作品情報
『氷石』は、久保田香里の持ち味が表れた受賞作である。
『氷石』は久保田香里による作品。受賞歴を通じて知られ、人物の感情や時代性を軸にした読み味を持つ。
書籍情報
- 出版社
- くもん出版
- 発売日
- 2008-01-01
- ページ数
- 299ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784774313634
- ISBN-10
- 4774313637
- 価格
- 2124 JPY
- カテゴリ
- 本/絵本・児童書/読み物/童話・文学
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レビュー
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2008年に刊行された小説で、解説の日本古代史家の寺崎保広氏によると木簡がはじめて登場!した小説のようです。
(なお、「木簡」は現代の学術用語で、作中では「木札」や「札」とされていて、当時はそう呼ばれていたと予想され、作者の奈良時代に対する知識・認識が非常に正確であることが端的に示されてると思います(「木簡」と書いてしまう古代歴史小説・マンガはよくあります)。) ・「くもんの児童文学」とあるように、児童書なんですが、大人の古代史小説・マンガファンの方でも(私がそうなんですが)十二分に楽しめる力作だと思います。なお、挿絵もそれぞれ非常に味わいのある、これ以上ないほどのもので、この物語の世界観の構築に大いに役立ってると思います。 ・他の方も書かれてますが、舞台設定は、奈良時代の天平9(737)年の平城京(ならのみやこ)。この年は、いわゆる藤原四兄弟(藤原不比等の4人の息子)がおそらく天然痘で相次いで亡くなった(4月:次男房前、7月:四男麻呂、長男武智麻呂、8月三男宇合)、天然痘が猖獗(しょうけつ)を極めた、まさにその年です。 ・主人公の千広は、14歳で官人の息子なのですが、父親は遣唐使として唐に渡り一年後に帰国するはずだったのが、学問のために唐に残り、また母親は2年前に裳瘡(もがさ=天然痘)で亡くなり、伯父の家を出て、一人で生きていくことを決意し、頑なな感じで市(いち)で生きていこうとします。 ・著者は個々の登場人物の人物造形が非常に巧みで、また市や大路小路、施薬院の描写もまるで作者自身が見てきたかのようなリアルさなんですが、これらに加えて、この物語の成功のカギは、市(平城京の東市)を舞台に選んだことだと思います(千広が深く影響を受ける重要な人物たちに、千広はすべて市で出会うので)。
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新型コロナウィルスに翻弄される今こそ読みたい
天然痘が流行した1300年前の奈良が舞台。2020年、新型コロナウィルス感染症が流行した今こそ読みたい一冊。図書館で司書さんがおすすめしてくれました。
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平安時代の生活が目に浮かんでくる
天平九(737)年という時代設定だが、この年は2年前から広がった天然痘が大流行していた。そうした騒然とした時に都に住む主人公千広が、市でにせ護符屋をしている所から物語は始まる。 千広の親はどうしたのか 千広の家に訪れた太政官の史生八尋 市で知り合った法師伊真と下働きの宿奈 疫病が広まり不安になってゆく人々など、見たこともない平安時代の筈なのにこの本を読んでいるとその生活が目に浮かんでくる。 諦めてしまえない望みを捨てきれず、懸命に生きながらも棄てばちでいる千広が、人々の交流のなかから心を取り戻してゆく。 閉ざしていた心が開いてゆくラストも爽快な気持ちにさせる。
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疫病に効く呪符
天然痘が流行している天平9年。 学問への憧れは心の奥底にあるのだけれど、 学問に没頭して唐に渡ったきり帰って来ない父のせいで、素直に学問を志せない少年、千広。 大好きな従兄弟の八尋(やひろ)にもついつい反発してしまう。 しかし疫病は更に勢いを増し・・・? 疫病という不安が蔓延する時代だが、 町中の様子が活き活き描かれていて興味深く、面白い。 氷石と命名された題名にもなった石のインパクトが意外と薄かったのが、残念。 日本の昔が舞台になった児童文学も、最近増えてきましたね。
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時代を史書ではなく、木簡から見て描いた力作です。
天平九年の平城京が舞台の、日常物語です。 そう、歴史ファンタジーや歴史冒険小説にしなくて、この時代の少年を描いた作者の目線が、とてもいいです。 都には、疫病が蔓延し、千広の母親も亡くなってしまう。父親は遣唐使として大陸に渡ったきり帰ってこず、いくら学問が好きだからって…、千弘は父へのわだかまりを処理できません。 叔父の家に居づらくて千弘は一人、河原の石を疫病に効くと偽って売り、毎日をしのいでいます。そんな折、彼は屋敷勤めの少女宿奈と出会い、心惹かれるのですが…。 時代を史書ではなく、木簡から見て描いた力作です。
関連する文学賞
- 児童文芸新人賞 第38回(2009年) ・受賞