作品情報
幻視の歌人、葛原妙子の戦後短歌を、時代と表現の両面から読み直す。
本阿弥書店から刊行された川野里子の評論。葛原妙子を、戦後短歌に突然現れた強い想像力の歌人として捉え、その詩的達成を丁寧に追う。後年、新装版が書肆侃侃房から刊行され、葛原妙子入門としても読み継がれている。
レビュー要約
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葛原妙子の表現を、個の苦しみや喜びが普遍へ向かう営みとして読める点が評価されている。短歌史の入門としても、作家論としても読み応えがある。
書籍情報
- 出版社
- 本阿弥書店
- 発売日
- 2009-06-01
- ページ数
- 461ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784776805809
- ISBN-10
- 4776805804
- 価格
- 1099 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
Amazon.co.jp: 幻想の重量: 葛原妙子の戦後短歌 : 川野 里子: 本
レビュー
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新しい歴史観から見える巨大な姿
短歌という形式が凄い力を持つことを知らされたのは、大学の図書館で三一書房版の葛原妙子歌集をふと覗いたときだった。その体験は強烈で、それまでカッコ良いと思っていた塚本邦雄の絢爛人工美の世界がなんとも貧しく色褪せてきた思い出がある。「格が違う」という感じだ。 塚本の葛原鑑賞「百珠百華」も、巨人葛原に向かって虚勢を張って吠え立てる犬のような塚本、という我ながらひどい偏見を持って読んでしまうのだが、本書の中でも、鍵になるのは塚本(「詩」を導入しようとした前衛短歌)との関係であると読めた。 葛原の歌では暗喩と現実の区別はなく地続きなのであり、そこに詩が成り立つ。塚本から見ればそれは「自然」や「現実」から飛翔できない限界となるが、塚本の考え方にはいかにも昭和の芸術論という歴史的な枠を感じる(「魔女・幻視」という中井英夫の貼り付けたレッテルも、今日から見れば昭和の匂いがする)。そういった議論から離れ、葛原の詩業を新しい歴史観のもとで捉え直し、彼女の孤独が「存在の不安」という詩のエンジンになったという視点へ位置づけなおそうとする労作である。明快すぎる整理かもしれないが、長年のモヤモヤが晴れ渡った気分だ。葛原の歌が時代を超えて輝くのは、生への根ざし方の深さがあるからなのだと、いまさらながら納得する。 素晴らしいオマケがついている。友人としての葛原を語った森岡貞香晩年のインタビューがとにかく面白い。「オーラル文学史」というか、可笑しいと同時に、葛原歌が生まれる現場のリアリティに触れ、詩作とは何かを考えさせる。葛原に興味ある方なら、ここだけでも読む値打ちがある。
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短歌版「日本語が亡びるとき」
水村美苗の「日本語が亡びるとき」が日本語の外からアプローチしているのに対して、この本は内側から書いています。戦後を日本語の亡びるかもしれなかった時として書き始めていて、設定がなかなか面白いです。 葛原妙子という歌人の孤独な闘いについて書いているのですが、入れ込むというのではなく、公平に分析されているためにかえってこの歌人の孤独が感動的でした。 意外と読み易かったです。
関連する文学賞
- 葛原妙子賞 第6回(2010年) ・受賞