企業がいかに自由貿易下の競走に立ち向かう知恵と能力を身につけるか。解答はどうも「産業選択規準」の発見にはないようである。実際にはやってみるしかないのできないか。欠けているのは理論モデルではなく、具体的事実とつきあう根気である

  • 情熱的

    開発経済学の分野に携わる人、そういった勉強をしている人にとって、この書は学問の原点を思い起こしてくれるものである。世界銀行やIMFといった国際機関であれNGO団体であれ、開発分野に携わる人間は、途上国の本当の声を聞くために、自分の持つ全能力を投入しなくてはならないということを再認識させられた。途上国の問題はそれほどまでにデリケートで、複雑なのである。そういった努力を怠ると途上国にどういった影響を与えてしまうのかということも書かれている。そういった問題提起をわれわれに与えてくれたという点で、この本は大きな意味があると思う。 また、経済学に関する用語も出てくるが、本当にわかりやすく説明してあり、全体を通じて読みやすいものであった。多くの人に薦める。 大野健一の書は、もちろん経済学者の本であるから、理論だった話もある。しかし、それよりも増して情熱的である。理屈や理性よりも、情熱や感動を重んじる経済学者に出会えた。それがこの本を読んだ一番の喜びだった。

  • 現実への肉薄

    IMFのスタッフは途上国へ出向いても高級ホテルで官僚からヒアリングし、現地の実態を知ろうとはしない。これはノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツによるIMFへの強烈な批判である。 本書の著者もかつてIMFスタッフであった。しかし、途上国に向き合う姿勢は正反対である。大野氏はホテルに着くや否や、スニーカーに履き替え市井を巡り、現地人に話しかけていく。現実を自分の目で確かめなければ納得しない、行動する学者である。 そんな著者による本書は知的刺激に溢れている。明治維新を開発経済学の文脈から解釈する作業は新鮮であるし、ベトナムの貿易自由化を検討するために既存の貿易理論を批判的に検証する作業に目を開かれる想いがした。中でも著者がベトナムの子供たちに真摯に向き!合う様子に圧倒される。 学界における経済学(開発経済学も)は論理が数式で展開され、途上国の現実を描くにはナイーブすぎる。本書のような著述が増えることを願う。

  • 途上国援助に携わるor興味がある人は一読の価値あり

    いわゆる「グローバリゼーション」に単純に反対するのではなく、前提条件として受け入れた上で、途上国の経済発展のためにはどのような政策が必要かを論じた本。著者は経済学博士であるが、数式は一切なく読みやすい。前著『市場移行戦略』(有斐閣)の続編と言える。著者の途上国経済観がより深まった印象を受ける。2章のベトナムの物売りの子供達の生き様や、6章の中央アジア諸国の政策担当者の実情など、途上国の人々の考え方も伝わってくる。1章では、今現在の途上国が国際社会から突きつけられている政策課題がまとめられている。3章では明治日本に関して(戦後日本よりも今の途上国を理解するうえで参考になるというのが著者の考え)、5章ではアジア通貨危機に関して、既存の研究に裏打ちされた解説がある。4章ではベトナムの経済発展戦略について、著者の具体的な考えが展開されている。著者も認めているように問題提起に留まっている印象がぬぐえないが、それだけ困難な状況に途上国が追い込まれているという現状認識を与えてくれていることに意味がある。途上国援助に携わる人、又は関心がある人は、一読の価値があると思う。

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