作品情報
近代経済学の流れを、理論の内側と資本主義の歴史の両面からたどる杉本栄一の遺著。
岩波全書セレクション版は B6 判352頁で刊行された。近代経済学の成立と展開を、19世紀後半以降の世界資本主義の具体的な歴史と結びつけて論じ、各学派の理論がどのような役割を担ったのかを検討する。科学として、また歴史としての経済学史を確立しようとした一冊である。
書籍情報
- 出版社
- 岩波書店
- 発売日
- 2005-06-22
- ページ数
- 352ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784000218719
- ISBN-10
- 4000218719
- 価格
- 2000 JPY
- カテゴリ
- 本/ノンフィクション/ビジネス・経済/世界経済/その他の地域
科学としてまた歴史としての経済学史の確立を目指した著作であり、著者の絶筆となったもの。世界資本主義が19世紀後半以降に示した具体的な歴史のなかで、近代経済学の諸学派がどのように生成・発展・消滅したかを解明し、それぞれの経済理論の論理的意義と価値を判定して、現代経済学の発展への展望を与える名著。
レビュー
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きれいな「古本」,古びない論
1967年第17刷,でも,とてもなつかしい装幀は,往時のまま……とまではいかなくても,とても良い状態だと思います。 早くなくなられたけれど,長く残ってほしいと思っています。
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経済学の思想と理論を克明に俯瞰する―現代経済学の展望のために!
日本で「近代経済学(modern economics)」という言葉が定着する契機となったのは、ポーランドの著名な経済学者O・ランゲの論文「マルクス経済学と近代経済理論」(1935年)であったそうだ。この論文でランゲは、1870年代の限界革命におけるオーストリア学派、ローザンヌ学派そしてケンブリッジ学派を一括して「近代経済理論」と称した。ランゲの定義に対しては現時点からみても多様な意見(異見)があるだろう。ただランゲが本論文で目指したのは正確な概念的定義を与えることというよりは、目的と性格を異にする近代経済理論とマルクス経済学の総合という壮大なテーマであり、この問題意識を高く評価した学者の一人が杉本栄一にほかならない。 本書が刊行されたのは1953年だから、すでに半世紀を経ていることになる。しかし膨大な文献考証を踏まえた経済学の思想と理論のドラマ性に富んだ論述は今も決して廃れることのない高い学問的価値を有している。半世紀のあいだに経済学は大きな進歩を遂げたといえるだろう。それは近代経済理論(主流派経済学)にもマルクス経済学にも妥当する。とはいえ、そもそも「経済学とはどのような学問であるのか」という根本問題(=大きな問題)は常に問い直される必要があるだろうし、そうした課題は今日的意義を増している印象すらある。どんな学問分野にも「転換期」があるならば、未曾有の世界金融危機による<負の影響>からなかなか脱却しえない今こそその時期ではないか。テクニカルな部分にのみ偏向する心性はかえって肝心な問題を見失わせる。 本書を通読して強く意識させられるのは、経済学の歴史への広く深い理解なくして、現代経済学を進展させることはできないという自明の理だ。名著としての貫禄を存分に味わえる卓抜の書。2つの経済学の<総合>という課題はそもそも可能なのか、それもまた杉本が残した宿題といえるかもしれない。必読。
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名著、此処に蘇る
名著と呼ばれる本は近頃めっきり無くなってしまったが、この本はまさに名著と呼ばれる本である。所謂著者はマルクス経済学および近代経済学に精通し、この両者の切磋琢磨を提唱された。更に著者のケインズ解釈は当時としては望みうる最高のケインズ解釈を与えた。著者は後継者の育成にも長けており、伊東光晴、浅野栄一など素晴らしいケインズ研究者を輩出した。この本は著者の平易な文章であるにもかかわらず最高の内容である事が言えよう。この様な本は蘇ることは信頼を無くしつつある今日の経済学を改めて考え直す点に於いても素晴らしい贈り物だと思う。現在もこの本を上回るような経済学史の本が無いのは悲しいことである。
関連する文学賞
- 毎日出版文化賞 第7回(1953年) ・受賞