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正伝後藤新平: 決定版 (1) (後藤新平の全仕事)

毎日出版文化賞

正伝後藤新平: 決定版 (1) (後藤新平の全仕事)

鶴見祐輔

後藤新平の生涯と仕事を時代ごとに追い、近代日本の行政・都市・国際構想を描き出す評伝シリーズ。

後藤新平近代日本評伝

作品情報

正伝 後藤新平:決定版は、後藤新平を軸に読者を作品世界へ引き込む。

後藤新平の生涯と仕事を時代ごとに追い、近代日本の行政・都市・国際構想を描き出す評伝シリーズ。 受賞歴により再注目され、現在も著者の代表的な仕事として参照される。

レビュー要約

  • 題材への切り込み方と読みやすさが評価されている。一方で、扱うテーマの重さや独特の語り口に好みが分かれる読者もいる。

書籍情報

出版社
藤原書店
発売日
2004-11-30
ページ数
699ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784894344204
ISBN-10
4894344203
価格
5060 JPY
カテゴリ
本/ノンフィクション

医者時代-前史~1893年-

レビュー

  • 後半が面白い

    後藤新平の伝記全8巻の一冊目。新平の祖先の話から始まって、苦学の幼少期、医者として活躍した名古屋時代を経て、衛生局長として世に出るまでが描かれている。著者が新平の娘婿であるためか新平びいきの記述が目に付くが、手紙や第三者の述懐等が豊富で、客観的な情報も十分得られる。板垣退助が暴漢に刺された際に後藤新平が診察に当たったという話や、福沢諭吉との接点など、後半は面白いエピソードが多い。

  • 「無私の人」後藤新平の原点

    後藤新平は「無私の人」である。一言でいえば、「自分のいない未来を見すえながら、今という時代を行動した無私の救済者・建設者」が後藤新平である。後藤が死去した後、あまりに財産がないので家族が驚いた、という逸話もあるくらいである。また、台湾の人が親日家なのは、台湾総督小玉源太郎の下で民生長官だった後藤の功績が大きい。 この『正伝 後藤新平』は全8巻、5000ページ以上もあるので、研究者以外に読む人はいないだろう。でも、この第1巻は、なぜ後藤新平という無私の政治家が生まれたのかを理解するのにはおすすめである。とりわけ、237ページから262ページの大阪陸軍臨時病院の話は、後藤の原点ともいうべき体験であり、少しでも後藤新平に興味のある人に読んで欲しい、と思う。 1877年、愛知県病院で三等医であった若干二十歳の後藤は、西南戦争からの傷病兵が大阪の陸軍臨時病院に収容されたと聞いて、給与が下がるにもかかわらず臨時医を志願する。外科の実地研究をしたい、というのがその動機であった。だが、病院長の石黒忠悳は後藤の願いを言下に否定した。天皇陛下の赤子を全快させる場所であって、実験などする場所でない、というのが石黒の言であった。だが、どんな立場でもいいから雇ってほしいという後藤の熱意にうたれ、傭医として雇ったのであった。 しかしながら、後藤が外科の実地研究として選んだこの病院は、コレラに感染した帰還兵が苦しむ地獄絵のような状況だった。後藤の書いた報告書には次のように書かれている。 船上埔頭ニ倒ルル者幾百人。嘔吐呻吟ノ声汀上ニ満チ、市人ハ病毒を恐懼シ、遁レテ敢エテ近ヅカズ。病者ヲ入ルベキ所ナシ。 患者ハ悶煩苦楚ニ堪エズ、互ニ相擁シテ呻吟号泣シ、其穿ツ所ノ衣服ハ、戦地血ニ染ムノ余、更ニ復タ吐瀉物ニ汚レ、惨愴見ルニ忍ビズ。誰カ敢エテ傍観スル者アランヤ。 船で運ばれてくる「凱旋兵」の惨状、そして病院での状況を後藤はこのように描写している。誰もが尻込みする惨状に身の危険もかえりみずに飛び込んだ後藤。この経験こそが、後藤をして後藤たらしめた決定的経験であったと私は思う。死にゆく者を目の前にし、無私の救済者としての後藤新平が誕生した瞬間なのだ。後藤の文章は概ね冗長で読むのに骨が折れるのであるが、この報告書の文章は簡潔かつ迫力に満ちていて、後藤の思いの深さを感じる文章である。 「誰カ敢エテ傍観スル者アランヤ」という心の叫びは、その後の人生を貫くライトモチーフであったと私は思う。

  • 『決定版 正伝後藤新平』は妙な本である。

    『決定版 正伝後藤新平』は妙な本である。 著者は鶴見祐輔なのだが、その原稿を使っていない。本の始めにタイプライター原稿があると書いてあるのだが、凡例には底本がどうのと書いてあるだけなのだ。しかも、その底本の名前も書いていない。なぜ明記しないのか。 次に、一海知義校訂となつているが、校訂者の「あとがき」などが一切ない。だから、どういう校訂作業をしたのか不明なのである。これでは名前を借りただけなのかと思いたくなる。 また、この本は現代の読者が読みやすいやうにと、現代仮名遣いにしたり常用漢字に改めるだけでなく、漢文や文語文には本文中に現代語訳を付けている。しかし、それが難易度に関わらず全部付いていて、この本を手にするような読者には無駄なものが多い。 実は現代の読者には、鶴見祐輔の文語的な文体そのものが難しい。確かに、難解な漢語には括弧の中に意味を付けているものもあるが、それは恣意的である。簡単な文語文に全訳が付くのに「鉄中の錚錚」になぜ説明がないのか。 要するに、この本は内容が分かればいいという本で、まるで教科書ガイドか虎の巻のような本であると言っていい。しかも、それも中途半端である。 底本を復刻して難解な個所だけ注釈を付けた方が余程すっきりしたのにと思う。

  • 内務省衛生局長後藤新平の破天荒なしごと

    昨年来のコロナ蔓延の渦中で、一人の医学者で政治家を幾度も思い出した。生涯実に多くの逸話を残した後藤新平。ドイツのコッホの下で結核菌の研究をした北里柴三郎が帰国して、伝染病の研究所設立を立志した。これを財政的に支援したのが福澤諭吉で、政治的にバックアップしたのが内務省衛生局長の後藤であった。北里の世界的な名声に対する嫉妬や役所のナワバリ意識から大学の医学者が文部省の管轄の伝染病研究所設立を画策、北里の勧めていた芝区の住民に反対運動を扇動した。これらを粉砕したのが後藤であった。日清戦争後の大陸から復員する兵士に対する防疫体制の構築でもリーダーシップを発揮した後藤の奇想天外な策が実に破天荒で面白い。娘婿の鶴見祐輔の文書を現代訳している。後藤のような決断力のあるリーダーがいてくれればと折々に思います。戦前の日本の政治と社会を理解する上での必携の書。

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