宝石賞 ほうせきしょう
第8回(1954年)
受賞者
7名高城高のデビュー作で、日本ハードボイルド小説の初期を代表する短編。戦後の焼け跡が残る街を舞台に、事件の気配を追う語りが乾いた文体で進み、都市の荒廃と孤独を刻む。
焼け跡の街で、男は事件の影と失われた時間を追う。
『足音』は、深尾登美子による短篇探偵小説。1955年の『宝石』短篇探偵小説懸賞で第二位となった作品で、戦後探偵小説誌の新人発掘の流れの中に位置づけられる。題名が示す聴覚的な気配を手がかりに、不安と接近する危険を組み立てる短篇と考えられる。
聞こえてくる足音が、見えない人物の存在と事件の不安を少しずつ近づけていく。
「N駅着信越線九時三十分」は、坂井薫による短篇探偵小説です。信越線の駅と時刻を題名に据え、鉄道の移動、到着時刻、地方の駅をめぐる状況から謎を組み立てる作品と考えられます。
駅名と時刻が謎の入口になる、戦後探偵小説懸賞の佳作です。
「曲った部屋」は、雑誌『宝石』の短篇探偵小説募集から現れた座間美朗の短編。閉じた空間を思わせる題名のもと、日常の室内が不穏な謎の場へ変わるタイプの戦後探偵小説として位置づけられる。
曲がった空間の違和感が、戦後探偵小説らしい謎の入口になる。
「白いドレス」は、折口達也による短編探偵小説で、1954年度の『宝石』短篇探偵小説懸賞で佳作となった作品である。単行本・文庫への収録は確認できず、題名が示す白い衣服の視覚的な印象を手がかりに、人物の秘密や事件の痕跡をめぐる物語として記録されている。
白いドレスの鮮やかな像が、事件の記憶と人物の秘密を浮かび上がらせる短編探偵小説。
平井呈一による短編探偵小説。怪奇文学・翻訳で知られる作者が、宝石賞の枠で発表した創作として、金をめぐる探索を題材にした作品である。
金を探す行為が、人の事情と疑いを呼び寄せる。
『その夜の有利子』は、灰沼樵による短篇探偵小説。1954年度の『宝石』短篇探偵小説懸賞で佳作となり、1955年4月号で発表・選考座談会が掲載された回の作品として記録されている。夜の出来事と人物名を思わせる題名から、限られた時間の中で起こる事件や心理の変化を扱う短篇と考えられる。
その夜、有利子をめぐる出来事が、静かな日常の底に隠れた不穏を照らし出す。