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ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫 こ 1-5)

星雲賞

ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫 こ 1-5)

小松左京

表題作を含む小松左京のSF短編集。超能力、心象風景、文明への不安を扱い、娯楽性と思想性を併せ持つ物語が収められている。

SF短編集超能力文明批評

作品情報

超能力と文明不安が交差し、小松左京らしい本格SFの緊張を生む。

表題作を含む小松左京のSF短編集。超能力、心象風景、文明への不安を扱い、娯楽性と思想性を併せ持つ物語が収められている。 受賞時代の文脈を保ちながら、現在の読者にも作品の核が伝わる一冊である。

レビュー要約

  • 作品の題材や筆致を評価する声がある一方、時代背景や文体に距離を感じる読者もいる。受賞作としての個性は、主題の明確さと語り口の持続力にある。

書籍情報

出版社
角川春樹事務所
発売日
1998-04-01
ページ数
314ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784894563919
ISBN-10
4894563916
価格
734 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

少女マリア・Kに取り憑いたのは悪魔なのか、それとも──。彼女の精神の内部へ入り込んだサイコ・ダイバー伊藤が見たのは、おぞましい"闇"の世界だった! 解こうにも解けない人間の心の闇は、"もう一つ宇宙"への入り口なのかを問う表題作をはじめ、「岬にて」「すぺるむ・さぴえんすの冒険」「あなろぐ・らう゛」等、宇宙創造の真理に鋭く迫る"ゴルディアス四部作"を収録。(解説・小谷真理)

レビュー

  • ブラックホール小説!

    こんな読みやすくも理解の限度を超えている作品が日本にあったとは驚いた。 ホラーネタの作品なのかなと思って読み進めていくと、突然SFになるんだもん。もしかしてブラックホールがテーマなのかなと思ったりして…?

  • この狂った秩序の中で高等生物が持つようになってしまった「意志」というものは、いったいどんな作用をもっているのかね

    表題作の『ゴルディアスの結び目』と『すぺるむ・さぴえんすの冒険』の2作は割とストレートなSF小説でとても面白く読みましたが、ラストの『あなろぐ・らぶ』は、奥が深くて、私にはちょっと難しく、十分理解したとは言えません。この点読者を選ぶかもしれません。 ただ、『ゴルディアスの結び目』の面白さは間違いありませんので、この短編だけでも読んでみるのもいいのではないでしょうか。 何かに取りつかれた美少女の心の中にダイブする、ある意味SFではよくある設定かと思いきや、宇宙規模、世界の成り立ちをも考えさせる展開に。 壮大な宇宙を感じさせる短編集です。

  • 手ごわい

    短編集なのだが、なかなか手ごわい作品ばかり。気軽に読むことを拒むような雰囲気を纏う。

  • 約半世紀ぶりの再読で高い評価に納得する

    本書に収録されている4篇が『野生時代』に掲載されたのは1975年から1977年で、その後単行本として出版された。評者は1980年に文庫化された時に読んで、表題作はブラックホールの話だとは理解したものの、4篇ともよくわからないのでいつか再読しなければならないという感想だったように思う。その後あちこちで「ゴルディアスの結び目」が高く評価されているのを知って再読への思いは強くなったがその機会がなかった。他の3篇はタイトルを見てもどんな話だったかさえ思い出せなかった。 今回、『虚無回廊』の続編ということで瀬名秀明氏の『新生』を読んだところ、「ゴルディアスの結び目」が大きな意味を持っているように思えたので、この機会に4篇をまとめて再読した。 岬にて (野生時代 1975年5月号) 400字詰原稿用紙 約120枚の中編 日本人の若者が尋ねた太平洋の孤島には、荒海と季節風が吹きすぎる岬があり、そこでは世界各地から流れてきた4人の初老の男たちが宇宙を眺めながら自然と共に暮らしていた・・・ 酔生夢死? どこまでが現実で、どこからが幻なのか不確実なことばかりでもやもやする。読み終わってもよくわからない。自分の年齢を意識し始めた作者が、昔の短編「迫りくる足音」に対する回答として書いた作品ではないかと想像する。歳をとると若者のようにせっかちに回答を求めることはない。そういう話の中で、作者は、人と宇宙の関わり、関係性を描きたかったのではないか。 『新生』の冒頭の短編「新生」と関係が深いという意見があったので興味をもって読んだが、両者共に連作のプロローグに当たる作品であり、それを表現しようとしているということと、物語の舞台を説明する冒頭の部分が似ているだけでストーリーもテーマも全く関係がないように思う。どちらかと言えば、むしろ「岬にて」とはテーマも結論も正反対のものを描こうとしたのではないか。ただ、本篇の音楽の描写が瀬名秀明の「Wonderful World」の音楽描写に影響していることは、まず間違いないと思う。 ゴルディアスの結び目 (野生時代 1976年1月号) 約140枚の中編 “サイコダイブ”などという言葉もアイデアもまだなかった頃に書かれたサイコダイバーを主人公とする話。 超常現象の原因とされる美少女の精神の闇を探る主人公は、この世のものとは思われない状況に取り込まれていく・・・ 小松の中短編の中では最高と言われているだけでなく、歴代の日本SF中短編の中でも五指に入ると評価されている作品。 最初に読んだ時にはそこまでの傑作とは全く認識できず、凄い話だけど理解し難い話だなあと思っていた記憶がある。 ヒロインの名前、その神聖性と色模様、精神力と超常現象、悪の根源である存在、愛を原動力とする主人公のヒロイックな行動から『エスパイ』を連想したが、エンタメ小説である『エスパイ』とはあまりに異なる暗さと深さに圧倒された感じだったと思う。 しかし、今回再読し、参考資料を読むうちに次第にその凄さの背後にあるものが理解できるようになり、作品に対する印象自体も変わってしまった。 川又千秋氏による本書の解説を始め、小松SFの魅力の一つとして人間的な暖かさを評価する声は多い。評者もそれを否定する気はないが次第に性愛描写の過剰さの方が気になり始めた。当時の風潮と読者サービスだと思っていたが、次第に鼻につくようになった。 本篇においてもそれが気になり、特に終盤においてはエロだけでなくグロ、異常、倒錯、冒涜等ありとあらゆる悪徳が描写されていて、気分が悪くなる程だった。ここまで描く必要があるのかと。 しかし、「100分de名著 小松左京スペシャル」で、“本作には、いろいろおぞましい記述や常軌を逸した描写も多数見えるが、『神曲』や『往生要集』の現代的なあり方と捉えれば得心がいく”との記述を読んで得心した。小松は“地獄”を描写しようとしていたのだと。 小松の作品の中では、「神への長い道」、「結晶星団」、「氷の下の暗い顔」のいわゆる宇宙SF三部作が理解できていないのでずっと再読したいと思っていた。本書も再読の重点対象だったが、ブラックホールは登場するものの宇宙SFに関連するとは思ってもいなかった。しかし、瀬名秀明の「ミシェル」で本篇が重要な鍵になっていたことで読み直したところ、本篇の位置付けだけでなく、『虚無回廊』の意味まで再解釈しなければならなくなった。 つまり、『虚無回廊』が宗教神話を宇宙論的に解釈して再構成する話だとすると、本篇はその構想の基本アイデアのようだ。最初に読んだ時にはそのような視点は考えもしなかったが、今回再読し、幾つかの参考資料を読んで、本篇はダンテの『地獄』を基礎にして人間の心の闇を宇宙論的に解釈する物語ではないかと思う。ブラックホールは心と宇宙の通路であり、両者の交点なのだろう。であれば、もしかしたら“天国”に通じる通路もあるかもしれない。 すぺるむ・さぴえんすの冒険 - SPERM SAPIENS DUNAMAI の航海とその死 - (野生時代 1977年2月号) 約120枚の中編 主人公は突然出現した存在から、全人類と引き換えに宇宙の一切の秘密と真理を教えようという申し出を受ける。それに対して主人公は、“宇宙の一切の秘密と真理”の代わりに万能の“力”を与えてほしいと要求する・・・ 副題を自己流で意訳すると「希望の子たちの遭難の物語」か? 作者の言葉によれば、“「もっとも個人的な旅」の備忘録の中の「難破」を扱ったほんの一行のメモ”らしいが。 冒頭の朝食の場面の描写は『虚無回廊』の冒頭の場面で流用されている。また、“宇宙における知性の存在意味とは?”というテーマが『虚無回廊』に引き継がれているので、その点を考慮すると先の2編以上に『虚無回廊』と関係が深い作品と言えるかもしれないが、評者は小説としてはあまり評価しない。 『果てしなき流れの果に』に登場したような上位階梯の知性が登場するが、主人公は地球人的(日本人的)なメンタリティで対応する。オチはあるが、深みは感じられない。 率直な感想を言えば、初期の作品によく見られた地球人(日本人)的な選択を客観的に批評したアイデア小説としか思えない。(良くも悪くも、現在の評者の読解力の限界だろう・・・) あなろぐ・らゔ - または“こすもごにあⅡ” - (野生時代 1976年6月号) 約115枚の中編 本篇は、人間の“性愛”と宇宙の関係、そして“自然の美に感動する心”をテーマとする中編。マクロな宇宙とミクロな存在でしかない人間との関係を問う物語であるらしい。 まず、冒頭で男女の性愛が描かれる。そして、そこからイメージとして宇宙が生み出される。愛の結晶として生み出される宇宙の卵。世界の神話の多くで、宇宙の誕生は生命の誕生に例えて語られている。ここでは、宇宙はある臨界点を超えた時、“ブラックホール”の重力無限大の中心部、“シュワルツシルドの産道”を通って“別の空間”に生み出される。と表現される。 このアイデアの原点は、やはり初期の短編「彼方へ」ではないかと思う。宇宙から別の宇宙が生み出される。それは生殖行為に似ている。という基本アイデア。そして、ビッグ・バンはそれ以前の記憶を引き継ぐという仮説。 続いて、男がもしかしたら神かもしれない存在と対話する。しかし、その存在は尊大ではないし、男の方も卑屈に感じることもなく自然に、しかし、節度を保って自らの考えを語る。両者の対話が思索を促す。 極大の存在である宇宙、それに対してあまりにも微小な存在でしかない人間。しかし、人間は宇宙にも美を発見する。壮大な自然に対して美を感じる人間とは何か? それは「秩序」に対する感動ではないか? 増大するエントロピーという大きな系“混沌”の中に存在する部分的な“秩序”を見る時、そこに我々は“美”を見つける。それは、我々自身が“混沌”の中に生まれた“秩序(エントロピーの減少を示す現象)”そのものだから。という説明に納得する評者。 クライマックスはメタな展開で、パースペクティブが一段階上がった感じ。 瀬名秀明の『新生』の第3篇「ミシェル」では、レイ・ブラッドベリの小説の特徴として比喩(メタファー)の重要性が執拗に語られるが、本篇でも比喩(メタファー)が重視されており、その役割が語られる。 また、同書巻頭の第1篇「新生」では突然に始まる意味不明な性愛描写に戸惑ったが、本篇に対応していると考えると理解できないこともない。 しかし、本篇のタイトルとダブタイトルは理解できない。“あなろぐ・らゔ”とは? デジタルではないということなのか? また、“または“こすもごにあⅡ””とは? ”cosmogony“は宇宙進化論、宇宙創成論のことらしいけど・・・ 一方、小松は本篇を“「もっとも個人的な旅」の備忘録”の中で“「孤島」を扱ったメモ”に例えているようだが、その解釈に苦しむ。しかし、悩んでいるだけではらちが明かないのであえて解釈するなら、広大な宇宙を認識することのできる知性を持つ人類を生みだした地球そのものを、大海に孤立する孤島に例えているのではないかと思う。 エピローグに描かれているのは、孤島の漂流者から大海に投じられた「瓶の中の手紙」か? 本書の書評としては若干ずれるが、本書と瀬名秀明の作品集『新生』との関連について そもそも『新生』という作品集自体が小松左京へのオマージュとして捧げられたものだが、集中白眉である第三の物語「ミシェル」は小松の『虚無回廊』の直接の続編として書かれた物語である。そのストーリーの中で本書に収録されている「ゴルディアスの結び目」が大きな役割を果たしている。それだけではなく、さらに、同書の第二の物語「Wonderful World」は「ミシェル」の前奏となる物語であり、第一の物語「新生」はそのプロローグのような短編だが、前述したように、それらについても本書との関連が散見される。 つまり、『新生』に収録されている3篇はそれぞれ、本書に収録されている4篇を一度解体して、その後、各要素をモザイクのように組み合わせて書かれているように思うのである。 こうしてまとめて読んでみると、正直、第3作には疑問もあるが、やはり作者小松自身がシリーズ作品と呼ぶこの4篇をまとめた本書は、作者のキャリアの中でも大きなピークを示していると思う。小松作品にはまだ未読作もあるが、若い頃に読んで中途半端に解釈したままになっている諸作も頑張って早めに再読しなければと思う。

  • 物凄い作品

    表現や内容が物凄く深く、考えさられることがおおかった。情報量がすごい

  • 星雲賞受賞作を含む作品集

    「岬にて」「ゴルディアスの結び目」「すぺるむ・さぴえんすの冒険」「あなろぐ・らぶ」の4作品を含む短篇集で作品は昭和50-52に発表されている。小松によれば孤島、渦、難破、出発に関するほんの一行ずつのメモだそうである。 表題作「ゴルディアスの結び目」は筒井康隆の「パプリカ」や夢枕獏の『サイコダイバー・シリーズ』に先行するサイコダイバーものの先駆的な作品であり、1978年星雲賞、短編賞部門の受賞作である。平成21年になって初めて本作品に出会ったために、1978年にこの作品と出会った時の作品に対する衝撃を理解することはできなかった。 精神を対象とした研究はこの20年近く爆発的にすすんでいる。想像力が無いと言われるかもしれないが、神経ペプチドやその受容体の相互作用の働きの総和としての精神の働きや、意識、感情が作られているという現在の神経学のドグマを、繊細に、そして率直に表現した、イーガンの『 しあわせの理由 』のような作品が出版されてしまったあととなっては、個人的には、いささか古めかしい感じを受けた。 ただ、この4つの作品を眺めて驚かされるのは、作品のテーマ、文体 共に変幻自在に変えていく小松の作家としての幅の広さである。一人の作家が書いたと思えないその華麗な表現力に驚かされる。 小松は、その作品のコンテンツが評価の対象となってきたが、もっとその文体や表現力の豊かさについても評価されていいと思う。 個人的に本作品集で一番のおすすめは、じかに宇宙に向かい合っている場所として孤島を描いた「岬にて」が、美しい文体で、静謐な情景を表現しており、バラードを彷彿とさせる内容を有するが、バラード自身の作品をも凌駕する素晴らしい出来だと思う。 追記: 「ゴルディアスの結び目」を再読してみて、完全にエッセンスを読み違えていたことに気づいた。 超常現象が実際に起きていると仮定すると、超常現象を引き起こすために、無から生み出される熱力学的なエネルギーの現出を、人の意識が何らかのメカニズムで生み出しているはずで、 その機序と帰結について考察した作品だった。。。。 「オーメン」公開年に執筆され、超常現象が社会現象になり、その存在が真剣に議論されていた時代に執筆されている。 凄い作品です。

  • Universeについて時空を超えて突き詰めている作品と思う

    宇宙というか世界というかUniverseというか、そんな概念を突き詰めていったかのような短編4作品。作者の思考についていければとても楽しい読書体験になると思う。ついていけない人はそれなりに新しい宇宙というか...を体験する入口に立てるだろう。私はついていけないサイドだが、遠くの場所にある時空を超えた何かを感じたような気がした。どの作品が気に入ったとかではなく、どれも異次元に連れていかれる作品だと思う。

  • 広い視野で、人間や宇宙をとらえた作品

    かつて「部屋」だったものは、今や直径25センチの球体になってしまった。しかもそれは、さらに 縮み続けている。誰にも止めることはできない。この中には、ふたりの人間がいたのだが・・・。 そのふたり、少女マリアと伊藤にいったい何が起きたのか?表題作「ゴルディアスの結び目」を含む 4編を収録。 日常生活に繋がる非日常。人間の営みと宇宙の関係。そして宇宙の真理。作中の登場人物が滔々と 語るそれらは、神秘的で不思議な魅力に満ちている。この作品の中の4編すべてが、驚きの発想で 描かれている。一歩間違えば突飛な発想になってしまうかもしれないが、作者は実に巧みに、興味 深く面白い話に仕上げている。4編の中で印象に残ったのは、表題作の「ゴルディアスの結び目」だ。 少女の心の中に異空間が存在し、それが宇宙と繋がっているという設定は驚きだ。作者は、広い 視野で人間や宇宙をとらえている。日常のささいなことで悩んでいる自分が、ちっぽけな存在に思えて しまう。1977年に出版された作品だが、今でも充分に通用する内容だと思う。理解しがたいところも 少なからずあったが、小松左京をより知ることができ、読んでよかったと思っている。

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