日本の文学賞

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異邦人のロンドン

日本エッセイスト・クラブ賞

異邦人のロンドン

園部哲

ロンドンで長く暮らす翻訳家が、移住者たちとの出会いを通して、多様な背景をもつ人びとが生きる都市の現在を描くエッセイ。密航を試みた青年の出来事を起点に、人種差別、学校、階級、食事などの日常から、移民都市の複雑な表情をたどる。

ロンドン移民と多文化社会人種差別異邦人の暮らし

作品情報

移住者たちの声から、異邦人がともに暮らすロンドンの素顔を見つめる。

『異邦人のロンドン』は、ロンドン在住の翻訳家・園部哲による初の自著である。長年暮らした都市で耳にした移住者たちの語りを軸に、密航、人種差別、教育、階級といった問題を、身近な人びとの生活と結び付けて記す。外から来た人びとが形づくるロンドンを、著者自身もまた異邦人として見つめた一冊。

書籍情報

出版社
集英社インターナショナル
発売日
2023-09-26
ページ数
224ページ
言語
日本語
サイズ
13.4 x 2 x 19.4 cm
ISBN-13
9784797674354
ISBN-10
4797674350
価格
1980 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/エッセー・随筆/外国のエッセー・随筆/イギリス・アメリカ

【第72回日本エッセイスト・クラブ賞受賞】 朝日新聞GLOBE「世界の書店から」の筆者が綴る、 移住者たちのトゥルー・ストーリー。 空から人が落ちてきた──それはアフリカから旅客機の脚につかまってロンドンまで飛んできた青年だった。 飛行機にしのびこみ、ロンドンへの密航を企てた外国人は、過去26年間で13人に上る。 なぜ、ロンドンはこれほどまでに人を引き寄せるのか。 いまやロンドン在住者の4割以上が外国生まれ。通算30年のロンドン滞在になった著者もその一人だ。 コロナ禍のロックダウンを機会に、移住者たちの間で交わされた会話は、さながら14世紀ペスト禍の名作『デカメロン』のように、多様で、繊細で、魅力に溢れている。 学校で露骨に現れる人種差別と、それに抗する人たち。 両親にだまされてロンドンへ移住したアメリカ人、中国人。 日本人を憎み続けるイギリス人の存在。 移民、人種や階級差別、貧富の差……。さまざまな問題を抱えながら、世界中から人を集め続けるロンドンの実像を鮮やかに描く。 (目次より抜粋) 遠来の旅人/そもそもの始まり/人種差別/ロンドンの変貌/リトル・ドラマーの指導/大地震以降/小学校の風景/ハリウッドからロンドンへ/お辞儀とアペリティフ/愛犬国家/私立校・公立校/ロンドンの日本/ドイツから来た娘/日本を憎んだ人たち/オリヴァーの脱出/エリザベス女王在位七十周年/階級について/食事の意味/空から落ちてきた人たち 園部 哲(そのべ さとし) 翻訳家。1956年、福島県生まれ。79年、一橋大学法学部卒業、三井物産入社。2005年同社退職、翻訳者に。訳書に『北極大異変』(集英社インターナショナル)、『北朝鮮 14号管理所からの脱出』『アジア再興』『アメリカの汚名』『ニュルンベルク合流』『エリ・ヴィーゼルの教室から』『第三帝国を旅した人々』『上海フリータクシー』(以上、白水社)、『密閉国家に生きる』『人生に聴診器をあてる』(共に中央公論新社)。朝日新聞GLOBE連載「世界の書店から」英国担当。ロンドン郊外在住。

レビュー

  • ひと味違う現代ロンドン事情

    10年前に著者と同じ地区に半年間暮らし、コロナの時期を除けば、ほぼ毎年ロンドンに短期滞在しているので、興味津々で読みました。「日本軍の捕虜」の話には複雑な気持ちにならざるをえませんでしたが、さすがに長年居住して現地の様々な人と交流しているだけに情報が豊富で、知らなかったことも多いです。年齢もほぼ同じなので、時代感覚が似ているのも共感を覚える理由です(うなぎパイ島にも行きました)。前半の「遠来の旅人」の運命や「日本で驚いたのは集中力の欠如だった」という厳しい指摘が最後でうまく回収されるのも見事です。EU離脱はやはり「自爆的愚策」だったことも良くわかります。しかし、日本より一足先に衰退に入ったと言われながら、それなりの存在感を維持しているイギリスの懐の深さ・しなやかさには参考になることもあるのではと思います。現代イギリス論というとブレイディみかこさんのものがあり、結構読んでいますが、それともひと味違う現代イギリス論としてお勧めです。

  • 住んでみなければわからないことばかり

    単純に「観光」するだけならまあ治安のよいところを回っている限りあまり心配する必要がない街・ロンドン。便利な地下鉄、タクシーを利用して、パブでぬるいビールを飲んで一休み、などなど楽しめる街なのですが、やはり「移民」「差別」「階級」「教育」「日本人に対する複雑な感情」「けして美味とは言えない料理」「EU離脱問題」など腰を落ち着けて定住しないと見えてこない、聞こえてこないたくさんの出来事があるようです。 もちろん日本にだって「異邦人」にとっては訳のわからないこともたくさんあって一筋縄ではいかないことも想像できますが、ロンドンだけに的を絞った本書はたいへん新鮮でした。

  • 祝!ロンドン在住30年書評家・翻訳家の受賞作エッセイ

    『異邦人のロンドン』の表紙はひと目見れば忘れられないほど美しい。今もテムズ川北に実在するタイル画は30メートルに及ぶのだそう。 この表紙が好きなら本文もきっと気にいるだろう。モザイク画に描かれた都市ロンドンの壮大な物語と合わせ鏡のように、多彩なロンドナーの小さな物語が精緻に描かれているから。 著者はロンドン在住30年の翻訳家、朝日新聞GLOBE書評家。本作で2024年日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した。 本書には王立キュー植物園に近い住宅地に住む著者とその隣人たちとの交流を中心に19編にわたり描かれている。語られるのはまだ日本では聞き慣れない物語ばかりだ。 原因と結果、マスキュリンとフェミニン、勝者と敗者など二項で語りうるほど人生は分かりやすいはずがないのに、シンプルな物語がスマホには溢れている。 本書には出身国の歴史や風習を背負ったまま異国ロンドンに定住し、文化背景の差異や本人の七癖から些細な揉め事を起こしたり、泣いたり怒ったり喜んだり驚いたり笑ったりする移民定住者のロンドナー、異邦人のアナザー・ストーリーがある。 根強い差別に直面したり、大戦の怨みを目の当たりにしたり、格差が継承される現場を体験したり、その社会環境は日本に住んでいると想像がつかない面もある。 登場人物の出身国は幅広い。英国はもちろん、スイス、ドイツ、ポーランド、インド、ブラジル、パキスタン、ウクライナなど各国に及ぶ。 著者が切り取る隣人たちの肖像やエピソードによって、ロンドンの実像はこの辺りにあるのではないか?と思える。 いつの時代にどこに生まれるかによって個人の運命が左右されること、そこからいかに自身の人生を切り拓いていくかは個人にかかっていること。私たちはたとえ隣り合わせでも、それぞれに当たり前だと思っている環世界の違いや共通性が浮き彫りになる。知ることを通して初めて相手を尊重できるようになる。 そこかしこに秘めたおかしみ、抑えたユーモアが心地よい。最後の一行でふわっと目線が移動し、余韻まで美しい。次作が待ち望まれる。

  • ロンドンの「いま」を伝える一冊

    著者は商社の駐在員としてロンドンに渡り、そのまま現地に居着いてしまったという人物。 ロンドン郊外で長く暮らしており、異邦人でありながら現地の事情にも詳しいという二重の眼差しを備えている。 コロナ禍でのロンドン生活の実状を紹介したり、エリザベス二世の葬儀とチャールズ新国王の即位がどのように受け止められたかを解説したり、自分の娘を通わせた経験からイギリスの私立校と公立校を比較してみせたり、アメリカや東欧やウクライナからの移住者たちの生活を示してくれたり。 現在のロンドンの住人は、その多くが外国にルーツをもつ。そうしたひとびとがいかに混じり合い、あるいは混ざらないで生きているかが、よく理解できた。 「いま」のロンドンをのぞきこむことができる。 語り口は丁寧で分かりやすく、信頼度の高い一冊だろう。

  • きれいなカバー、文章も読みやすくて、良かったです。

    きれいなカバー、文章も読みやすくて、良かったです。 作者のこれまでについて知りたいので次回は自伝的なものを含めたエッセイを書いてほしいな。

  • 愛すべきロンドンの異邦人たち!

    翻訳家としても活躍されている著者による待望の自著。小気味の良い筆致で、異邦人のロンドンワールドに引き込まれていく。ちょっとした身近なエピソードから、読者は一気に登場人物(異邦人)たちの奥深い歴史や数奇な運命を垣間見ることになる。そこでは、どこかモームの短編小説を読むような感覚を味わったり、ある時は「ブラタモリ」のロンドン編を見るような趣があったり、またある時はあの「ふしぎ発見」のミステリーハンターになったような気分になったりする。さらに悲喜こもごもの物語の最後には、落語のように機転の利いた落ちが待っていたりもする。 読んでいると、著者にはまだまだ多くのエピソードの引き出しがありそう。ぜひ続編か、シリーズ化を望みたい。

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