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環境リスク学: 不安の海の羅針盤

毎日出版文化賞

環境リスク学: 不安の海の羅針盤

中西準子

環境問題を恐怖や印象論で扱うのではなく、リスク評価の考え方から捉え直す科学的な入門・提言の書。化学物質や環境政策をめぐる不安に対し、どの危険をどの程度重く見るべきかを考えるための羅針盤を示す。

環境リスクリスク評価環境政策科学と社会化学物質

作品情報

環境への不安を、リスク評価という道具で考え直す。

中西準子が環境リスク論の考え方を一般読者に向けて示した著作。日本評論社公式、CiNii 書評情報、古書データで ISBN 4535584095、2004年刊、251ページを確認した。

レビュー要約

  • 環境問題を単純な善悪や恐怖ではなく、比較可能なリスクとして考える姿勢が評価されている。専門的な議論を社会的判断につなげる点が本書の強みである。

書籍情報

出版社
日本評論社
発売日
2004-09-01
ページ数
264ページ
言語
日本語
サイズ
19.4 x 13 x 1.9 cm
ISBN-13
9784535584099
ISBN-10
4535584095
価格
2710 JPY
カテゴリ
本/アート・建築・デザイン/建築/建設・土木/建築・土木工学

【内容紹介】 東京都の下水道問題に端を発して、ダイオキシン問題、環境ホルモン、BSEに至る、さまざまな環境問題に対して真摯な態度で取り組んできた著者の活動をたどる1冊。環境リスク論の分野を切り開き、その先を見据える。 【目次】 1部 環境リスク学の航跡 1章 最終講義「ファクトにこだわり続けた輩がたどり着いたリスク論」 2章 リスク評価を考える――Q&Aをとおして 2部 多様な環境リスク 3章 環境ホルモン問題を斬る 4章 BSE(狂牛病)と全頭検査 5章 意外な環境リスク

中西 準子(なかにしじゅんこ):独立行政法人 産業技術総合研究所フェロー。 1938年、中国大連市生まれ。1961年、横浜国立大学工学部化学工業科卒業。1967年東京大学大学院工学系博士課程修了。東京大学工学部助手、東京大学環境安全研究センター教授、横浜国立大学大学環境科学研究センター教授、独立行政法人産業技術総合研究所安全科学研究部門長を経て、現在に至る。専門は環境工学、環境リスク評価。工学博士。横浜国立大学名誉教授。 紫綬褒章受賞(2003年)。文化功労者(2010年)。瑞宝重光章受賞(2013年)。日本学士院会員(2021年)。(2021年12月14日現在)

レビュー

  • 数字と現場に立つ環境論

    一般に、環境問題を語る際には主に(1)「(事実に基づいた)数字(統計)」により語る(2)「現場(の人と物)」に関する知識により語る(3)「形容詞」に基づいて語る、という3つのタイプがあると思います。 そして、現在日本で流通している環境問題に対する語りの多くは実は本質的に「形容詞」に基づいているのではないかと私は思っています。例えば、本屋においてある「環境本」には「優しい」「美しい」「恐ろしい」「危機」等の形容詞が踊り、さらに「事態とは関係ない数値」「極端な事例の一般化」「日常感覚の拡大解釈」などの禁じ手が形容動詞的に使われ「比類なく恐ろしい環境危機からかけがえのない美しい地球を守るために地球に優しく」なることがしばしば推奨されていたりします。 「比類なく恐ろしい環境危機からかけがえのない美しい地球を守るために地球に優しく」と唱えることは気分が良く、正義と言えますし、形容詞や形容動詞は論破されることがないですから、身も安全です。 しかし(例えば)「美しい国」と唱えれば自動的に美しい国が達成されるわけではなく、その達成を実効的な形で追い求めるためにはその「形容詞が意味するところの内実」を「数字」や「現場」に落とし込んでいかなければなりません。 そして、本書(の前半)は、中西準子が「数字」と「現場」に立脚し環境問題に対して切り込んできた人生の一代記なのです。 中西準子は「地球に優しく」などとは決して言いません。「形容詞」ではなく「現場」と「数字」の威力をもって圧倒的不利な状況を次々にひっくり返していきます。その姿は、女性が圧倒的マイノリティであった医学と政治の世界において「現場」と「統計」を武器に切り込んでいったナイチンゲールを彷彿とさせます(ちなみにナイチンゲールも(看護に「感傷的イメージ」を一切持ち込まない)徹底したリアリストかつ一流の統計学者だったのです)。 本書の後半は「数字」に基づいたリスク学の考え方が理解できるお勧めの内容です。「耳に心地よい形容詞」は存在しないため、嫌悪感を感じる読者もいるかもしれませんが、少なくともリスクを数値的に定量化することの功罪について自分なり思考を巡らせてみる良いきっかけになるのではないかと思います。

  • 「化学物質」リスク学

    まずは,我々の常識を変えなければならない. 我々の常識はTVや新聞などのマスコミから流れ込んでくるものだが,その関係者はほとんど科学的知識がないことをこの本を読んで思い出した. もちろん,大学や各種研究機関の学者もかなり怪しいものだし,政治家・各省のお役人となれば,お寒いかぎりだ. いろいろ問題はあるにしろ,各種リスクを明解な形で提示する方法を編みだしたのは,興味深い方法である.ただし,著者は「化学者」なので,原発や自動車,航空機あるいはふつうに道を歩いていることの「損失余命」を算出しているわけではない.科学読み物ではあるが,「不安の海の羅針盤」は言い過ぎ.我々は化学物質だけで生きているわけではないのだから. 「損失余命」という単純化も(この本を読んだお陰だが)危険性が理解できる. “科学者”は数限りない間違いを繰り返しているのだ.著者があるいは著者の弟子たちが計算した「損失余命」も間違いがあるかも知れない.この本の著者は,それまで常識だったたくさんの「先輩たちの間違い」を指摘しているのだ. もう一ついえば,たとえ1/100万の確率で,国家レベルでは受容しなければならないリスクだとしても,個人的には,それが1/1千万だとしても,未来があるのにボロボロの脳ミソになって死ぬのはいやだ.私は数値ではなく,生きている一人の人間だから. とまあ,いろいろ問題はあるけれども,この「リスク学」という考え方は面白い. これをきっかけに,もう少し「リスク学」を勉強してみよう. そういえば,アスベストはリスクランキングには入っていなかったなあ.(実質)無害?

  • 早く届いて助かりました

    とても詳しく、丁寧に説明されている内容で読みやすかったです。

  • 一般市民として、そして科学者として環境問題にどう対峙していけば良いのかのアクションプランを示した必読の書

    環境問題と僕の研究は切っても切れない関係です。鉛フリーはんだの研究、水素吸蔵合金の研究、軽金属の研究、リチウムイオンバッテリーの研究、全てはエネルギーと環境問題を解決するためにやっているといっても過言ではありません。 環境問題を考えるうえで、村山由佳著「約束」→石牟礼道子著「苦海浄土」→中西準子著「環境リスク学」とステップを踏んで僕の読書を紹介します。 村山由佳著「約束」、石牟礼道子著「苦海浄土」では、では「人間のおごりが招いた強烈なしっぺ返し」にどう対処すればよいのか?は示されていません。一般市民としても科学者としても「二度とこのような惨事は繰り返してはならない」と口で言うのは簡単ですが、具体的なアクションプランは、「科学技術を放棄」して、公害のない江戸時代の生活に戻ることではないはずです。では、どう対峙していけばよいのか?そのヒントは僕の尊敬する科学者の中西準子先生のこの著作に多く存在しています。汚水処理と水道の件や、ダイオキシンの件など、科学的にリスクを考えながら科学技術を利用していくことを、この本を通じて学びました。

  • 党派性を排した姿勢が多くの人を惹きつけた

    リスク学の評価もさることながら、自伝的部分からにじみ出てくる著者の人間的魅力に感銘を受ける。都市工学科の万年助手から一転この分野の泰斗と目されるに至った経歴には驚かされるが、その辺り、いかに他人に助けられてきたかを穏やかな筆致で綴っている。本人は常にマイノリティであったと語っているが、党派性を徹底的に排したその姿勢(これはBSEを巡るバランスの取れた記述にも現われている)が多くの人を惹きつけたのであろうことは想像に難くない。 環境ホルモン訴訟はこの著の後のことだが、あれだけの人が自然発生的に支援に集まってきたことが、何よりもそれを物語っている。

  • 良かった

    説明通りの商品ということであり、配送につきましても問題はございませんでした。

  • とにかく面白い。

    この著書を通読すれば、著者が環境リスク論に至る筋道、必然性がよくわかる。 同時に環境リスク論の考え方、概念が無理なく納得できる。 しかも著者の研究生活の来歴はドラマチックでもあり、読み物としても面白い。 これからの常識として多くの人たち(特に学生)に一読をすすめる。 著者のリスク論に対するする、どちらかといえば文系の人たちの抽象的な批判はファクトに基づく著者のリスク論には到底対抗できないだろう。 リスクなる耳慣れない字句も急速にあちらこちらで目にし、耳にするようになった。 今後、環境リスク学は確実に重要な位置をしめてくる。 最近のBSE問題にも触れられているが、リスク概念なしには正しい理解も、解決もありえない時代になった。

  • バランス感覚が素晴らしい

    知らなかったなあ、こんな人がいるなんて。不勉強だった。本書は退官記念講演の内容や、あちらこちらに書いたもののまとまりで、構成は雑駁であるが、そのおかげで読みやすい読物になっている。彼女が昔取り組んだ下水道問題から、最近のダイオキシン、環境ホルモン、BSE、遺伝子組換え、電磁波、など、生きて行く上でのリスクをどう考えるかが明快に、しかも細かいところまで配慮しながら、書かれている。要約してしまえば、世の中すべてはリスクのバランスなので、あるリスクだけを100%避けることは得策ではなく、それぞれのリスクに配慮して、トータルとしてリスクが最小になるように、行動しましょうということなのだが、それぞれの事例できちんとしたデータが示されているので、大変説得力がある。彼女は初め下水道問題を扱った時は官僚や学会から弾圧されて、後に、ダイオキシンや環境ホルモンのリスク評価をした時には、市民運動家から糾弾された。全体を理解してきちんと評価するとそうなるのだろう。その両側の人々が彼女の研究を理解して、利用するようにならないものだろうか。特に、メディアの人々には、少なくともこの本ぐらいは読んでほしい。

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