オイモはときどきいなくなる (福音館創作童話シリーズ)
『オイモはときどきいなくなる』は、犬のオイモがときどき姿を消す不思議な日常を描く田中哲弥の創作童話。
作品情報
Oimo wa Tokidoki Inakunaru is a children’s story by Tetsuya Tanaka about the mysterious everyday life of a dog named Oimo who disappears from time to time.
福音館書店刊。犬のオイモをめぐる創作童話として受賞した。
書籍情報
- 出版社
- 福音館書店
- 発売日
- 2021-07-09
- ページ数
- 128ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 17.9 x 13.3 x 1.4 cm
- ISBN-13
- 9784834086232
- ISBN-10
- 4834086232
- 価格
- 1540 JPY
- カテゴリ
- 本/絵本・児童書/読み物/童話・文学
モモヨは小学三年生。おねえちゃんのみどりちゃんは中学生。部活は科学技術部。なんだか早口言葉みたい。赤科学技術部青かばこぎじゅぷじゅ黄かがちゅきちゅぶちゅ。近くにモモヨがよく遊びに行ってた、レオンさんの住んでるお屋敷がある。レオンさんはかなりおばあさん。オイモはモモヨの家の犬のこと。子犬のときジャガイモみたいだったからそういう名前になった。今はシカっぽい。オイモはときどきいなくなるけど、いつも暗くなる前に帰ってくる。それが、その日は晩ごはんの時間になっても帰ってこなくて、モモヨは、ずっとあわあわしてた。でも心配してるのはモモヨだけで。みんななんでか気にしてなくて。そこにいること、もうそこにはいないこと、今のこと、昔のこと、ほんとうのこと、ゆめのこと。そのすべての境目が浮かんでは消えながら、四季の移り変わりのなかで、『つみきのいえ』の加藤久仁生の絵とともにつむがれる、ときどきとえいえんの物語。
田中 哲弥(たなかてつや) 1963年神戸市生まれ。関西学院大学卒。文学修士。大学在学中の1984年に星新一ショートショートコンテスト優秀賞を受賞。放送作家、コピーライターなどを経て、1993年『大久保町の決闘』(電撃文庫のちハヤカワ文庫)で長編デビュー。主な作品に『鈴狐騒動変化城』(福音館書店)、『やみなべの陰謀』(ハヤカワ文庫)など。 加藤 久仁生(かとうくにお) 1977年鹿児島生まれ。2001年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。アニメーションや絵本などを制作している。主なアニメーション作品に『或る旅人の日記』『つみきのいえ』『情景』など。著書に『つみきのいえ』『あとがき』(ともに白泉社)などがある。
レビュー
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オイモという犬がめちゃくちゃリアル。犬好き必見!
書かれているのはともすれば何でもない散歩風景。どこにでもある田舎。なのですが田中さん(決して飾らないが味わいある文)の情景描写とガハハと入って来る素朴な主人公の視点と、ふんだんに使われた加藤さんの挿絵(カラーイラストが多いので嬉しい)によって、豊かな世界が醸し出されます。 特に主人公のモモヨは文章だけだとがさつだし、オイモという犬も言っちゃえばぼろ雑巾みたいな雑種犬みたいな感じですが、挿絵の効果は偉大で、どこか上品で愛らしく、生き生きとイメージが広がり、読み味を決して下品にはせず、素朴な良い味にしています。 リアリティある田舎の描写と、ファンタジックな夢なのか現実なのか、その縫い目も優しく、どきどきします。 多くの犬好き、猫好きの手にどうかこの本が渡るよう。
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見守っているつもりで見守られている……そんな幸福な時期とその終わりを描いた佳作
子供が生まれたら犬を飼いなさい。 子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。 子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。 子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。 そして子供が青年になった時、自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう。 イギリスの古いことわざとも言われているが正確な所はよく知らない。 それでもこの一節はどうしたって飼い主よりも先に世を去ってしまう友だちが教えてくれる大切な事を見事に表現していると思う。 ライトノベルから出発してSFやホラーといったジャンルを経てきた田中哲弥が半分絵本みたいな児童文学書を出した事にも驚いたし、挿絵を担当したのがオスカー受賞者である加藤久仁生というのにも驚いた。だが、何より本作がそんな余計な事を知らなくても幼い子が遠い未来に確実に待っている「死」という万人に等しい運命について学ぶ姿を拝ませてくれる成長譚として成立している事に驚いた。 物語の方は両親や4歳年上で今年から中学校に進んだ姉と暮らす小学校三年生の女の子・モモヨの日常を移ろう季節とともに追っている。モモヨの家にはオイモという子犬の頃にジャガイモそっくりだったというだけでヒドい名前を付けられた雑種の飼い犬がいるのだけど、これが中々変な犬なのである。 ちょっとした物音に極端に驚いては呼吸を乱し、白目を剥くという変な飼い犬オイモは時々行方を眩ましてはモモヨが「オイモはちょっとばかだからね」と言いながら田んぼのあぜ道や河童が出るというけど目撃する機会は中々訪れない池を巡りながら探しに行く、そんな片田舎の平和でゆったり流れる時間が作中では描かれる。 モモヨが雨の日には起き入りの合羽を着て探して回る途中ではレオンさんという「おばあさんなのにいつもかっこいい」年配のご夫人が「ドーナツ食べていかないか」と声を掛けてくれる……まことにモモヨの世界全体から祝福されている様な愛され具合がよく描けている。 なんというか……実にゆったりとした時間の描かれ方は作者が30年近く前に大久保町を舞台に描いた世界に通じるものが感じられた。大久保町はガンマンの街になったり、ナチスに占領されたり、王女様がご来訪あそばされたりする田舎にしては中々に賑やかな町ではあるのだが、それでも何が起きようが時間だけはゆっくりと流れる、そんな世界だった様に記憶している。 大久保町は実在でありながら架空の街だけれども、本作は誰しもがかつては住んでいた筈のそこかしこが新鮮な驚きに満ちて、自他の境界も時間の流れの果もどこか曖昧で心地好い、そんなモモヨの幼さをじっと見守ってくれている世界を描いている。 でもモモヨを取り囲む優しい世界は少しずつ崩れていく。それはある雨の朝、自宅の前を通り過ぎていった救急車のサイレンの音だったり、大好きなお散歩の延長をせがまなくなったオイモの変化だったりするのだけれども、これはこれでモモヨの自我の芽生えを象徴している様な気にさせられる。 結局のところ、人間の自我というのは「個」としての限りある自己の存在に気付く事に他ならないし、それはどうしても万人に等しく訪れる「死」を悟る事に繋がる。「ちょっとばかだから」と見守る側だと思い込んでいた幸せなモモヨがたくさんの愛で見守られていた事を告げられる終盤の展開はほろ苦い。 でもその優しさに包まれていた世界に少しずつ混ざり込んで来る「悟り」が終盤の巡る季節の中で再び訪れた花が舞い散る季節を家族とともに楽しもうという、まだまだ幸福な光景に象徴されている様に感じられた。 曖昧な世界と時間を生きていた幼い存在がちょっとばかり変わった飼い犬との付き合いを通じて時間の流れの先に迎える物を教えて貰う、そんな実存主義の基礎の基礎に通じるものを感じさせられた一冊であった。
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田中哲弥ワールドの新世界
著者の文庫デビュー作からのファンで、今回も予約して購入。 まさかここまで号泣させられるとは…。 この人の独特の文章は、好きな人も苦手な人もいると思うけれど、ペットを飼ったことがある人は、“共感”というよりも、“リンク”する部分が本当にあると思う。 絵も絵本の世界にありそうな独特の雰囲気だからこそ、この登場人物の柔らかな世界観に対する差し色になっている気がする。
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全体に流れる暖かさ。挿絵が素敵過ぎる!
小学6年の娘が夏休みの読書感想文の図書に選びました。挿絵が魅力的で本屋で手にとったようです。 娘はその場で全部立ち読みして、でも意味がわからないから買って帰ってもう一度読み直す、という事で購入。 親の私も読んでみました。 確かに一度読んだだけでは意味がわかりませんでした。空想か夢か現実か思い出か連想か、何だか入り混じっていて、時間の前後もわかりにくいんです。 でも全体的に暖かくて、子供らしいひょうきんさに溢れていて、いいお話だという事はわかる。 そして、綺麗な自然の描写、田舎っぽさ、無限に感じるゆったりした時間の流れ、洋服の色、家族の愛情、犬との愛情、ご近所さんからの愛情、おいしそうなご飯、おやつ、そういう暖かさが感じられます。 自分が子供の頃の、夏休みの暇で無限に感じた時間の長さを思い出しました。 挿絵からどうしてもジブリの世界感を思い出すのですが、自然や雨のシーンはとなりのトトロっぽく、主人公のモモヨはトトロのメイっぽいです。レオンさん(ご近所の高齢女性)は思い出のマーニーっぽく、お庭は借りぐらしのアリエッティぽいです。 で何度か読み返すと、ようやく話がわかってきました。身近な死を経験するお話なのです、小学3年生の無邪気な少女の1年間のお話です。 でも全く悲しくないのです。心の中に暖かい愛や、かわいがったり慈しんだり、かわいがられたり愛される気持ちで溢れていて、死後もその愛と思い出で心が満ちているのです。 あの世で犬もレオンさんも仲良く幸せに愛に満ちて暮らしている事を小学生のモモヨは自然にわかっていて、自然に死を受け入れているのです。そして、ずっと無邪気でひょうきん。愛と死という深いテーマでありながら明るいのです。 どこで亡くなって、どこが幼児期の思い出で、どこが現実の話で、どこが連想して浮かんだ描写か、何度も読むとわかって来ました。 幸せで愛に包まれた素敵なお話です。
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オイモの可愛さと、挿し絵が素晴らしい
私は今まであまり犬は好きではありませんでした。でもこの絵本を読んでオイモ君が大好きになりました。オイモ君の優しさとマッチした挿し絵の柔らかな色合いと、美しい風景の絵もとても素晴らしいですね❤この絵本は、朗読してみたくなりましたね。山中崇さんのようにはいきませんが。 この絵本に出会えて幸せです❤