日本の文学賞

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極東ホテル

芸術選奨文部科学大臣新人賞

極東ホテル

津田直

『SMOKE LINE』は、津田直による写真作品。人物の選択、関係の揺れ、場面ごとの緊張を通じて、読者を作品世界へ導く。

受賞作人物関係写真作品

作品情報

『SMOKE LINE』は、写真作品としての輪郭と受賞作らしい焦点を備えた一作。

『SMOKE LINE』は、津田直による写真作品。受賞対象となった中心的な題材を軸に、登場人物の行動や状況の変化を追う構成で読ませる。

レビュー要約

  • 設定や人物配置の印象を評価する声があり、題材の強さと読み味の個性が注目されている。

書籍情報

出版社
赤々舎
発売日
2009-12-15
ページ数
96ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784903545523
ISBN-10
4903545520
価格
1950 JPY
カテゴリ
本/趣味・実用

写真家・鷲尾和彦、ファースト写真集。 東京都台東区、かって「山谷」と呼ばれ日雇い労働者の町として 知られていたこのエリアに建つ外国人旅行者専用の簡易宿。 写真家・鷲尾和彦は、この一軒の外国人旅行者向けホテルへやってくる バックパッカーたちのポートレートを約5年間をかけて撮影した。 のべ数百人という旅行者との出会い。 彼らの言葉に耳を傾け、互いの言葉の向こうに残されていった記憶。 私たちは誰もがこの世界を漂い続ける小さな欠片(かけら)なのだ。 見る者を「ここではないどこか」へと誘う、新たな「旅」の写真集がここに誕生。 作家・池澤夏樹による書き下ろしエッセイ「寂しい惑星(ロンリープラネット)」を収録。 『多くを語る必要はない、ただ静かに見つめるだけでいい。 その時、この世界を漂い続ける小さな欠片である僕たちは、 もう一度出会うことが出来るのだと思う。』 (著者あとがきより) 寄稿:池澤夏樹 装幀:北川一成

わしお・かずひこ 兵庫県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。 20代後半から独学で写真活動に取り組む。2006年、ガーディアン・ガーデン主催「フォトドキュメンタリーNIPPON」入選。 2005年から、ニコンサロン(東京/大阪)やAKAAKA(東京)にて個展「極東ホテル」を開催。その他、グループ展にも数多く参加。 2009年、写真集『極東ホテル』を赤々舎より刊行。

レビュー

  • 冷徹ポートレート

    実にそっけない表紙が かえって気になったので購入してみました。 あとがきでこのカメラマンが触れていますが、 東京・山谷(いわゆるドヤ街)の安宿に集まる 外国人旅行者たちを撮影したポートレート集でした。 オールカラーで80人以上の人物が登場します。 ヨーロッパ系、アジア系、中東系、 老若男女のいわゆる「バックパッカー」たち。 彼らは一様に放心したような、焦点の定まらないような、 不思議な表情を見せてくれます。 旅行者特有のものだろうか、 と思って一通り眺めました。 で、この表情について、最後に作家の池澤夏樹がエッセイを寄稿しています。 それを読んで「なるほど」と得心しました。 さすが芥川賞選考委員。 読後の感想ですが、なかなかだと思います。 鬼海弘雄の『ぺるそな』に匹敵する、 とは言いませんが(笑)、 これが初写真集ということで もしかしたら将来著名な写真家になるかもしれない、 という期待も込めて5つ星としました。 ちなみに後半がノートブックのようになってます。 私は「宿帳」的なものをイメージしましたが、 著者にどんな意図があったのでしょうか…。 ちょっと謎の残る写真集でもありました。

  • それぞれの「個人的な体験」について

    僕もこういう場所に住んだことがあり、そしてそれは今でも大切な思い出だったりする。旅人達が交錯する場所というのは、すぐにバラバラになることが前提になるためか、人間関係に程よい距離感があるんですよね。たまたま相性の良い連中が集まった時は、離れ離れになることが寂しくて余計に密になって一緒に行動するし、かといって周囲と距離を置いて独りで行動する人間のプライバシーも尊重される。この距離感が被写体とカメラの間に置き換えられているところが評価できる反面、そこに広がっていたはずの一時的な人間模様(コミュニケーション)が撮影者と被写体の一対一関係に収まりきらないはずなので、場の魅力を削いでいないかということが気になりました。こういう場の面白さは色んな国の色んな連中がコミュニケーションするところにあると僕は思うのですが、作家が取り出したコミュニケーションはカメラ=作家と被写体の関係だけです。きつい言い方をすると、ここに作家のナルシシズムが見えます。 また、舞台になったホテルはどうか分からないが、こういう場所の宿泊者は比率でいうと日本人と中国・韓国人が多い。(都内にいる旅行者の国籍比率が素直に反映される。)これは編集上の問題ですが、見栄えの良い被写体を選ぶ過程で若い白人の比率が高まっていると予想します。 旅というのは常に個人的な体験です。池澤夏樹が寄せた文書だって極東ホテルについてではなく、自分がロンリープラネット(欧米版「地球の歩き方」)の創業者に会った時の私的な思い出です(笑)。同じホテルでも写し方=見え方というのは当然人によって違うので、ここに切り取られたお洒落な写真以外にも多分、人それぞれに色んな写真が撮れる場所なんでしょうね。

  • 極東の地、交差する人生

    表紙がなく、後半分はメモ帳のようなフリースペース、 かといって決して中身のボリュームが少ないわけではない、 果たしてこれを”写真集”と読んでいいのかどうかさえ疑問に思えてくる。 その中に登場する、さまざまな国からそれぞれの思惑でやってきた 旅行者たち。彼らについての情報も驚くほど少ない。 写真家と対象との間には、一定の距離が保たれているようであり、 それゆえに、第三者として見る側はその”距離感”に 戸惑いを感じざるをえない。 個人的にも外国人旅行者がよく利用するようなホテルに 滞在したことがあるが、この曖昧で不確実な関係性を感じさせる 雰囲気こそ、こういった場所が持つ独特の”空気感”なのだ。 そして、その”旅人”たちが集まる場が放つ”空気”、 それは、私たちの人生が持つ曖昧さと不確実性さとまったく同じである。 私たちが多くの人と関わりつづけるのと同じく、 この写真集の紙上で多くの人生が交差する。 一見、昔からよくあるポートレート集のように思いがちだが、 個人の価値と社会の多様性が重要となりつつある今の時代だからこそ 生み出された写真、形態であり、だからこそ、何度でも繰り返し 見たくなるのだろう。 知らない価値に出会うだけでなく、その価値を尊重すること、 それが今の時代における”旅”の定義だということを、 あらためて確信させてくれる写真集。

  • とどまり見つめ続けること。

    「極東ホテル」。東京の一角にひっそりと佇む安宿。彼はここに泊まっては去っていく数百人の旅人に出会い、その刹那の表情を写真に納めている。彼らの表情は様々である。どんよりとしていたり、凛乎としていたり。はたまた必死の形相であったり、くつろいでいたりする。 旅人たちを捉えた写真は、「極東ホテル」というカオティックなスペースにおける定点観測であると同時に、交錯しては放射し拡散していく光線のような人々のポートレイト集でもある。 旅は、古今東西を問わず、多くの写真作品のテーマであり、モチーフともなってきた。この写真集を「旅」というテーマの写真集とすることは、安易だがありうるのかもしれない。 しかし、決定的に違うのは、眼差しを投げかける側が移動(トリップ)しているのではなく、トリップする者たちに対して眼差しを投げかけていることだ。これは単なる手法の問題ではない。 今回の作品を手掛けた5年という時間の堆積には大きな厚みがあり、そのため、作品の制作過程において、作家自身に内包される精神に変化が起こっているように感じられた。これは地理的に自ら動いては得ることはできないかもしれない、作品を成熟させる道程であるようにも思える。 それこそが作家・鷲尾和彦にとっての「旅」であったのかもしれない。 そして、この写真集を構成する作品は、必ずしも時系列に沿って並べられている訳ではない。 しかし、ひとつの地点に拠点を定め、来ては去っていく旅人たちを見届けてきた作家の胸のうちに、何かしらの優れた、そして隠された意図があるのを感じる。 巻末のアーティストメッセージ中の「多くを語る必要はない。ただ静かに見つめるだけでいい。」という言葉に、その謎めく「しかけ」と、この写真集の魅力が集約されているように感じるのは僕だけだろうか。 それをどう受けとめるかは、この写真集を鑑賞するひと、それぞれの感性と想像力によるのであり、それが多義性に富むこの写真集の醍醐味なのだろう。

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