作品情報
旅先で手にした民宿が、土地と人の因縁を呼び込む。
主人公が発作的に民宿を買ってしまう導入から、そこに関わる人々の愛憎や不幸が怪異へと変わっていく。恐怖一辺倒ではなく、人情味と奇妙な可笑しみを含む怪談として読める。
レビュー要約
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強烈な恐怖よりも、不思議さ、人物の濃さ、人情味のある余韻を挙げる読者が多い。土地の空気と奇妙なユーモアが混ざる点が表題作の持ち味である。
書籍情報
- 出版社
- メディアファクトリー
- 発売日
- 2010-05-19
- ページ数
- 240ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784840134071
- ISBN-10
- 4840134073
- 価格
- 282 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
泣ける怪談 人情味あふえれるジェントル・ゴースト・ストーリー 「友造の里帰り」 愛人の朱美に二人の同郷である小豆島に行きたいといわれ 慣れない不倫旅行に出る友造。友造の生家で見た光景とは……。 新たなジェントルゴーストストーリの傑作。 「富士子 (「住処」を改題)」*受賞作品 器量も性格も悪い中年女・富士子は、旅行で訪れた沖縄で 衝動的に民宿を購入し、手伝いの兼子と住むことに。 忙しい毎日を送るうちに、彼女は邪悪な何かとつながっていく……。 「浜沈丁」 富士子の民宿「浜沈丁」を訪ねてきた金髪男性・フレッドとダニエル。 用地買収の交渉に来たのだ。不幸の滓を喰らう兼子と富士子の容赦ない闘いが始まった。 「あまひえ」 魚に目がない「先生」と呼ばれる政治家が地方に演説会に出かけるのだが、 真の目的は幻の魚を食することにあった。一体幻の魚とは? 驚愕のラスト! 「雪の虹」 取り込み詐欺紛いで資金繰りに失敗し、妻と離婚して 夜逃げする主人公。フェリーで島に渡るが、背後に迫りくる何かから逃げ切れることはなかった。 悲哀に満ちたサスペンス作品。 「恋むくろ」 自殺した元恋人のお葬式をするために小豆島を訪れると、 新しい恋人である社長に手紙をしたためる「わたし」。 手紙を読んだ社長は、島へ。 鬼気迫る筆力で濃厚な恋の世界を描ききった感動作。
1956年、香川県生まれ。関西大学文学部卒業。「井戸のなか」で第1回怪談実話コンテスト佳作。「住処」で第4回幽怪談文学賞短編部門大賞受賞。
レビュー
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作品にバラツキがある
短編集なので作品の中でバラツキがあり、判りやすい 作品とそうでない作品があり、ホラーやサスペンスと その他の作品が混合されている印象を持ちました。 タイトルにもなっている「富士子」と「浜沈丁」は 不幸を食べると言う発想はかなり面白いと思いますが、 結局、最後は何だかよくわかりませんでした。 一方、「雪の虹」はかなりサスペンス仕立ての感じで、 ドキドキしました。「恋骸」は純粋なホラー作品。 個人的には最初の作品「友造の里帰り」が一番良か った。この作品は朱川湊人作品にもよく似た感じで、 小豆島の情景も豊かに浮かんできました。また、読ん でいて最後は精神が浄化作用されるような良いストー リーで、個人的にはこういう作品が私は好きです。
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人間のたくましさを感じる
短編集。 ホラーを味付けにした純文学のような作品が並ぶ。 福澤徹三風で、ほろっとさせる「友造の里帰り」、 グロテスクでユーモラスな「あまびえ」、 「友造の里帰り」以上に福澤タッチな「雪の虹」。 ホラー濃度の濃い「恋骸」。 これらはどれも人生の挫折や流転を、 ホラーに仕立てたじっくり読ませる作品です。 この作品集の中で一番読ませるのは、 「富士子」、そしてその続編である「浜沈丁」です。 主人公の力強さにわくわくしながらページを繰りました。 ドラマ性に欠けるので地味かもしれませんが、 富士子の精神のたくましさ惹き付けられる、 名作だと思います。 乾いた人間描写にじんわりとした沖縄の風景が混ざる、 雰囲気のいい作品になっています。
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ある有名作家が有名になる前の良作
この本は、第4回『幽』怪談文学賞で短編部門大賞をとった短編『富士子』を含む短編集。いずれの話も読みやすく、しかし骨子はしっかりしていて読みごたえはある。 泣ける怪談、との紹介を本屋で見かけてネットで購入。amazonでの紹介をもとに、各話のストーリーに軽く触れると、 『友造の里帰り』 愛人の朱美と二人で、互いの同郷である小豆島に不倫旅行することにした友蔵。50歳を超えた社長である友蔵は、故郷を切り捨てきたと言っても良い。そんな友蔵が見た故郷の姿とは……。 『富士子』 器量も性格も悪い中年女・富士子。旅行で訪れた沖縄で衝動的に民宿を購入し、夫と手伝いの兼子との三人暮らしが始まった。忙しい毎日を送るうちに、富士子は徐々に毒気を抜かれて性格が良くなっていく。しかし、そんな自分に違和感をおぼえて抗う富士子。この民宿に隠された秘密とは……。 『浜沈丁』 『富士子』の続編。富士子の民宿「浜沈丁」を訪ねてきた金髪男性・フレッドとダニエル。用地買収の交渉に来たのだ。前作とのつながりが面白い作品。 『あまびえ』 「あまびえ」という言葉は、読み終えたあとにググるべし。決して「あまえび」の誤植ではない。魚大好きな(ここ、非常に共感w)政治家が地方に演説会に出かける。その真の目的は、幻の魚を食することだった。幻の魚とは、いったいなにか。 『雪の虹』 取り込み詐欺紛いで資金繰りに失敗し、妻と離婚して夜逃げする主人公。あれやこれやと考えて、どんどん変な方向に転がり落ちてしまう。その情けなさが滑稽であり、もの悲しくもあるストーリー。ラストは少し弱い。 『恋骸』 自殺した元恋人のお葬式をするために、生まれ故郷の島に戻る「わたし」。婚約者へ遺した手紙には、元恋人との出会いから別れまでを赤裸々に書ききった。島についたわたしは、思い出の展望台へ行き、断崖絶壁を見下ろす。そして……。ゾッとするラスト。これは、怪談として秀逸。 以上、どれも島を舞台にした話。この本は面白かった。 ツイッターで作家本人とやり取りをしたのだが、今は東北で肉体労働をしているらしい。職業に貴賤はないことは重々承知で言うけれど、勿体ない。これだけのものが書けるのに、兼業作家、それも作家業がかなり少なめ。恒川光太郎、朱川湊人といった同世代(?)の作家が、同じホラー&ハートウォーミング系で売れているのに……、と思うと、作家世界は運不運もあるのかなという気になる。 そんな作家・谷さんであるが、別名義で大藪春彦新人賞を受賞された!! おめでとうございます!!